転生の始まり
セラス視点に戻ります。短めです。
目が覚めるという感覚を、とても久しぶりに味わった。先程までク創造神が目の前にいたはずが、今はたまに休暇に使っていた僕用の空間にいた。
思えば、初めはここも星空と水面しかない空間だった。50億年の間にあらゆる書物を集めて読書用の空間に改造した結果、一面の星空と水面の上に本棚が立ち並ぶ、無駄に神秘的な雰囲気のある大図書館になってしまった。
自分の体を確認してみれば、天使の体も機能もそのままのようだ。鏡などを使わなくても自分の正確な輪郭を捉えることができるし、自分の中にあるエネルギーやスペックも天界で社畜していた時と寸分違わぬものだと知覚できる。
知覚の範囲を少し広げてみると、大量の情報が一気に頭に流れ込んでくる。まぁ僕の処理能力なら世界1つぐらいの情報なら処理できるので、世界の境界線まで知覚の範囲を広げていく。
なるほどねぇ…この仕事、かなり楽な仕事だったみたいだ。
まずわかったのは、英雄の種子への転生は成功しているということ。
どうやら現在は母親のお腹の中にいる状態のようで、生まれるのは2ヶ月後ぐらい。まだ表人格の意識は芽生えていないみたいだ。ただ、体に眠っている潜在能力はこの世界の基準で考えれば群を抜いて優れており、僕の期待を大きく上回っていた。
世界の状態も思ったほど悪くはないようで、明確に世界に異変が起き始めるのは、この子が14才になったぐらいの時だろう。
僕がそれまでにこの子の成長を助けてあげれば、勝手に世界を救ってくれるかもしれない。
それに、僕の方の自由もかなり効かせることができるみたいで、出ようと思えば体ごと交換して僕の能力を全て使うこともできるみたいだ。いざとなったら僕が出てさっさと終わらせることもできる訳だ。
これなら本当に長期休暇として満喫できそうだ…。
さて、一応他の力の強い個体についても確認しておこうかな。
そう考えて、この世界の人間特有の『異能』の強さに焦点を当てて探知してみると、おかしな反応が返ってくる。
これは…神が人間に接触しようとしている…?
普通、ある程度文明が発展した世界には、神託として声を届けることしか許されないはずなのだけど、今誰かに接触を試みている神は姿まで晒そうとしているみたいだ。
しっかりと意識を向けて知覚すると、『聖人』の異能を持つ人間にこの世界の神、つまり世界が崩壊する原因になった神が接触を図ろうとしているらしい。
…はぁ、面倒だけど仕事しておくか。
流石に、創造神レンの部下として規則違反を見逃すわけにはいかないからな。ちょうど小言も言ってやりたかったことだし。
神が『聖人』と接触するために世界の境界に開いた扉の座標を確認すると、すぐに精神体として転移する。転移先では、いかにも気の弱そうな女神がちょうど扉をくぐってきたところだった。
仕事で関わった時に聞いた名前は確か…
「スピリッツ様?」
「ひゃい!!!???」
おぉ、空中で尻餅をつくなんて器用だなぁ…。
前回に引き続き閲覧、ブックマークして頂けた方、誠にありがとうございます。
また、評価やいいねをつけて頂いた方も本当にありがとうございます。
ようやく転生スタートになります。




