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熾天使さんは傍観者  作者: 位名月
戦闘狂の誕生
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慰霊碑

 仮想体頻出地帯を走り抜け、森を抜ける。するとそこには半透明のドーム状の建造物と一面の海だけが広がっていた。


 …これが海かぁ。本で見たことはあったけど、実際に見るのは初めてだな。海は仮想体が多くて開発の手があんまり及んでないから、一般人はほとんど見る機会がないんだよね。


 「…すっごいなぁ」


 「…葵?ぼさっとしてんな。後で見る機会はあるからさっさと行くぞ」


 「あ、はい師匠!」


 海に見惚れて足が止まってしまっていたらしい。師匠に叱られながら車と並走するように走ってドーム状の建物に向かっていく。


 「師匠、あれが目的の慰霊碑があるところですか?」


 「そうだ、あれが龍災で出た死者の魂が眠る場所だ」


 師匠に言われてドーム状の建物をしっかり見ると、ドームの中央付近に大きな石碑がうっすらと見える。ドームの中には他にも大きな建物が二つあるけど、あれは確か資料にのってた宿泊施設と当時の物が保存されてる展示場だったよな。


 「ちなみに、あのドームって何で出来てるんですか?なんだか見た事のない色ですけど」


 半透明のドームは全体的に青みがかっていて、ぼーっとしていると背後の海と同化していて気づかなそうな外見だった。


 「あぁ、なんだったかな…確か骨組は超硬構造用合金で、透明なところの材質は強化樹脂だったはずだぞ?」


 「…なるほど?」


 強化樹脂はなんとなくわかるけど…チョウコウコウゾウヨウゴウキン?母音のOとUが多いことぐらいしかわかんなかったぞ?


 「あー…まぁ要するにめっちゃ硬い金属とめっちゃ硬い樹脂で出来てるってことだ」


 「なるほど、ありがとうございます。それじゃああの色はその樹脂の色なんですか?」


 「いや、それはまた別の理由だな」


 僕の疑問を師匠は首を振って否定する。ならなんだろう?海の色が映り込んでるだけなのかな?


 「あのドームを覆うように仮想体除けのバリアが張ってあるんだよ。そのバリアが青みがかって見えるらしいぞ?」


 「へぇ〜!なるほど!」


 「詳しい理屈は後で誰か詳しそうな奴に聞いてくれ」


 師匠は少し面倒臭そうにしながらも僕の疑問に答えると、表情を真剣なものに戻して周囲の警戒に戻る。道中ではそれ以上言葉を交わすこともなく、5分も立たないうちにドーム状の建物に着いた。


 近くで見たドームは、確かに師匠の話通りバリアと建材の二層構造になっていた。網目状に広がった骨組と不思議なバリアを眺めながら中に入って行き、そのまま慰霊碑近くの駐車場まで向かって行く。


 「そんじゃあ式典の時と同じで、葵はオレに同行すりゃあいいからな」


 「わかりました。確か建物の周囲の巡回でしたよね?」


 「ああ。今日は昨日の会場とは違って、侵入さえされなけりゃよっぽどのことは起こらねぇからな。どっちかっつーと仮想体への警戒が大きいな」


 そうなのだ。昨日の式典やホテルとは違って、今日は基本的に一部のマスコミの他は昨日の式典で貴賓席に居た人間しかいないことになっている。だから師匠が言った通りドーム内の護衛は最低限に留めて、周囲でドーム内に仮想体が侵入しないように護衛していれば良いというわけだ。


 「そんじゃあ行くぞ」


 「はい師匠」


 そうして一条家の方々が乗った車を見送りながら、師匠と他の護衛さん達と一緒にドームの外に向かって行った。…運よく仮想体と戦えないかなぁ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 葵さんが守宮さまや護衛さん達と一緒に私の乗る車からどんどん離れていく。葵さん、今日はずっと近くにいてくれるのだと思っていたんですが…。


 「寂しいですか?」


 どきっとした。声のした方を見ると、守宮さまの使用人の片桐さんがこちらを見つめていた。遅れて状況に理解が追いつき、どんどんと自分の顔が熱を持って行くのがわかる。


 「え、えっと!なんのことでしょうか!?」


 なんとか答えたその言葉も、いつものマナーのお勉強の時のように返せず自分でびっくりしてしまう。おかしいです…こんなこと今までなかったんですが…。


 「葵様が行ってしまわれて、寂しいですか?」


 「…」


 葵さん…昨日会ったばかりの私と同い年の護衛さん。一条家の長女である私を怖がったりしないで関わってくれる人。とっても綺麗なお顔なのに、私よりもずっと強くて、私を守ってくれた時もあんなにかっこよくて。とってもお優しくて。私にお兄様がいたら、こんな感じなのかなぁ…なんて、同い年なのに思っちゃったりして…。


 「そう、かもしれないです」


 控えめに肯定を返した私に、片桐さんは優しい微笑みを浮かべる。今まで見たことのないその優しい表情に、私はなんだか恥ずかしくなってしまって顔を逸らしてしまう。


 「大丈夫ですよ、お嬢様。本日の帰りはまた一緒に居られるはずですから」


 「…えぇ、大丈夫です」


 大丈夫。葵さんも護衛として頑張ってらっしゃるんだから、私も一条家長女としての務めをしっかりと果たさないと…!


 …さっき近くで見た葵さんのお顔、とっても綺麗だったなぁ。


最後ちょっとだけお嬢様視点でした。


閲覧、ブックマーク、評価やいいねして頂けた方、誠にありがとうございます。

感想も励みになっています。誤字報告も助かります。


気づいたらいいね千件超えててびっくりしたし、昨日のアクセス数が初めて6000まで行ってびっくりしてます。

…びっくりです(物書きにあるまじき語彙力)本当にいつも読んでいただいてありがとうございます!


作者プロフィールにあるTwitterから次話投稿したタイミングでツイートしているので気が向いたらどうぞ…

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