父との初訓練-2
約束の2本目です…。前話も読んでいない方いらっしゃったらぜひ…。
葵の喜びも落ち着き、父の親バカ妄想もひと段落したところで訓練が再開されることになった。訓練が再開すれば、先程までの浮ついた空気もすぐになくなり、集中して訓練を行う。
葵と父がマンツーマンで訓練をしている間、蒼は離れた場所から静かに見守っていた。…撫でたい。
『初めのうちは、まず体全体に異能力を巡らせることができるように訓練するんだ』
『はい、おとうさん』
真剣に訓練が進むにつれ、僕が慣らしておいたアドバンテージは遺憾無く発揮されて行った。異能力を動かす訓練を始めたばかりの葵は、感覚を掴むのに苦労していた様子だったが、感覚さえ掴んでしまえばあっという間に異能力を全身に巡らせることができるようになっていった。
『…葵は上達が早いな』
『ほんと!?』
思わずといった様子で出た父の言葉に、葵は無邪気に喜ぶ。そんな葵を見て、父はあまり調子に乗らせても良くないと考えたのか、真剣な表情で葵と視線の高さを合わせて語り始める。
『いいか、葵。上達が早いとは言っても、この技術は初歩の技術だ。強くなりたいなら、自分がいくらもう出来ていると思っても訓練は止めてはいけない』
『…うん』
『…この力は誰かを傷つけるものではない。葵や、葵の大切な人たちを守るためのものだ。それを忘れるな?』
『…はい、お父さん』
父の言葉に、葵はあまり理解が追いついてはいなかった。それでも真剣な父の表情から大事なことだというのは理解して、しっかりと父の言葉を記憶に焼き付けていた。
真剣に返事をした葵の様子を見て満足げに頷いた父は、一度葵の頭を撫でて立ち上がる。
『よし、異能力の訓練はここまでにしておこう。暇な時にでも異能力を動かしていれば、それだけでも訓練になる。強くなりたいのならやっておくといい』
『はーい』
『それでは、武器の扱いを教えようか』
父がそう言ったところで、唐突に訓練室の中で別室にいる一条先生の声が響く。
『〈ちょっと良いかナ?〉』
『一条先生?どうされました?』
『〈武器の訓練をするのなら、私のプレゼントが役に立つはずだヨ!〉』
そう言った一条先生の元気な声を聞いて、葵と父は顔を見合わせる。その後にブレスレットに目を向けて、武器の訓練にどう活かせるのかと考えるがそれらしい案も出ないうちに一条先生から声がかかる。
『〈百聞は一見に如かず、ダ。まずはブレスレットに異能力を込めてみてくれるかナ?〉』
一条先生の言葉で、葵と父はブレスレットに異能力を込め始める。葵は物に異能力を込めるのが初めてで恐る恐るブレスレットに異能力を流し込んでいく。
『うわっ!』
すると、ブレスレットとナノマシンが連携したのかブレスレットが淡く発光するのと同時に、視界に半透明のディスプレイが映し出される。父の方も同じらしく、少し驚いた様子を見せながらも表示されたディスプレイの確認を始めている。
表示されたディスプレイには、様々な種類の武器が写っていた。
『これは…?』
『〈フッフッフッ…説明するネ。それは君達の異能力をもとに武器を作ることができる優れものなんだヨ!〉』
一条先生の説明はなんとも言えないウザさがあったけれど、ブレスレットの機能自体はかなり良いものだった。
葵と父が身につけているブレスレットは、つけている本人の異能力をもとにして武器を具現化させる道具だった。
あらかじめ様々な武器のデータをとっておいて、そのデータをもとに異能力で肉付けをして武器を具現化させるので、ブレスレットさえ持っていれば重い武器を持ちあるかなくとも、何千通りという種類の武器を使うことができるらしい。
雛形になるデータさえいじって仕舞えば、大きさや重量も自在に変更可能で、訓練時には刃引きして使うこともできるようだ。
『〈…まぁ、異能力で具現化させる分、性能が使用者の異能力の量と質にかなり依存しちゃうんだけどネ。その辺は二人なら全く問題ないから、訓練ついでにデータを取らせて欲しいんだよネ〉』
『なるほど…そう言うことなら喜んで協力させてもらいます』
父は少し武器の一覧を見て使い慣れた武器があったのか、すぐに武器を選び終えて葵の武器選びを始める。
『なんでもいい、好きな武器を選んでみなさい』
『うん!』
やはり葵も男の子の部分が疼くのか、キラキラとした目で武器を探し出す。一覧には数えきれないほどの武器があり、剣や槍、斧や棒など様々な武器の中で迷いながら見ていく葵。
5分ほど多種多様な武器と睨めっこをしていた葵の視線が、ある一点で止まっていた。…え、それがいいの?
『お父さん!ぼくこれがいい!』
『決まったか。…これがいいのか?』
『うん!』
困惑した父に笑顔の葵が指差していたのは、剣でも槍でも、ましてや斧や棒でも刀でもなかった。それを見て真っ先にイメージされるのは、おそらく死神だろう。
葵が指差していたのは、大鎌だった。
葵君…?それでいいの…?自分で書いといてびっくりしちゃったんだけど…?
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作者プロフィールにあるTwitterから次話投稿したタイミングでツイートしているので気が向いたらどうぞ…




