158. 後輩ちゃんは『タコパ』がやりたいようです
158. 後輩ちゃんは『タコパ』がやりたいようです
企画配信の収録が終わり、オレはそのまま帰宅する。するとリビングからエプロン姿の彩芽ちゃんが出てきて出迎えてくれる。
「あの……お帰りなさい」
「ただいま」
なんか……新婚生活みたいじゃないか？『お風呂にする？ご飯にする？それとも……』あああああああああ！！ヤバい……顔が熱い。
「颯太さん。夕飯……食べました？」
「え？いや。まだだけど」
「あ。その……良かったら……一緒に食べませんか？」
少し俯き、手をモジモジさせながら言う彩芽ちゃん。可愛すぎるだろ。そんなことを思いつつ、オレは返事をする。
「うん。いいよ。一緒に食べるか。何か作ってたの？」
「今から……です」
リビングに行くと、そこにはたこ焼き器が用意されており、具材などが入っているボウルもあった。
「たこ焼き？」
「はっ……その……衣音ちゃんや愛梨ちゃんとタコパしたって聞いて……ダメですか？」
不安げな表情でオレを見る彩芽ちゃん。あるココの配信か。あの時はタコパというより、焼いたたこ焼きを別の部屋で一ノ瀬さんと食べただけだが。
……オレと一緒にタコパやりたいんだな。そんなところもすごく可愛すぎる。
「全然大丈夫だよ。じゃあやるか」
「はいっ！あっ……手洗ってくださいね」
「了解」
たこパの準備をしながら、オレはふと気になったことを聞いてみる。
「そういえば、オレが声が出なくなった時もアイス食べたけど。あれさ、日咲さんの配信で言ってたから？」
「……。」
「ん？」
「……言わないでください。恥ずかしい……です……私も……やりたいので……」
顔を真っ赤にしながら答える彩芽ちゃん。マジで可愛いな。準備を終えて、早速始めることにした。生地を流し込み、タコ、天かす、紅しょうが、ネギなどをトッピングしていく。
初めて彩芽ちゃんが料理 (？)をしているところを見るが、手慣れた様子でテキパキとこなしていく。そして、ソース、マヨネーズ、かつお節などのトッピングで見た目も綺麗に出来上がっている。とても美味しそうだ。
「颯太さん。どうぞ」
「いただきます」
早速1口食べてみると、外はカリッと中はトロっとしていて、とても美味しい。それに、熱々のアツアツだ。こんなに上手いのは、きっと愛情が入ってるからだろう……とか勝手に思ってみたりする。
「うまい」
「本当ですか？嬉しい……良かった……です」
笑顔で喜ぶ彩芽ちゃんを見てると本当に癒される。
「次はオレが焼いてあげるよ」
「はい……ありがとうございます」
それからは、お互いに交代しながらたこ焼きを焼き続けた。
「もう無くなっちゃったな」
「そうですね……」
結局、用意した食材を全部使い切ってしまった。
「片付けはオレがやるよ」
「いえ……私がやります。颯太さんは……お仕事だったので……」
「……じゃあ一緒にやろうか」
こういう何気ないことでも、オレのことを思ってくれてると感じられて、嬉しくてついニヤけてしまう。洗い物を終え、ソファでくつろいでる時に、彩芽ちゃんが隣に座ってきた。
そして、肩をトンッと寄せてくる。彩芽ちゃんの顔を見ると、頬が赤く染まっている。これは……もしかしなくても……いい雰囲気なのか？
「彩芽ちゃん……」
「はい」
「えっと……その……」
オレが言い淀んでいると、彩芽ちゃんが優しく微笑む。そしてゆっくりと目を瞑る。いいのか？キスしていいんだよな？
そしてそのまま彩芽ちゃんの唇に、自分の軽く唇を重ねる。柔らかい感触が伝わってきて気持ちいい。そのまま数秒間、お互いの体温を感じ合った。
「今日は……タコパ……楽しかったです。ありがとうございました」
「こちらこそ」
そして、お互い照れくさそうに笑い合う。この幸せがずっと続けばいいのに。心の中で密かに願うのだった。
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