修学旅行1日目:猫と名前
…1日長くね?
神使さんに猫と境内を回る許可をもらってから、班のみんなのところに合流する。立派な木造のお社に見入っているみんなのところに合流すると、みんなは僕の肩に乗ったままの猫を見て驚いていた。
「あれ、葵君?神使さん見つからなかったの?」
「いやぁそれがね…?」
みんなに神使さんから言われたことを一通り説明する。眷属さんの様子がおかしかったのはみんなに言っても仕方ないし言わなかったけど、猫を連れていて良いこととこれから同行することを伝えるとみんな困惑しつつも嬉しそうだった。
「よくわかんないけど、神様の眷属の人が言うならそうしたほうがいいのかもね?」
「うーん…この子に特別な何かがあるのかな?」
ずっと僕の肩から降りない猫は、みんなに注目されても全く意に介さないでうとうとし始めていた。…呑気だなぁ。僕がふてぶてしい猫に呆れていると、ケンが猫を撫でようと手を伸ばしながら口を開く。
「よくわかんねぇけどさ、これから一緒に連れてくんなら名前つけといた方がいいんじゃねぇの?」
「あぁ…それもそうだね」
猫を撫でようとしたケンは片目を開けた猫に手をはたき落とされていたけど、確かにこれから一緒に行くのに名前がないのも不便だ。どんな名前がいいだろう…。
「君って名前あったりするの?」
「ふふ、葵君?猫ちゃんに聞いても答えられないよ」
「にゃ」
僕が肩の猫に向かって話しかけていたら流奈ちゃんに笑われてしまった。ついでに猫も何を言っているんだこいつはと言わんばかりに呆れたような表情をしていた。
「よ、よく聞くのは見た目から名前をとる付け方だよね…」
「見た目かぁ…ちょっとごめんね」
零君の呟きを聞いて、改めて猫の外見を確かめようと気持ちだけの謝罪をしてから抱えようとする。猫は神使さんと捕まえようとした時とは違って、案外おとなしく抱えさせてくれた。
「…野良とは思えないぐらいに綺麗だね」
「にゃあ!」
「なんかこいつ偉そうだなー」
「かわいいけどね〜?」
僕に抱えられながらふんぞりかえる猫に、さっき猫ぱんちをくらったケンは少し不貞腐れたようにしているけど早乙女さんや椿さんはすっかりメロメロになっていた。
とにかく改めて猫の見た目を確認する。僕に抱えられて胴が伸びている猫はとても綺麗な真っ白な毛並みですらっとしているけど、瞳だけが金色で不思議な気品を感じるような猫だった。
「真っ白だしシロちゃんとかどう?!」
「ふにゃ!」
流奈ちゃんが意気揚々と名前を提案するも、どうやらこの子にはお気に召さなかったようでそっぽをむかれてしまっていた。がっくりと肩を落とす流奈ちゃんを尻目に僕も名前を考え始める。
う〜ん…安直な名前は嫌がりそうだなぁ。白と金…何かあったかな?白と金、白と金…。あ、そういえばこの前におじいちゃんの庭で見たゆずの花が似たような色だったっけ。金じゃなくて黄色だけど…。
「ゆずって言うのはどうかな?ゆずの花が君みたいな色でとっても綺麗なんだ」
「…にゃ」
僕の問いかけに猫は仕方ないと言わんばかりに短く鳴いた。どうやら受け入れてくれたみたいだ。猫改めゆずを抱っこし直して撫でてあげるとすぐに喉をゴロゴロと鳴らし始めていた。
「ゆずちゃんかぁ、いい名前だね。それに気に入ってくれたみたいだね!」
「うん、気難しい子みたいだし気に入ってくれてよかったよ」
正直技の名前を考えるのも苦手な僕ではこれ以上の案は出なかっただろうし、前に色々な花の花言葉を調べていた時に見たゆずの花言葉は確か「汚れなきひと」だったから高潔そうな雰囲気のこの子にはぴったりだったかもしれない。
「ゆず、よろしくな〜…」
僕の腕の中でゴロゴロと喉を鳴らしているゆずに、ケンが今なら大丈夫かと声をひそめながら手を伸ばしてくる。
「にゃ」
「ぐっ…!こいつ俺のこと嫌いなのか?」
ケンが差し出していたその手は、すぐに猫ぱんちではたき落とされてしまった。ケンは少し落ち込んでしまった様子だったけど、ゆずは全く気にしないですぐにまたゴロゴロと喉を鳴らし始めた。
…うん、実は刺激的なところとか『ゆず』がぴったりかな。
ゆずは現代日本のものと同じものだと思っていただいて構いません。
閲覧、ブックマーク、評価やいいねして頂けた方、誠にありがとうございます。
感想も励みになっています。誤字報告も助かります。
作者プロフィールにあるTwitterから次話投稿したタイミングでツイートしているので気が向いたらどうぞ…




