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熾天使さんは傍観者  作者: 位名月
戦闘狂の誕生
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家族との時間

 『葵様、起きてください。もうすぐ到着しますよ?』


 『んぅ…?』


 師匠の家の使用人さんの車で家まで送ってもらう。今葵を起こしてくれているこの使用人の女性は、いつも葵を送ってくれる片桐(かたぎり)さんと言う方だ。基本的に訓練中の師匠の様に無表情で、一見怖そうな印象を覚える片桐さんだけど、抑えきれない子供好きが見え隠れするとてもいい人だ。


 『片桐さん?…あ!すいません!寝ちゃってましたね!』


 『いえ、葵様も訓練でお疲れでしょうし全く問題ありません』


 『すいません…いつもありがとうございます』


 『…いえ、仕事ですので』


 基本こんな感じで、片桐さんは冷静に受け答えしているけど…少し心を読んであげればその本心は丸裸になる。


 『(…はぁ、葵様はどうしてこうも可愛らしいのでしょう?純真な寝顔と訓練中の真剣なお顔のギャップが凄まじいです…。私が治癒系の異能持ちなら葵様が眠っている間に癒して差し上げるのに…。)』


 …と、これはこれで若干の恐怖を感じるけれど、完全に庇護(ひご)する対象としか見ていないので恐怖を感じるのは僕の心が汚れているからなのだ。…そうに違いない。


 『…到着しました。それではゆっくりお休みください』


 『片桐さん、ありがとうございました!次の訓練の時もよろしくお願いします!』


 『えぇ、それでは失礼致します(使用人の私に毎回お礼を言ってくださる葵様…尊いです…。どうかそのまま健やかに成長なさってください…)』


 実際の発言に比べて心の声がうるさい片桐さんに見送られて家に入っていく葵。扉のセキュリティは生体認証で勝手に解除され、家に入れば音に気づいた母が家から出てくる。


 『おかえり葵、今日の訓練はどうだった?』


 『ただいまお母さん、疲れたけど楽しかったよ』


 『そう、ご飯できてるから手を洗っちゃいなさい?』


 母の言葉に『はーい』と返事をして葵は手を洗いに行く。母はそんな葵の背中を視線で追いかけながら、新しく増えた包帯を見て心配そうな表情でため息をつく。


 『お母さーん、凛月は起きてる?』


 『えぇ、起きてるわよ。お部屋にいるわ』


 『わかった〜』


 母の言葉を聞いて、手洗いを終えた葵はかつて自分が使っていた子供部屋に向かう。扉を開いて中のベビーベッドを覗き込めば、片手でおもちゃをブンブンと振って遊んでいるむすっとした顔の赤ん坊がいる。


 『凛月〜ただいま、お兄ちゃんだよ〜』


 『…にぃに、あぶぅ』


 『おかえりしてくれたの?ありがとうね』


 むすっとした表情のまま葵が差し出した手を握って答えるのは、弟の凛月だ。凛月は、母親似の葵に対してかなり父親に似ている。このむすっとした表情なんて父にそっくりだ。凛月と戯れていると、母が部屋に入ってくる。


 『あら、凛月と一緒にいたのね?これからご飯よ』


 『うん!何か手伝うことある?』


 『大丈夫よ、お父さんがやってくれているわ』


 母はそう言うと凛月を抱き上げて葵と一緒に子供部屋から出てリビングへ向かう。リビングにつくと、父が食卓に料理を配膳していた。


 『お父さん、ただいま!』


 『あぁ葵、おかえり。…訓練はどうだった?』


 『楽しかったよ!…まだ師匠には一本も入れられてないけど』


 『…あまり焦ることはない。じっくりやっていけばいい』


 父は配膳を終わらせると、葵の頭を撫でて食卓につく。凛月と母も食卓につき、全員が揃って手を合わせて父が音頭を取る。


 『それじゃあ、いただきます』


 『『『いただきます(いぁいまぅ)』』』


 そうして両親の作った食事を食べていると、話は師匠との仕事についての話題になる。


 『…それで葵、守宮様の仕事のついていくとのことだが?』


 『うん、師匠が一緒に行くか?って。師匠に迷惑はかけないように頑張るよ』


 『…そうか、あの方が一緒ならよっぽどのことがなければ危険もないだろうが、気をつけるんだぞ?』


 『うん!』


 そうして話している間も、母はずっと心配そうな表情をしている。そんな母に父は師匠から聞いた仕事の話を説明していく。


 『内容は一条の本家の護衛らしい。あくまで見学程度で同行させるだけらしいな』


 『大丈夫なのかしら、護衛に守宮様をあてるほど危険なの?』


 『いや、危険地帯に向かうわけでもないが万全を期してと言うことらしい』


 『そう、何か失礼がないといいのだけど…』


 『…流石に守宮様も、一条の本家の方々と関わらせることはしないだろう』


 そうして食卓の話題は葵と師匠の仕事に関することで持ちきりになり、母が不安感を拭いきれない様子のまま食事が終わり解散になる。母が片付けをしている間に、父が凛月と葵を風呂に入れる。


 『凛月〜、お目々閉じてね〜?』


 『うぅ!』


 父に見守られながら、葵は凛月を洗っていく。そうして葵も師匠に巻かれた包帯を外して父に洗われていく。


 『…相変わらず、葵は傷の治りが早いな』


 『うん?そうなの?』


 包帯の下にあった師匠につけられた切り傷は、すでにカサブタになり始めていた。父は洗いながら葵の体を確認していくが、訓練のたびに怪我をしているとは考えられない綺麗な体をしている。


 …それもそのはず、葵の体は僕によってそもそもの治癒力が引き上げられているのだ。


 『もともと異能力が大きいからなのか…まぁ何にせよ良いことだ』


 『…?』


 『よし、湯船に浸かって温まったら上がるか』


 『『…うん!(あう!)』』


  そうしてしっかりと温まるまで湯船に浸かり、風呂から上がってそれぞれベットに入っていく。新しく包帯を巻き直し、弟が生まれてから与えられた一人部屋で葵がベッドで横になっていると、そっと扉が開かれて母が入ってくる。


 『…葵?まだ起きてるかしら?』


 『お母さん…?』


 眠たい目を擦って起きようとする葵を、母は手で制止してベット脇に腰掛ける。母は葵の頭を撫でながらゆっくりと話だす。


 『葵、戦うことは怖くない?』


 『…?よくわかんない…』


 『…そう。葵、怖かったり危ない時はちゃんと逃げるのよ?』


 『…うん』


 そう返事をした葵を、母は優しく撫でながら眠るまで見守っていた。


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総合PVが10万件、総合ユニークアクセスが2万を超えました!いつも読んでくださる方々、ありがとうございます!

これからもできるだけ毎日頑張って更新していきます!


作者プロフィールにあるTwitterから次話投稿したタイミングでツイートしているので気が向いたらどうぞ…

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