独白
佐々木君視点です。
ボクは友達を作るのが苦手だ。いつからこうだったのかは覚えていないけど、ボクのある体質が理由ということだけはわかっている。
幼稚園の時も、小学校に入ってから今までも、まともに人と関われたことがない。そもそもボクは影が極端に薄いし、人と関わっても覚えられないことがほとんどだ。
『佐々木君、大丈夫?』
だから、クラスどころか学校の人気者の双葉君がボクのことを覚えていてすごく驚いた。桂君がボクに声をかけてきたのにも驚いたけど、昔にクラスが一緒だったからなんて理由でボクの名前なんて覚えていた双葉君は、はっきり言って異常だ。
家族とあの人達以外から普通に名前を覚えられていることなんて、ボクの人生で初めてのことだった。担任の先生ですらボクの顔を見てもパッと名前が出てこないぐらいなのに。
ボクの体質を知っている人達は、ボクのことをよく『白』だって言う。白は他の色と一緒に居れないから、白は他と一緒にいると白じゃなくなってしまうから。
…それなのに
『やった!それならよろしくね、佐々木君!』
それなのに、彼は…双葉君は当たり前みたいにボクと関わってくれる。家族やあの人達にすら、普通に関わることなんてボクにはできないのに。関わっているだけでボクがボクじゃなくなるみたいになって怖くなる。誰かがボクに入ってくるのが怖くてしょうがなくて…彼らとは違うとわかっていても遠ざけてしまう。
彼は…双葉君は、他の人とは何が違うんだろう?他の人と何が違って、何がボクと同じなんだろう?
ボクのことを話して知ってもらいたい。双葉君のことをボクに教えて欲しい。…でも、人と関わらないことに慣れすぎたボクの口はそう簡単には開いてくれない。
『びっくりしたぁ、佐々木君大丈夫だった?』
そんなボクの気持ちのせいか、双葉君と握手をした時にボク達の間にナニカが走った。電流のようなナニカが。…もしかしたら、双葉君にボクのことを伝えたい気持ちのせいで起きてしまったことなのかもしれない。
でも、それならボクにまであの感覚が来たのはなんでなんだろう?やっぱり、彼もボクと同じようなものを持っているのかもしれない。…捨てたくても捨てられない、変わりたくても変われないボクと同じものを。
彼と話がしたい。彼と、友達になりたい。
彼のことを考えるほどにその気持ちが強くなっていく。…でも、ボクなんかが彼と友達になれるんだろうか?彼は学校の人気者で、桂君みたいに仲の良い友達がいて、女子からの人気も高くて…全部ボクとは大違いだ。
桂君がボクのことを見つけてくれなかったら、ボクなんかが双葉君と話すきっかけなんてなかったんだ。ボクなんかが友達になりたいと思っていても、彼はボクなんかとは友達にはなりたくないだろうな…。
…それでも、それでもやっぱり双葉君がボクと似ているなら、一度でいいから彼とゆっくり話をしてみたい。
この修学旅行の間に、できるだけ彼と仲良くなれるように頑張ってみよう。友達を作ろうとするなんていつぶりかはわからないけど、ボクなりに頑張ってみよう。今まで一度も友達なんてできたことのないボクだけど、彼なら…双葉君ならこんなボクと友達になってくれるかもしれない。
この修学旅行の間に彼と話してダメそうなら、すっぱり諦めよう。ボクと普通に関われる人なんてやっぱりいないんだって。ボクは諦めてこれまでのように一人っきりで生きていこう。
…きっと、あの人達はボクの心を折るためにボクを普通の学校に通わせたんだろうしね。
双葉君がボクにとっての最初で最後の希望になるんだと思う。だから、なけなしの勇気でこの修学旅行の間だけでも頑張ってみよう。
…双葉君以外の班員の人達には、きっと不快な思いをさせてしまうと思う。でも修学旅行の間だけは許してほしい。これでダメならすっぱりと諦めるから。どうかボクに覚悟を決める最後の時間を貰いたいんだ。
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作者プロフィールにあるTwitterから次話投稿したタイミングでツイートしているので気が向いたらどうぞ…




