前世の記憶5
おじいちゃんは私に、好きなことをしなさい、好きなように生きなさいと言ってくれた
私はおじいちゃんと過ごすこと、畑仕事を手伝ったり家事手伝いをしたりすることが好きだった
お兄ちゃんとの悪夢は、お兄ちゃんが就職したことで終わった
新幹線で2時間はかかる距離なので、会いに行こうとしなければ会わないだろうという事実にほっとする
私はおじいちゃんの畑を継ぐ為、農業の勉強をしながら畑仕事を手伝っていたのだが…
おじいちゃんが腰を悪くしてからは、畑仕事を続けるのが難しくなってしまった為、おじいちゃんの口利きで市役所の雑用のお仕事をさせてもらえるようになった
畑がある土地家屋は東京から来た農業に憧れていた夫婦に売ることとなり、おじいちゃんと私は市役所に近い市営団地に引っ越した
おじいちゃんは越してきた夫婦、佐伯保さんと美沙さんに農業を教え、市役所に送ってもらい家までは一緒に歩いて帰った
とても平穏な日々で、ずっとこのまま暮らしたいと思っていた
20歳の成人式、おじいちゃんは張り切っておばあちゃんからお母さんに受け継いだ着物を私に着せてくれた
その日も保さんと美沙さんに農業を教える日だったのでおじいちゃんを迎えに来てもらって、みんなで写真を撮って、成人の集まりに向かった
仲のいい人などいないので、適当に話を聞いてすぐに帰宅する
帰宅途中美沙さんから電話がかかってきた、おじいちゃんが倒れたのだ
保さんが迎えに来てくれて、晴れ着のまま病院に送ってくれたけれど、おじいちゃんは心筋梗塞を起こして倒れたらしく、息を引き取った後だった
私は生きる希望を失ったのだ
私を愛してくれた家族をこんな形で無くすなんて、信じられなかった
今朝まで元気だったのに…最後になるなんて………
それからはあまり覚えていない、市役所の同僚や保さんと美沙さんが色々と手伝ってくれて気がついたらお葬式は終わっていた
夢だったらいいのに…
おばあちゃんの仏壇におじいちゃんの遺影を並べる
「おばあちゃんと会えたかな…私もそっちに行きたいよ…」
たくさん泣いて、悲しんで、絶望して、死のうと思った
包丁を握って、首に向ける
勢いよく自分に突き刺そうとしたその時、玄関のドアが開いた
保さんと美沙さんが駆け込んできた
構わず首に刃を押し当てると、保さんに包丁を奪われ、美沙さんに頬を叩かれた
なぜ死のうとするのか、おじいちゃんに好きなように生きなさいと言われたことを忘れたのかと叱られた
おじいちゃんのところに行きたかった…
でもそんな事をしたらおじいちゃんは悲しむだけだと保さんに説得された
おじいちゃんとおばあちゃんと一緒に住んでいた家で落ち着くまで一緒に過ごそうと2人は言ってくれたので、うなずいた
それから3人で農業をする生活に変わったのだ
前世の記憶編長くてすみません
前世は辛かったよ要素を強くしたくて書き始めたらモリモリに…
もう少し続くので冒険要素はしばらく後になります