天界の社畜
前話よりは短いですが、会話がほぼ無いためかなり読み辛いかもしれません。
セラスという名を与えられて天使になってから、あっという間に時間は過ぎていった。
天使になった直後にラムエルさんから『名状し難きマニュアルのようなモノ』を渡されて一読した後は、すぐに現場投入となった。
連絡役ということで正直舐めていたところがあったが、僕の考えは甘かったと言わざるを得ないだろう。
周りの天使たちは疲れ知らずの体と圧倒的なスペックに物を言わせて休みなく仕事をしていくため、僕の仕事もまた尽きることがないのだ。元々怠惰な僕には休みなしで働き続けることは苦痛でしかなかった。
連絡役を始めて少し経った頃、休みなく働く苦痛に耐えかねた僕は、仕事を頼んできた天使に「休みたいとは思わないんですか」と聞いたことがあった。その質問に対して天使は、
「主のために尽くす事こそ、無上の喜びですので」
…と答えた。考えてみれば当たり前なのだ。天使というものは本来、神が神のためだけに創造したシステムの一部のような存在なのだ。生前の工場などで休みなく動いていたロボットなんかよりもよっぽどタチが悪い。
スーパーコンピュータなんかがいくらあっても足りない処理能力と、ロボットも人間も上回るスペックを誇り、損耗も老朽化もしない体は圧倒的な能率で仕事をこなして行く。極め付けに厄介なのが、天使たちは、仕事をこなせばこなすほど「主の役に立てている!」と精神的なバフがかかり続けるのだ。
それを理解した時点で、僕は環境に変化を求めることをやめた。
自分の体のスペックを十分以上に発揮する方法を探し、効率的に仕事を片付ける方法を模索し続けてなんとか休みを作り出そうとした。そうして5年ほど経った頃に、ようやく5時間程度の仕事が何もない時間を作ることに成功した。
ちなみに休息には、僕が天使の名と体を与えられた空間がそのまま与えられているので、そこを使っていた。
段々と仕事の効率が上がって行き、休息の時間が増えてきた時のことだ。なぜか仕事の量が倍になった。
なぜこんなことになったのかと神に異議申し立てたいところではあったが、仕事が忙しすぎてそんなことをしている暇はないし、それが許される職場の雰囲気ではい。
内心では悲鳴をあげながらも頭と体を全力以上で働かせ続けていると、不思議となんとかなるもので10年経った頃にはまた休息の時間を作れるようになっていた。
…が、今度は仕事の種類を増やされた。契約と違うぞファッ◯ンゴッド。
天界の中だけではなく地獄の鬼達との連絡役までやらされる羽目になった。天界の外に出向くにはある程度の格が必要とか言われて体をアップグレードされたが、そんなことよりも僕の頭には一つの嫌な予感が芽生えていた。
……これ、無限ループでは?
そんな僕の予感は見事に的中していたようで、仕事をこなせるようになるたびに仕事が増えていった。
50年経って地獄の仕事が増え、100年経って連絡だけでなく交渉の仕事が増え、1千年経って交渉の仕事量が増え、5千年経って交渉相手の格が上がって体が変わって、1万年経ってまた量が増えて、10万年経って別の仕事が増えて体が変わって、100万年経って神が運営する別の世界の仕事が増えて体が変わって、1億年経って神と関わる仕事が増えて体が変わって…。
そんなこんなで3億年が経った頃、僕は50個の世界を飛び回りながら連絡・交渉・システム運用の仕事をこなして年休2日を実現することに成功していた。
いつの間にか翼は三対六枚になっていたし、頭上の輪は特殊な王冠のような形になっていた。仕事が忙しすぎて、自分の性能が向上したことは理解していても、外見がここまで変わっていることには最近まで気づけなかった。
翼が増えていたのなら物理的な作業効率をさらにあげられそうだ…。
そういえば、仕事をして行くうちにわかったことなのだけれど、僕に名と体を与えた神は、星の数ほどある世界とその神の中ではかなり上位の存在にあたるらしい。
正式な神名は創造神レンといい、僕の体のアップグレードは創造の権能を利用したものだった。
……そんなこんなで大体50億年経ったある時、僕は創造神レンに呼び出されていた。
前回に引き続き閲覧、ブックマークして頂けた方、誠にありがとうございます。
また、評価をつけて頂いた方も本当にありがとうございます。
正直誰かに読んでいただけるモノだと自信を持って投稿しているモノでは無いので、とても驚いています。
転生前の話は多分次かその次に終わると思いますので、気長にお付き合いいただけると幸いです。




