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熾天使さんは傍観者  作者: 位名月
英雄の誕生
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幼稚園での日常

少しだけ更新しました。

 幼稚園に入園して一月が経ち、葵も段々と幼稚園での生活にも慣れ始めていた。


 『葵くん!鬼ごっこしよ〜!』


 『だめ!葵くんはきょうはおままごとするの!』


 葵はこの一ヶ月ですっかり人気者になっていた。葵は大人しい性格ながら、生まれ持った身体能力が高く運動神経もいいため男の子からの人気も高く、中性的で美しい外見から女の子からの人気も高いため、自由時間では男子と女子で葵の取り合いになっていた。


 『きょうはおにごっこしようかな…』


 『え〜!なんで〜!いっしょにおままごとしようよ〜!』


 鬼ごっこに参加しようとする葵に不満を漏らす女の子達。恥ずかしそうにしながら葵のそばに集まる女の子達の中で、先頭に立って不満を漏らしているのは入園式でも一緒にいたルナちゃんだった。


 『きのうはずっとおままごとしてたからね、あしたはいっしょにおままごとしようね』


 『…うん、やくそくだよ!』


 優しい笑顔で笑いかけてくる葵にノックアウトされた女の子達は、頬を染めながら葵とゆびきりげんまんして嬉しそうに話しながら離れていく。


 女の子達を見送った葵は、葵を待っていた男の子達のところに合流して鬼ごっこを始める。じゃんけんの結果、最初の鬼は葵になった。


 『じゅうびょうかぞえたらはじめるね!いーち、にーい…じゅう!』


 逃げる子達を抜群の身体能力と運動神経で追いかけはじめる葵。思考も身体能力も早熟な葵は、同年代の子達と関わるようになって加減と気配りを覚えるようになっていた。鬼ごっこでも、足の速い子や遅い子が全員遊びに参加できるように上手く鬼を回していた。


 『まて〜!』


 幸いなことに、葵は自分とは違う同年代の子達を見ても優しさを忘れずに、一緒に楽しんで生活できていた。


 そうして昼は友達と楽しく遊んでいる葵も、最近読書という趣味に目覚め出したのか、家に帰ってきてからは暇さえあればナノマシンで両親の買った小説などを読み漁るようになった。


 元紙書籍派の僕からしたら寂しい限りだけど、この世界では紙の本というものがほぼほぼ無くて基本的にデータ化されたものをナノマシンを使って入手するのが基本だった。ただ…


 『おかあさん、このご本おこづかいでかっていい?』


 『あら、紙のご本がいいの?データみたいに持ち歩けないわよ?』


 『うん、これがいいの』


 僕が胎児の頃に紙の本をひたすら読み聞かせて見せていたせいか、葵は電子書籍よりも紙の本を好むようになっていた。頑張ってお手伝いで貯めたお金を、流通量が少なくなったせいで高価になった本に注ぎ込むようになっていた。


 三ヶ月に一冊ぐらいのペースで本を買っては、内容を暗記できるほど読んでは新しい本を買えるまで両親の電子書籍で暇を潰すような日々を送るようになっていた。


 そんなインドアまっしぐらな生活をしていると、晩御飯の時に無表情ながら心配そうな雰囲気の父から話しかけられる。


 『葵、体を動かすのは好きか?』


 『…?うん、すきだよ?』


 『…そうか、なら今度一緒に運動しないか?』


 その父の言葉に、葵は嬉しそうな表情で頷く。父は最近仕事に集中していて、なかなか葵との時間を作れていなかったので、久々に父と一緒にいられるのが嬉しいんだろう。


 『なら、週末にお父さんのお仕事先にいっしょに行こうか』


 『うん!』


 …仕事先?親子の運動って言ったらキャッチボールとかじゃあないのか?まさか行き先が対仮想だとは思わなかった。


 『それなら、一条先生にも連絡しておきましょうか?』


 『そうだな、そろそろもう一度検査しておくのもいいだろう。連絡しておいてくれるか?』


 『それじゃあご飯の後にでも連絡しておきますね』


 夕飯後に母が一条先生に連絡して五分も経たずに返信があったようだ。


 『一条先生、週末は午後から空いているみたいですよ』


 『そうか、なら昼食後に向かって検査をしてから運動するか』


 トントン拍子に予定が決まっていく。嫌な予感がしている僕とは裏腹に、葵は父との週末の予定に喜んでいる。


 うわぁ絶対僕に連絡来るじゃんか…。そういえばこの前幼稚園の入園祝いを用意しとくとか言ってたな?ちょうどいいから貰いに行くかぁ。


 浮き足立っている葵は、ベッドに入ってからもしばらく寝付けずにいた。そんな葵を微笑ましく見守っていたその時、葵の視界にナノマシンでメッセージが表示される。


 『…?なんだろうこれ?』


 葵の視線が表示された、一条:セラ…まで認識した瞬間に精神交換をして葵を眠らせる。


 「…ハァ」


 危なかった…!もう少し遅れてたら読まれてたぞ…!


 空気の読めない一条先生を恨みながらもメッセージを確認すると、文面で見ても

テンションが上がっているのだろうとわかるようなウザさが溢れ出る文章が表示される。


 「(セラスクン!ようやくお姉さんに会いに来てくれるんだネ!?一年半前の検査から全然空いに来てくれないから寂しかったヨ!メッセージも送っているのに全然まともに返してくれないし、セラスクンが冷たくて私泣いちゃいそうだヨ…。会ったら色々と聞きたいこともあるから楽しみにしてるネ〜!)」


 ……。


 「…こんなに頭に入ってこない文章久々に読んだな」


 え〜っと、(葵の検査、よろしくお願いします。僕と話す時間があるかは知らないですが)…っと。とりあえずこれだけ送っておけばいいだろう。


 メッセージを送信してまた一分も経たないうちに返信が来る。嫌々メッセージを開けば、先程とさほど変わらないウザさのメッセージが表示される。


 「(また冷たいネ〜?前に言った入園祝いもあるから楽しみにしていてくれていいんだヨ?話す時間は私の方でなんとかするから安心してネ!それじゃあ週末待ってるネ〜!)」


 …文章でこのウザさってどうやってるんだ?音声入力か?


 そんなことを思いながらも適当に返信して、メッセージが葵にバレないようにだけ細工をしてベッドに横になり、精神空間に帰る。


 無駄に濃い夜になってしまった…。


 そうして一条先生のウザメッセージに耐えながらあっという間に数日が経ち、対仮想に向かう予定の週末がやってきた。


時間の進め方をどれぐらいにすればいいのか迷い続けてる僕です。


前回に引き続き閲覧、ブックマークして頂けた方、誠にありがとうございます。

また、評価やいいねをつけて頂いた方も本当にありがとうございます。


作者プロフィールにあるTwitterから次話投稿したタイミングでツイートしているので気が向いたらどうぞ…。

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― 新着の感想 ―
[一言] 普通に細工してたわ。 対策済みとは恐れ入った。まぁそらそっか
[良い点] いいねいいね〜!葵くんの中に主人公との記憶の面影が残ってるのめちゃくちゃ好みです!! 生まれる前の記憶をぼんやりと持ってるのは幼い頃だけなのか、それとも成長しても夢とかでたまに出てくるのか…
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