幕間:傍観者達の問答2
予約投稿できてなかったらキレ散らかします。
久々の熾天使さんとポンコツ女神の対談です。
葵が修学旅行に出発した頃、僕は久々にあの世界の外に出てきていた。理由は簡単で、久々にスピリッツ様に報告をするようにと呼び出されたからだ。
葵が修学旅行中なので体を使うわけにもいかないし、用意しておいたサブ機はサブ機で探偵業が忙しい時期らしくて使えない。…ということで、世界の外だしいいかと思って一時的に精神体を直接受肉させて報告に来ていた。
前回同様に用意されていた椅子に腰掛けて待っていると、慌てた様子のスピリッツ様が高速で飛んでくる。スピリッツ様は慣性も空気抵抗も全て無視した動きで僕のすぐ側に着地すると、いきなり涙目で僕に頭を下げ始める。
「よ…呼んでおいて遅れてしまってごめんなさいぃ!」
「スピリッツ様…私などにそう簡単に頭を下げないでください、スピリッツ様もご多忙でしょうし仕方ないですよ」
「すみませんでしたぁ…今飲み物をお出ししますねぇ…?」
「ありがとうございます」
スピリッツ様はいつもの間延びしたような口調でビクビクしながら僕に謝ったことを謝りながら、前回の報告会でも飲んでいた紅茶を淹れてくれる。スピリッツ様が椅子に腰掛けるのを確認してから出された紅茶に口をつける。
「…うん、やっぱり美味しいですね」
「ありがとうございますぅ…」
紅茶の味を楽しみながら、お互い前回の報告会の時の会話を思い出してなんとなく黙り込んでしまう。そんな沈黙を破ったのは意外にもスピリッツ様の方だった。
「あのぅ…急な呼び出しになってしまってごめんなさいぃ…」
「いえ、仕事ですし問題ありません。出来ればもう少し前に教えていただきたいですけど」
「ごめんなさいぃ…今朝に創造神様から報告を受けるようにと伝令が来ましてぇ…」
…やっぱりかよあのクソ神が。思わず舌打ちしそうになったのを堪えながら口を開く。
「そうでしたか、なら私が最近色々と動いたのが原因かもしれませんね」
「そうなんですかぁ…?」
そうなんです。ていうかあなたの世界のことなんだから把握しておいてくれよ。そんなことを思いながらもスピリッツ様に最近起こっていたことを説明していく。
分体のようなものを創ってある程度自由に動かせていること、葵の修学旅行に向けて少し夢で干渉したことなどの事実をそのまま伝える。僕の報告にスピリッツ様は相槌を打ちながら聞き入り、報告が終わると紅茶を一口飲んでから話し始める。
「なるほどぉ…それなら、まだ世界の終わりに繋がるようなことは起きていないんですねぇ…?」
「あぁ、それなのですが…念のため報告しておきますが、本来の運命での終末の原因については私の方で潰しておくことにしました」
「…?」
僕の言葉にスピリッツ様は不思議そうな表情で首を傾げる。…この女神、もしかして気づいてなかったのか?
「…私の転生先の子は、元々英雄の運命にあったことはご存知ですよね?」
「…そうなんですかぁ?」
「そうなんです。あの子は本来あの子の力だけで対処できるはずの滅びから世界を救う英雄になっていたはずでした」
本来の葵はあくまで運命の大きなサイクルの中で決められた通りに世界を救うだけの、予定調和の一部分でしかなかった。でもどこかの誰かさんのおかげでその運命が乱れ、葵の敵を上書きするように世界に亀裂が入った。
「元の運命での滅びはあの子が対処するはずが、今のあの子がしなくちゃいけないのは世界の亀裂への対処です」
「…!なるほどぉ…つまり、本来セラスさんの転生先の子が対処するはずの滅びが放置されてしまっていたんですねぇ?」
「その通りです」
上書きと言っても赤いボールペンで書いた線の上に赤の蛍光ペンで何度も重ね塗りをしたようなものだ。紙自体がぐずぐずになって判別しにくくても、蛍光ペンの色とボールペンの色は間違いなく別のものとして存在する。
…逆になんでスピリッツ様は気づいていないんだ?まぁうっかりで世界を一つ滅しかけた女神だからそんなこともあるかと思考に区切りをつけて話を続ける。
「とは言っても、それが起こるのもまだ先の話ですが…」
「セラスさんの方で対策を取っていただけたんですねぇ…ありがとうございますぅ…」
「いえ、仕事ですので」
…ま、僕は相変わらず表立って動くつもりもないし全力で楽させてもらうけどね。
ワンチャン前後編に分ける可能性が…。
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作者プロフィールにあるTwitterから次話投稿したタイミングでツイートしているので気が向いたらどうぞ…




