はじめての検査結果…の前に
シゴトオワッタ
『それじゃあ、検査結果を伝えるネ』
そう言った一条先生に、両親は緊張と不安が入り混じったような表情で黙り込み、一条先生の次の言葉を待つ。…が、一条先生は急に手を打ち鳴らす。
『おっト、その前に!』
出鼻をくじかれた両親は困惑しながら『なんでしょうか?』と聞く。
『葵クンはまだナノマシンを入れていないみたいだネ、何か理由でもあるのかイ?』
一条先生のその言葉を聞いて、両親は何か納得のいった様子だった。父は一条先生に向けて、葵がナノマシンとやらを入れていない理由を話し始める。
『ご存知かもしれないですが、葵が生まれて少し経った頃に葵の異能の暴発があったんです。いつ異能の暴発が起こるかわからない以上、安易に外に連れ出すわけには行かなかったんです』
『そうだネ、その原因究明も今回の検査に来た理由みたいだからネ』
どうやら今回の検査は、僕が葵の力を使った時に起こった爆発が原因だったらしい。蒼のことも理由にあっただろうけど、両親からしたらいつ爆発するかわからない息子が自分よりも強いかもしれない仮想体に懐かれてしまったからどうしようと言う感じだったんだろうなぁ。
『しばらく暴発が起きなくなって、ようやく外出したところで仮想体に襲われ、葵が異能を使ってその仮想体を鎮めてみせたものですからどうしたものかと思い、また外出は控えるようにしていたんです』
『ウンウン』
『本来であれば暴れていた蒼に襲われた日にナノマシンを入れる予定だったのですが、諸々の騒動で有耶無耶になっていたんです』
父の話を『なるほどネ〜』と頷きながら聞いた一条先生は、虚空で何かを操作する動作をして両親に向き直る。
『この資料にもあるように、ナノマシンを入れるならなるべく早いほうがいいヨ』
一条先生の話を聴きながら、両親が虚空を見つめているのを不思議そうな表情で見ている葵。一条先生は、真面目な表情で虚空を見つめる両親に、さらに何かを送るような動作をする。
『今ならちょうどこの最新型のストックがあるんだけど、入れていくかナ?』
『そうですね、よろしくお願いします』
一条先生は両親のその言葉を聞いてにっこりと笑い、立ち上がる。
『じゃあ早速入れに行こうカ!』
そうして、また一条先生が先導して部屋から出て同じ階のナノテク研究室と書かれたプレートのついた扉の前についた。一条先生は、扉の前で立ち止まって両親に向き直る。
『そうダ、申し訳ないんだけどこの研究室は情報漏洩の防止のために研究者以外は立ち入り禁止なんだよネ』
その言葉を聞いて、一条先生だけが入ってナノマシンを取ってくるものだと思った両親が『ではここで待っています』と言いかけたところで、
『だからちょっとだけ葵クンを預かってもいいかナ?』
という一条先生の言葉が入る。普通子供を他人に預けて目の届かない場所まで連れて行かれるのは嫌だろうに、一条先生に『子供だから入ってもダイジョーブ!』とか『注入機が中にしかないんだよネ』といった風に捲し立てられて、母が『…じゃあ』といった時には葵は一条先生の腕の中に収まっていた。
『じゃあ、少しの間だけど葵クンは私が責任を持って預かるからネ〜!』
そう言いながら一条先生は、さっさと研究室の中に入っていってしまう。
一条先生に半ば拉致されて入った研究室は、中に誰もいない状態で静まり返っていた。一条先生は、検査の時と同じように移動をしながら説明をしてくれる。
『今から入れるナノマシンっていうのはネ、ものすごく小さい情報媒体なんだヨ』
一条先生の説明では、ナノマシンが入っていれば、入っている人同士で通話ができたり、感覚に直接作用してナノマシンに記録されている情報を映し出したり記録したり、自分のバイタルチェックなどもできるらしい。
なるほど、ほぼ実体がないスーパーコンピューターを持ち歩けるような感じか。僕には別にいらないものだけど葵からしたら便利だろうな。
しかも運よく最新型をもらえるらしいし、ラッキーだなぁ。
『いつもだったら、子供への説明は正直形だけだと思ってしているけど…』
急に真剣な表情と話し方になった一条先生は、しっかりと葵と目を合わせる。葵は先程の説明の時から不思議そうな表情で一条先生を見つめていた。
『君は、私の言っていることを理解できているんじゃないか?』
Tips:セラスちゃんは信頼できる人になら別に自分の存在がバレてもいいと思ってる。
仕事が片付いたので普通に更新して行きます。今寝不足で頭痛いのでどこかおかしい箇所があたらそっと指摘して頂けると助かります。
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作者プロフィールにあるTwitterから次話投稿したタイミングでツイートしているので気が向いたらどうぞ…。




