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熾天使さんは傍観者  作者: 位名月
境界に立つ
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修学旅行1日目:最後の目的地

葵視点に変わりマウス

 意識がぼんやりとしている。何か大事な場面をどこかから眺めているような、何も見ていないような。…どこからか、慣れ親しんだ誰かの声が聞こえる。


 「…君、葵君!」


 「えっ…?」


 ふと気づくと、流奈ちゃんの顔が目の前にあって僕を覗き込んでいた。周りを見渡して、僕が修学旅行1日目の最後の目的地である神様の住居に到着していたことを思い出した。


 「葵君、大丈夫?佐々木君もだったけど、今日何だかぼーっとしてるよ?」


 「だ、大丈夫!昨日楽しみであんまり眠れなかったからかな、ちょっと気が抜けてたよ」


 「そう…?無理しないでね?」


 「うん、ありがとう流奈ちゃん」


 心配そうな表情の流奈ちゃんにそう誤魔化して答えながら、直前までの記憶を確かめる。


 京都(ケイト)について自由行動が始まってすぐに、佐々木君…零君の様子がおかしくなって、最初の目的地で神様の眷属のおねえさんに佐々木君に何かが憑いていることを教えてもらった。そうして神様の生まれた場所を離れてすぐ零君が霊に体を乗っ取られて、夢で見た天使さんのおかげで〈浄火〉を覚えて零君を守ることができた。


 あの夢で見た天使さんは一体なんだったのかとか、僕はなんで〈浄火〉を使えるのかっていう疑問は残ったけど、今は修学旅行を楽しもうとすぐに班員のみんなと合流して京都巡りを再会した。色々な場所を巡って美味しいご飯を食べて、近づいてくる霊をたまに祓いながら京都の街をみんなと楽しんで巡り、最後の目的地…神様の住居に到着した。


 …うん、覚えてる。覚えてるはずなんだけど…鳥居を抜けた後に何かあったような?


 「葵君!すごいよ!早く行こうよ!」


 「あ、うん!すぐ行くよ!」


 気づいたらまたぼーっとしていたみたいで、さっきまで目の前にいた流奈ちゃんは少し離れた位置で僕を呼んでいた。…まぁ、色々あったから疲れてるのかな。せっかくの修学旅行なんだし、切り替えて全力で楽しまないと!


 「…すごいなぁ」


 班のみんなのところに合流して改めて神様の住居を眺めると、ほんの数時間前に霊感に目覚めたばかりの僕でもはっきりとわかるほどに神聖なオーラを放っていた。


 「こ、ここの空気、葵君の炎みたいだね」


 「え、そう?…言われてみれば確かに似てるかも」


 零君に言われて改めて見てみれば、確かに〈浄火〉のように霊みたいなよくないモノを寄せ付けないどころか消し去るような雰囲気があった。…僕の〈浄火〉とは、どこかが決定的に違うような気はしたけど似ているのも確かだった。


 「…にゃお」


 「ん…?猫?」


 ふと足元から可愛らしい鳴き声が聞こえて視線を下げると、僕の足元で綺麗な猫がちょこんと座っていた。


 「わぁ!猫ちゃんどこからきたの?」


 「…にゃ」


 綺麗で可愛らしい猫を見つけた流奈ちゃんが猫に手を差し出すが、短い鳴き声とともにプイッと顔を背けられてしまう。猫に振られた流奈ちゃんは悲しそうにがっくりと肩を落として猫から少し離れたけど、猫は変わらず僕の足元に居て僕の方を見つめてきていた。


 「どうしたの?僕に何か用かな?」


 静かに僕を見つめてくる猫に、家で弟にもみくちゃにされているであろう蒼を思い出してしまう。返事が返ってくることはないと思っていても、思わず話しかけながら猫の方に手を差し出す。…確か猫はいきなり撫でるのはよくないんだったよね?


 「にゃう」


 「わ、ふわふわだね」


 綺麗な猫は、さっき流奈ちゃんを袖にしたのが嘘のように僕の手に体を擦り付けてくる。それどころか僕にもっと撫でろと言わんばかりにグイグイと体を押し付けてくる。


 「うぅ…猫ちゃんもやっぱり葵君みたいに綺麗な人の方がいいのね…」


 「え?流奈ちゃん何か言った?」


 「な、なんでもない!」


 「にゃう?」


 流奈ちゃんが何か言った気がしたけど、猫が何よそ見してんだと言わんばかりに短く鳴いて僕の目を見つめてきたので撫でるのを再開する。…とはいえ、どうして神様の住居に猫がいるんだろう?入り口のあたりに動物の連れ込みは禁止って書いてあったけど…。


 「うーん…君、どこから来たの?迷い込んじゃったの?」


 「にゃ!」


 「うわっ!」


 猫に聞いてみると、僕が何を言ったのかわかったのかわかっていないのか猫は一気にジャンプして軽やかに屈んでいた僕の肩に乗ってきた。肩に乗った猫はその大きさにしては軽く、首に巻き付くようにして僕の肩の上ですっかり落ち着いてしまった。


 「お?なんだアオ、猫なんか連れちまって?どこで拾ってきたんだ?」


 「あぁケン…それがどこから来たのかわかんないんだけど、懐かれちゃったみたいで」


 「なんだとうとう動物にまでモテ始めたのか」


 「何さその言い方」


 「なんでもね。…つっても実際ここ動物の連れ込み禁止のはずだし、誰かのペットだとしてもまずいよな?」


 「そうなんだよね」


 ケンのいう通り、観光客の誰かが動物の連れ込み禁止というルールを知らずに連れてきてしまったのなら僕らじゃあ対応できないし神社の人に猫を預けるのがいいんだろう。


 「…うん。僕ちょっと神社の人探してこの子を預けてくるから、みんなと先に行っててもらってもいいかな?」


 「おういいぜ。他の奴らには言っとくから、ちゃっちゃと行ってこいよ」


 「うん、ありがとねケン」


 そうして僕は本日二回目の別行動を開始したのだった。


鎌使いには二匹ぐらい動物連れていて欲しいよなぁ?!(性癖丸出し)


閲覧、ブックマーク、評価やいいねして頂けた方、誠にありがとうございます。

感想も励みになっています。誤字報告も助かります。


作者プロフィールにあるTwitterから次話投稿したタイミングでツイートしているので気が向いたらどうぞ…

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