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熾天使さんは傍観者  作者: 位名月
人生の終わり、転生の始まり
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幕間:創造神レンの憂鬱

創造神レンの視点です。

 セラスの輪郭(りんかく)がぼやけていって見えなくなるのと同時に、周囲に(あふ)れていた光が収まる。私はセラスを転生先の世界に送れたことを確認すると、かざしていた手を下ろす。


 「ふぅ…」


 無意識にため息をついたことに気づいて、笑みが(こぼ)れてしまう。彼…いや彼女には初めから困らされてばかりだった。


 思い返せば、私の憂鬱(ゆううつ)が始まったのは約50億年前。閻魔(えんま)君が私の宮殿に相談をしにきた時からだった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 「創造神レン、ご相談があります」


 「うん?閻魔君、どうしたのかな?」


 私の前で10m以上の体を必死に縮めさせて(ひざまず)いているのは、私がかなり昔に地獄の裁判官として創造した閻魔君だ。いつも私が与えたマニュアル通りに頑張ってくれている良い子なのだけれど、相談に来るのは珍しい。


 「創造神レンのお手を(わずら)わせるのは大変心苦しいのですが、一人の亡者についてご相談させて頂きたいのです」


 「あぁ、いいよいいよ。何があったんだい?」


 「はい、その亡者なのですが…」


 閻魔君の話を聞くに、少々特殊な死に方をした人間がいたようだ。なんでもその場では死なない運命だったはずが、意思の力のみで運命を捻じ曲げ、本来死ぬ運命だった友人を生かした上でそこで死ぬ運命ではなかった犯人を殺して自分も死んだらしい。


 「随分元気な子がいたんだねぇ」


 「はい。あくまで修正力の範囲内での話ですので問題はないのですが、運命を変える程の力を持ちながら、その精神性は英雄とも聖人とも言い難く、しかし狂人と言うほどの悪性も持ち合わせていません」


 「なるほどねぇ」


 こういう場合は大体、運命を変えた際の功績と本人の精神性で判決を下す指示になっていたのだけど、今回の件で言えばどちらも明確に判断しづらい。


 「うーん…」


 地獄で罰を与えるほどではないが、天国で暮らせるほどの善性も無い…。


 「それじゃあ、この亡者については私の方で預かるよ」


 「と、言いますと?」


 「うん、私の元で天使として働いてもらおうと思う。ただ精神については生前の精神をそのままにしておこうと思うんだ」


 「あぁ…なるほど。天界での労働は、人間の精神に耐えられるモノでは無いですからね」


 「その人間の精神がいい感じに摩耗(まもう)したら輪廻(りんね)の輪に戻すことにしようか」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 その時はただ珍しいこともあるものだと思っていただけで、その魂に天使としての名と体を与えた後はその天使が使い物にならなくなった報告を待てばいいだけだと考えていた。


 しかし、数年が経った頃に上がってきた報告に私は初めて自分の耳を疑った。私が名と体を与えた天使セラスは、労役に押し潰されるどころか余裕が出始めて勝手に休息を取っていると言うのだ。


 中々信じ難かったが、生前に運命を捻じ曲げるような精神力の持ち主だしそういうこともあるだろう。とりあえず仕事量を増やすことにした。これで数年すれば潰れるだろう。


 …が、その数年後に私のところに上がってきた報告は、またセラスが勝手に休んでいるという報告だった。


 どういうことなんだ…。もう天界の中では連絡役として増やせる仕事量に限界があるぞ…。


 さらに訳がわからなかったのが、一度セラスを呼び出した際に判明した、能力の向上だ。


 普通、天使というのは私が創造した時点から成長するということはない。なぜなら初めから完成形だからだ。そのことに疑問を持つ天使もいない。だが、セラスは元々の精神を残した影響か、休みたい欲求と私への反骨心で性能を『大天使』レベルまで引き上げていた。


 困惑はしたが、ちょうど良いと考えて体を『大天使』に更新して地獄との仕事を増やすことにした。


 …が、その後もセラスの精神は壊れることはなく、能力も向上し続け、気づけばセラスは『熾天使』になっていた。


 おかしい…そのうち心が壊れるだろうと思っていたけど、結局壊れる様子も見せずに最近会った時も元気に悪態を(心の中で)ついてきた。


 悪態というのも、心を壊そうと思って出している仕事に対する悪態が主なもので、本気で謀反を起こしたりする様子は見せないため処罰することもできない。


 初めのうちは、勝手に休息を取るセラスに対して敵意すら向ける天使もいたが、今ではセラスの仕事ぶりに尊敬の念を向けるものが天界以外にも数多くいるほどだ。


 最近は功績が溜まりすぎたのか、うっすらと神気すら纏い始めている気がする…。



 ……まぁ、そんな経緯で徳を積みすぎたセラスの扱いに困った僕は、とりあえず現在の仕事から離れさせるために転生を提案した訳だった。


 セラス程の能力があれば一つの世界を救うなんてことは朝飯前だし、できるだけ怠けさせて徳を落としてもらおうと考えた訳だったので、セラスのあの提案は私にとっては渡りに船だった。


 しかし、心が読めていてもセラスの考えることはよくわからない…。何をどうしたら『2重人格の裏人格になりたい』なんて発想が出るのだろうか…?



 まぁ…悪い子じゃないし、セラスは満足そうだったから良いか…。


前回に引き続き閲覧、ブックマークして頂けた方、誠にありがとうございます。

また、評価やいいねをつけて頂いた方も本当にありがとうございます。

今回はク◯神視点のお話となりました。次話からようやく転生スタートです。気長にお付き合い頂けると幸いです。

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― 新着の感想 ―
[一言] ???「人間の精神に此の仕事量は無理だべ?まぁほどほどに頑張んな」 ???「うん?これいけんのマ?まぁ特殊な魂の持ち主だったし…仕事ドン」 ???「おいおい…流石に働きすぎだべ?休みたい…
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