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異世界に呼び込まれても

「…………」

 無言で作業をこなしていく。

 手にした原材料と器具を用い、強制されて薬を作っていく。

 異世界に飛ばされて手にした力を使いながら。



 突如、異世界に召喚された彼。

 一人だけでなく、生徒と教師全員が校舎ごと召喚された。

 なんでも、異世界にない知識や技術を吸収するためだという。

 戦国時代に突入してしまったので、生き残るためにという事だ。



 その為、知識と技術を持つ者達に絞って召喚したという。

 しかし、条件設定がどこか狂ったのか、一般的な中学校がまるごと召喚されてしまった。

 これが大学などならまだ分かるのだが。

 その為、それほど大した知識が異世界に渡る事はなかった。



 とはいえ、中学であってもさほど発展してない異世界ではかなりの知識だ。

 学校の教師ならばそれなりの知識人にもなりえる。

 それだけでも異世界にとっては貴重なものになる。



 何より大きいのは、教師から学生まであらゆる者が何らかの力に目覚めた事だ。

 異世界には魔術といった超常能力が存在する。

 地球にはないこの力が、世界に存在するこれらが地球人である転移者達に何らかの影響を与えたのかもしれない。

 その力が、混迷を極める異世界における貴重な戦力になっていった。



 そんな中で、彼は薬草師の力を得た。

 薬効のある植物を見分け、調合して人間が服用できる状態にするという。



 決して無能ではない。

 植物を見ればどれが薬としての効果があるのかを見分ける事が出来る。

 既に判明してるものから、まだ解明されてないものまで全てだ。

 どのように処理すれば良いのかも含めてあらゆる事が分かる。

 さらには、栽培方法まで分かる。

 医療の発達が現代日本ほどではない異世界ではかなり重宝する。



 しかし、地味ではあった。

 戦闘能力や知識・研究系、さらには生産関係の能力に目覚めた者に比べれば。

 即座に効果を引き出すような能力ではないのだ。

 即戦力が求められていた異世界ではいささか持て余し気味ではあった。



 確かに薬があれば助かる場面は多い。

 しかし、即座に治療が完了する魔術や超能力の方が便利だ。

 戦争が当たり前のように起こってる異世界では、どうしても魔術や超能力が求められる。

 薬草も決して無駄ではないのだが、即効性で劣ってしまう。

 なので、他の者達の能力に比べれば戦場での必要性は下に見られてしまった。



 こうした共に召喚された地球人の考えが、薬草師として目覚めた彼の立場を悪くしていく。

 目立つ所に出る事もなく、活躍もできない、だからお呼びがかからなくなっていく。

 それを見て無能と罵る愚か者が出てくる。

 軽んじる者が出てくる。

 蔑ろにする輩があらわれる。



 もともと彼が学校において虐げられてる側だったのも大きい。

 これで勇者や賢者といった目立つ能力があれば良かったのだろうが。

 残念ながらそうではなかった。



 人間、どうしても派手に目立つ活躍をする者を賞賛する。

 必要不可欠であっても、地味で目立たない後方作業を軽視する。

 それどころか蔑視する。

 農業や工業といった生産活動を見下す。

 これがなければ生きていけないというのにだ。



 薬草師の能力を持つ彼もそのように見られ、扱われていった。

 前線で戦えるわけではない、即座に回復する能力を持ってるわけでもない。

 一目で分かるような効果を示す事がない。

 そんな彼を転移してきた者達は嘲った。



 異世界の者達も同じだった。

 薬草師を無能と考えたわけではない。

 その有用性とありがたさは、薬草に頼るしかない異世界の者達の方がよっぽど理解していた。

 しかし、既に戦争になり、戦乱に巻き込まれそうなご時世である。

 戦闘力を持つ者をどうしても優遇していく事になる。

 生産系や知識系の者達も国力増強に用いられていく。

 その中で、即座に効果を発揮しない者は、後まわしにせざるをえなかった。



 余裕がないのだ。

 まずは戦って勝たねばならない。

 勝たねば滅びてしまう。

 そうならない為にも、まずは戦力が求められていた。



 国力の配分という点からしても、なかなか配慮しきれない。

 まずは戦争に勝たねばならないので、国力・戦力増強を優先する。

 生産も武器や防具、砦などの建設などが優先される。

 それ以外はどうしても後まわしになる。



 蔑ろにしたいわけではない。

 だが、どうしても手が回らない。

 そんな後まわしにされる者達の中に薬草師の彼も放り込まれてしまった。



 こういった状況が薬草師の彼の立場をより悪くしていった。

 同じような境遇に置かれた者達は他にもいたのだが。

 その中でも更に悪い立場に追い込まれていく。

 後まわしにされてる者達の中でも、彼はもともと虐げられてる側だった。

 同じような境遇の者達は、そんな彼を蔑ろにしていった。

 不満をぶつける良い的として。



 そんな状況に彼は全く我慢しなかった。

 やられっぱなしでいるつもりは無かった。

 その場で即座に反撃は出来なかったが。

 戦力で制圧される可能性があった。

 今までがそうだったのだし、警戒をしてるし慎重にもなる。

 なので、やり方を考えていった。

 自分に何が出来るのかを。

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