たとえ、どれだけ力があっても
時と共に差がついていく。
十数年の時が過ぎ去ると、侵略国は周辺国を制圧・吸収して巨大になっていた。
薬草師がもたらした成果は大きく、他の国が対抗する事ができない程にまで侵略国を強化していた。
転移者を抱える国は対抗できなくなっていった。更に小さな国に転落したいたのだから。
侵略国は敵対する国を完全に粉砕。
戦乱の世の中を治める事になった。
その頃には更に巨大な国力を誇るようになる。
転移者をかかえる国は、そんな侵略国に従属する事となった。
転移者の力があろうとも、巨大な軍勢に対抗する事は難しい。
最終的に生き残る事ができても、国の疲弊は大きなものになる。
それならば、現状維持のために服従した方が良いという事になった。
もちろん、そんな浅ましい願いが実現するわけもない。
侵略国についた薬草師の進言により、転移者のうち生産に従事する者達が引き抜かれた。
これらを使って、侵略国の生産・技術・知識を強化するために。
短期的な利益は見込めないが、長期的な国力増進に繋がる事になる。
現代日本からもたらされた知識は侵略国に大きな昂進をもたらしていく。
様々な科学技術と知識が国を豊かにしていく。
転移者を召喚した国との差は更に激しくなっていった。
この国力差を使い、侵略国は無理難題をふっかけていく。
小国に転落した召喚国には荷が重い貢ぎ物を要求。
国として成り立たなくなるほどの献上品を毎年おさめるようにと。
断れば攻めこまれるとあって、召喚した国は要求をのむしか無かった。
これらも薬草師の進言によるものだ。
ヒントになったのは参勤交代。
相手の力を削ぐのが目的だったという江戸幕府の行為を形を変えて行わせたのだ。
並行して、転移者を抱える国との交流を断絶。
工業・商業・学業といった様々な分野における接点を断ち切った。
おかげで小国は交易などによる恩恵を受ける事がなかった。
発展著しい侵略国のだ。
ある意味、望み通りの結果になっている。
現状維持、今までの状態を保っている。
それは、これ以上転落しないように、という望みによるものだった。
それが、今以上の成長を自ら捨て去るという意味になってしまっていた。
そうして差が付いたところで侵略国は、転移者達の身柄を要求する。
潜在的な危険でしかないといって。
ここにきて召喚した国は抵抗を決意。
転移者を失えば抵抗する手段を完全に失う。
かろうじて生き残ってるのは召喚した者達という戦力があったればこそ。
これを失えば、容易く攻め滅ぼされる。
ならば、侵略国に攻めこんで生き残る道を見つけるしかない。
転移者の戦闘力があればどうにかなると踏んで、最後の望みを戦争に託していった。
それしか道はなかった。
全てを失い、抵抗も出来ずに滅亡するか。
抵抗出来るうちに行動に出るか。
考えるまでもなかった。転移者がいるうちしかないのだ、反抗して生き残る機会は。
時間もなくなってきている。召喚によって転移者達がやってきて40年。
すでに老境にさしかかっていた転移者達が活躍出来るのは今しかない。
それを理解してる転移者達も再び戦場に向かった。
いまだ巨大な力は衰えてないからだ。
そんな彼等に、侵略国の軍勢が立ちはだかる。
戦闘機に戦車、歩兵銃に手榴弾を装備した兵士が。
転移者の科学技術を取り入れることで、侵略国は現代日本並みの軍勢を作り出していた。
なお、生産系の能力を持つ転移者達はこの時点で既に全員殺されている。
必要な知識を手に入れた時点で、他国からすれば無用の長物になっていた。
奪われて他のどこかで活躍する可能性もある。
そうなる前に手を打ったのだ。
薬草師の進言によるものだ。かつて虐げられた恨みを晴らすためでもあった。
そんな現代兵器の軍勢を前に、転移者達は分の悪い戦いを強いられた。
いくら強力とはいえ、戦闘機や戦車が相手では簡単には勝てない。
転移者の多くが機銃掃射で、爆弾で、長距離砲撃で倒れていった。
そのまま侵略国の軍勢は召喚した国へとなだれ込む。
転移者を召喚した知識や魔術が危険視されたためだ。
また何かを呼び込まれたら、この先どうなるか分からない。
そう考えて、徹底的に殲滅することになった。
召喚した国は徹底的に蹂躙された。
召喚の秘密がどこかに漏れ出さないように。
それを他国は手に入れようとは思わなかった。
手に入るならありがたいが、無理して手に入れるつもりにはなれなかった。
圧倒的な優位性は既に手に入れている。
それが他に渡らなければそれで良かった。
こうして異世界から能力を持つ者を召喚した国は滅びた。
転移者も全て殲滅された。
ただ一人、薬草師を除いて。
「ざまあみろ」
転移者と召喚した国の滅亡に、薬草師はそう呟いた。
晴れやかな表情で、大きく息を吐いて。
この日、彼は自分を襲っていた全ての悪を潰すことができた。
時間はかかったが復讐を果たすことができた。
死んで霊魂になった者達も、魔術や超能力を用いて粉砕している。
霊魂が輪廻転生することもない。
存在そのものが完全に消滅した。
異世界に召喚された転移者はこうして滅んだ。
ただ一人の生存者を残して。
その生存者も、ことの成り行きを見守ると姿を隠した。
自分の存在がこの世界では脅威になりえると察していたからだ。
権力者からも、一般人からも異能の力は脅威になる。
それを排除しようとする者はどうしても出て来る。
それらが動き出す前に、薬草師は姿を消した。
彼を慕う者達と共に。
そんな彼は姿を隠しながらも平穏な暮らしをしていった。
晩年、子供や孫、ひ孫に囲まれて息を引き取るまで。
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