誕生
(………あたたかい)
暗いせまい、けれど、あたたかい場所にいる感覚がある
(……………………私、生きてる?)
動こうともがいてみる、暗い場所は嫌いだから
(苦しくなってきた気がする……はやく、出ないと)
思い通りに動かないからだを必死に動かしてみる
すると、せまい場所からするりと体が抜け出た
優しく受け止められた感覚があり、目を開けてみると、聞いたことのない言語で話すメイド服の女性が涙を浮かべながら私の体を拭う
そして寝ている女性に私を手渡し抱えさせた
そして2人で不安そうに私を覗き込む
(…私、赤ちゃんになってる?
じゃあこの女の人は、私のお母さんになるの?
私あのとき死んだはずなに、なぜこんなことに…?)
色素が薄いのか金色に見えそうな茶色の瞳と目が合う
不安そうな表情が、目が合うことにより笑顔へ変わる
(あぁ、そうか、生まれたばかりの赤ちゃんが元気に泣かないから
不安にもなるか…………かと言ってウソ泣きなんてできないし)
愛想笑いすらできないが、元気なことは伝えたい
口を開いていざ声を出してみると
「…あぁあ〜」
「う〜、ぅ〜あ」
……流石に生まれたばかりではまともに喋れないらしい
だが喋ったことで周りは大喜び?しているようだ
改めて周りを見てみると、メイド服の女性は3人、お母さん、執事服の男が一人、そしてお父さんらしき人がいた
私をお母さんからお父さんにメイド服の女性が受け渡す
泣きながら喜んでいるお父さん?はデレデレしながら何か語りかけてくるが、言葉が分からない
お母さんは明るい茶髪に茶色の瞳だが、お父さんは黒髪に赤い瞳だ
私はどっちに似たんだろうな~と考えていると、部屋のドアが勢いよく開いた
お母さんによく似た男の子が走って入ってきて、私の目の前に来ると、愛おしそうに私のことを見つめる
(あぁ、この世界では幸せになれるのかもしれない
私が求めていた普通の家族の愛を、受けられるのかも…)
普通の、カゾクの、アイ……………?
ハッとした、自分の甘い考えを思考の中で振り払う
いくら世界が変わったとしても、私が私である限り、前世と同じようにならないなんてわからないじゃないか
憧れて、期待して、現実を知って、絶望する
あんなに前世で傷ついたのに、また誰かに期待しようとするなんて
私はなんて愚かなんだろう
もう誰にも期待しないって決めたんだ、今の世界でもそれは変えられない、変えたくない
誰かのために頑張るとか生きるのはやめる!
これからの人生は好きに生きる、前世よりも幸せに生きてみせる…!
(その為にもまずは、この世界の事を知らないと…
まずは言葉からだ、この家で学べるだけ学んで、それから将来のこと考えても遅くはないよね、
焦らず慎重に…無理はしない!)
ほんのすこしだけワクワクしてきた
(好きに生きるのって、
きっと楽しいことがたくさんあるんだろうな
…考えるだけで楽しいなんて初めて!)
自然と笑顔が浮かぶ
その笑顔を見て家族やメイドたちは喜び愛おしそうに見つめるが、赤ちゃんは考えることに頭がいっぱいで笑顔になっていること、それを見て周りが喜ぶことも気づかなかった
誤字脱字等あったらすみません