修学旅行1日目:天の使い
短くてワロタ
「さて、何から話そうかな?」
路地裏の一角で適当な箱に腰掛けながらこちらを見て不気味な笑みを浮かべている彼は、何故か楽しそうにしながらそんなことを言って何かを思案するようにする。
「…そもそも、君は一体誰なの?」
「そんなことを言うなんて悲しいなぁ。一緒の班でここまでやってきた仲なのになぁ」
そんなことを言いながら彼は笑う。擬音をつけるなら「ケタケタ」と言うような不気味な表情でひとしきり笑った彼は、笑うことに飽きたようにスッと無表情になってこちらを見る。
「…私が誰かなんてどうでもいいんじゃないかい?」
「どうでもよくはないよ…君はまだ佐々木君なの?」
「あぁ、君にとってはそっちの方が大事だよね」
そう言った彼は何かを確かめるように手を開閉し、足をぷらぷらさせると一度頷いてこちらに向き直る。
「大丈夫、この子はまだ残ってるよ」
「…まだ?」
「細かいところを気にする人だなぁ。第一、君はどうして私のことに気がついたのかな?私にはわかるが、君はこの子のような力があるわけでもないだろう?」
少しイラついたような表情で彼は僕に聞いてくる。佐々木君のような力?佐々木君が特別な異能を持っているなんて話聞いたことがないけど…。
「…僕が何で気づいたかなんて、どうでもいいんじゃないの?」
「そんなことないさ、大事なことだよ。私が次に活かせるからね」
「次なんてないよ。僕がここで終わらせる」
彼は僕の言葉に面食らったように目を見開き、またケタケタと笑い出す。彼はひとしきり笑った後に箱から降りて僕の方に歩み寄ってくる。
「随分と格好いいことを言うじゃないか?それで?どうやって私を終わらせるって言うんだい?」
「…」
「この子は君に助けてほしいらしいけど、君にはどうせこの子のような力なんてないだろう?」
彼の言葉を聞きながら、僕の頭の中はぐるぐると思考が巡る。佐々木君の力、僕ができること、彼の目的、狐の女性の言葉…。色々な事が脳内を駆け巡りながらも、具体的なことは何も浮かんでこないまま彼の手が僕の頭に伸びてくる。
「ま、君が一体何で…何が出来るのかは、今から見れば良いだけだね」
佐々木君に手荒な真似をするわけにもいかないと思いつつも、とりあえず無力化しないといけないかと指輪から鎌を出そうとした瞬間…一つの記憶がフラッシュバックするように脳内にイメージが浮かぶ。
『とにかく、葵にこれをあげる。これがあれば明日から起きることも、なんとか対処できるようになるはずだよ』
夢で見た光景。何故か懐かしい天使さんに一冊の本をもらった時の光景を思い出して、動きが止まってしまう。何も動かない僕に、佐々木君の体に入っている彼は僕の頭に手を乗せる。
その瞬間彼の手が触れたあたりから凄まじい悪寒が身体中を駆け巡る。それと同時に身体中の異能力が僕の意に反して動き始める。
「…!?何だこれは?!」
目の前の彼から焦ったような声が聞こえるのと同時に急激な疲労感が身体中を支配して、僕の意識は落ちていった。
あーくないつたのちい
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作者プロフィールにあるTwitterから次話投稿したタイミングでツイートしているので気が向いたらどうぞ…




