久々の一条先生
蒼のお散歩をしつつ、対仮想に到着する。あらかじめ言ってもおいても面白くないし、一条先生には何も連絡してないからとりあえず受付のおねえさんのところに行く。おねえさんは僕の容姿を見てか、完全に子供に対する態度で対応してくる。
「こんにちは〜」
「こんにちは、どうしたの?お父さんとお母さんは?」
「えっと、一条先生に会いに来たんですけど…これがあれば大丈夫だと思うんですけど」
迷子ぐらいの扱いで対応してくるおねえさんに一条先生からもらったカードを渡すと、「ちょっと待ってね?」と言いながらおねえさんは受け取ったカードを確認し出す。
「蒼〜、ちょっと待ってようね〜」
「わう」
しっぽを振りながらおとなしく僕のそばでお座りする蒼。かわいいな〜!うりうり〜!そうして僕が蒼を撫で回していると、処理が終わったらしいおねえさんが話しかけてくる。
「お待たせしちゃってごめんね?一条先生会ってくれるって!」
「ほんとですか!ありがとうございます!」
「あそこのエレベーターで2階に上がれば、一条先生が迎えに来てくれるからね」
「はーい。ありがとうございます!」
対応してくれたおねえさんにお礼を言ってから、行き慣れた二階の一条先生の研究室に向かう。エレベーターが二階に到着して扉が開くと、通路の先から一条先生が走ってくるのが見えた。
「あ!一条先生こんにち…」
と、僕が挨拶しようとしたところで、慌てた様子の一条先生にガッと肩を掴まれる。
「セラスクン?!どうしたのかナ急にこんな堂々としテ?!」
「あ〜それの説明とお披露目に来たんですよ」
「ア〜…とにかく一旦私の研究室に行こうカ、話はそれからだネ!」
「キャウン!」
そう言った一条先生に強引に手を引かれて研究室まで連れて行かれる。引っ張られた僕と一緒に蒼のリードが引かれて、蒼が苦しそうな声をあげたけど一条先生は周りの目も気にしないで研究室まで突き進んで行く。
「一条先生?落ち着きましたか?」
「…そうだネ、セラスクンが考えなしに普通に姿を晒しているワケないからネ。蒼クンもごめんネ?」
「ワウッ!」
研究室についてようやく落ち着きを取り戻した一条先生は、蒼に謝ってから僕に訳を話すように促す。蒼が不満そうに鳴いていたけど、僕が頭を撫でたら黙っておとなしくしていた。
「まぁ訳と言っても、僕が単体で動けるようにサブ機を創ってみたんですよ。なので今日はこの体の性能テストがしたくて来ました」
「サブ機…ネ、まぁセラスクンなら何をやっても不思議じゃないカ。とにかくわかったヨ、何を用意すればいいのかナ?」
「ひとまず、シミュレーターで目一杯仮想体を用意してください」
「わかったヨ、最高難易度の集団戦を用意するネ」
そう言った一条先生と蒼と一緒にシミュレーターに向かう。
「ところでセラスクン、いらない心配だろうけど武器はどうするのかナ?必要だったら葵クンにもあげた指輪を用意するけド」
「あぁ、大丈夫です。それも含めて試したいことがあるので」
そうして一条先生と会話していると、すぐにシミュレーションルームに着いた。いつものように一条先生と別れてシミュレーターに入って行こうとすると、蒼がしれっと外で待とうとしていたから抱き抱えて連れて行く。
一緒に来てもらわないと困るよ!僕のこの体が弱かったら蒼になんとかしてもらおうと思ってたんだから。
「キュ〜ン…」
シミュレータの中で蒼を愛でて待っていると、一条先生から準備が終わったと声がかかりシミュレーターが起動する。広がっていくフィールドは木々が生い茂る山の中で、珍しくシミュレーションが始まった瞬間に全方位から視線を感じた。
「グルルゥ!」
嫌そうにしていた蒼も戦闘体勢を取り周囲の警戒を始める。周りから感じる気配が強くなっていき、やがてその姿が目視できる範囲に入ってくる。
「仮想敵:中型猿型仮想体・群れ、中型狼型仮想体・群れ、脅威度SSS、訓練を開始します」
無機質なアナウンスが響き、周囲から一斉に猿と狼の仮想体が襲いかかってくる。
…さて、この体でどこまでやれるかな!
次回、集団戦!セラスの新戦法とは!?
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作者プロフィールにあるTwitterから次話投稿したタイミングでツイートしているので気が向いたらどうぞ…




