目覚めと芽生え
今度こそ葵視点です
「……どこだここ」
目が覚めると、知らない場所にいた。星空と水面だけが続く広い場所に、数え切れないほどの本棚がどこまでも続いている。さっきまでは…そう、護衛の仕事をしていて、テロリストが襲ってきて、お嬢様を安全な場所に隠そうと中庭に行ったら黒装束の男がいて…
「あぁ〜…死んじゃったのか?僕」
勝てなかったなぁ…師匠のところでそれなりに強くなれていたとは思っていたし、敵を前にしてもちゃんと動けた。でも、僕の方が弱かった。それだけの話だった。
「勝ちたかったなぁ…」
「それなら、またリベンジすればいいんじゃない?」
唐突に、後ろからその声は聞こえてきた。驚きながら振り向くと、そこには天使がいた。どこかの絵画のような白いヴェールを纏い、三対六枚の羽と左右非対称の輪を頭に浮かべた女性がこちらには目も向けずに本を片手に高価そうなシンプルな椅子に腰掛けていた。
「えっと…あなたは?」
「僕のことはいいよ、どうせすぐ忘れるしね」
「はぁ…」
相変わらず天使さんはこちらを見ないで答える。まぁ、それはいいとして。さっきのあれは何だったんだろう…?リベンジとか何とか。
「簡単な話だよ、アレとはどうせそのうちまた会うことになるんだからね」
「そうなんですか?…って、なんで僕の考えてる事!」
口には出してなかったはずなんだけど…。天使さんだから考えてることぐらいわかっちゃうのかな?
「別にそんな事ない。僕は僕だから」
「…???」
よくわかんないなぁ…。まぁ、考えてもしょうがないか。それはそれとして…
「えっと、また会うことになるっていうのは?」
「あぁ、アレとの縁ができちゃったからね。いつかは知らないけど、また会うことになるよ」
…?そんなこと言われても、僕もう死んじゃったみたいだし…そりゃリベンジできるならしたいものだけど。
「ん?あぁ、死んでないよ?」
「え…?」
そこでようやく天使さんはこちらに目を向ける。わぁ〜綺麗な顔…ってそうじゃなくて!
「え?!僕死んでないんですか!?」
「うん。というよりこんなところで死なれちゃ困る」
「え??」
どういうこと…?ここって死後の世界とかじゃないの?じゃあ天使さん何なの?僕の疑問も意に介さないで話し始める。
「もうすぐ起きる頃だろうと思うけど…あぁ、やっぱり」
「え?え?どういうことですか??」
なんて僕が混乱していると、唐突に僕の体の輪郭がぼやけ始める。バッと天使さんの方を見ると、天使さんの輪郭も、それ以外も全てがぼやけ始めていた。…もしかしてぼやけてるのは僕の視界?
「ま、言ってもどうせ忘れちゃうけど…頑張って強くなりなよ」
「…!……!?」
声がでない?!まだ聞きたいことあるんですけど!ここはどこなのかとか、あなたは誰なのかとか、もうちょっとだけ話したいんです!だから……
「ちょっと待って!!」
「きゃっ!」
誰かの悲鳴が聞こえた。周りを見渡せば僕はベッドにいて、近くには片桐さんが立っていた。もしかしてさっきのかわいい悲鳴って片桐さん…?
「葵様!大丈夫ですか?どこか痛んだりはしますか?」
「え?えぇ、大丈夫です。ところでここは…?」
さっきまで僕は…あれ?何だったっけ?さっきまで誰かと話してたような…。
「宿泊予定だったホテルです。葵様が倒れた後に守宮様がここまで運ばれたんです」
「そうなんですね…そうだ!お嬢様は!?」
「大丈夫です。怪我もなかったですし、今は落ち着いて一条家の方達とご一緒にホテルで過ごされています」
僕の疑問に片桐さんは落ち着いて答えてくれる。良かった…お嬢様は何とか守れたんだな。
「そうですか、良かったです…師匠はどうしてますか?」
「守宮様は事件の後始末に出ていますよ。葵様も後で聴取に呼ばれるとは思いますが、それまでゆっくりお休みになってください」
飛び起きた勢いのまま起こしていた上半身を片桐さんにそっとベッドに戻され、布団をかけられる。
「でも、僕もすぐに行ったほうがいいんじゃないですか?」
「問題ありません、守宮様には私から連絡しておきますので心配しないでください」
…そっか、ならいいのか?
部屋の電気を暗くして静かに部屋を離れる片桐さんを見送って、僕はベッドで目を閉じる。
あの黒装束、強かったな。師匠と磨いた技も力も、全然通用しなかった。速さも力も技も異能も立ち回りも…全部負けていた。お嬢様が無事で済んだのも、奇跡みたいなものだろう。…もっと、強くならないとなぁ。
……あの黒装束、次会ったら絶対に勝つ。
一瞬の交錯でしたが、次はいつになりますかね?
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作者プロフィールにあるTwitterから次話投稿したタイミングでツイートしているので気が向いたらどうぞ…




