お仕事見学-1
日付は変わってるけど寝てないから今日の投稿。
何話かは決めてないですけど分けます。
あれから半年ほど経ち、特に問題なく蒼を加えた家族での生活を過ごしていった。蒼の食事は、異能の元となる力、『気力』や『異能力』と呼ばれているものを食べるらしく、両親や葵が交代であげていた。…なんなら僕もたまにあげていた。
初めのうちは祖父母が様子を見にきて、看破で異常がないかなどチェックしていたけど、だんだんと落ち着いてきて最近では様子を見にくる頻度も落ちてきていた。
「そう〜ごはんだよ〜」
「キューン」
蒼と過ごすうちに気づいたのだけど、蒼は僕が出ているときはどうも腰が低くなるんだよな。仮想体とはいえ神に近い逸話のある獣だから、僕が天界でそこそこ立場のある天使だったことをなんとなく感じ取っているのかもしれない。
「そうはいいこだね〜?」
「クゥーン」
葵を前にしている時は、子供を見守るような威厳すら感じる態度なのに、僕が出ている時には情けない声を出して真っ先に腹を見せてくる。
最近では、あまりにも態度が変わるので両親の目がある時には蒼をもふらないようにしている。
「そうはもふもふでかわいいね〜?」
「ヘッヘッヘッ」
蒼と触れ合うために表層意識に出ることが増えて気づいたのだけど、表層意識が葵か僕かで変わるのは性別だけで、体の成長度合いは変わらないと思っていたのだけど、最近僕が出ている時だけ髪が伸びていることに気づいた。
葵に戻ると髪の長さも戻るから両親に気づかれる心配はないのだけど、これから大きくなっていけばいくほど髪が伸びて行くのかと思うと少し面倒だった。
…多分どんどん性差もついてくるんだろうなぁ。性能で言えば圧倒的に僕の方が高いけど。
「えいっ」
「キュッ?!」
脳内に浮かんだ考えに嫌気がさして蒼のお腹に顔を埋めて深呼吸する。
おあ〜、あったかいしもふもふ〜。
そんなことをしていると、母の足音が近づいてくる。バレないようにさっさと僕の精神世界に帰って葵と交代すると、蒼も仰向けの体制をすぐにやめて丸まる。
『んぅ?そう!もふもふ〜!』
『……グゥ』
最近、葵もだんだん自意識が成長してきたのか精神交換した時に一瞬戸惑いを見せるようになってきた。これから気軽に精神交換できなくなってくるだろうなぁ。
葵と蒼が戯れ始めると、母がドアを開けて部屋に入ってくる。
『葵、今日はこれからママと一緒にパパのところにお出かけしようね〜』
『おでかけ〜?』
母はそう言って葵を抱き上げる。
『そうよ、パパのお仕事を一緒に見にいこうね〜』
『うん!』
どうやら今日は父の職場見学ができるらしい。父は少し前から育児休暇が終わったらしく、母に育児を任せて仕事に戻っている。
父も仕事終わりや休日に家事や育児をしているのだけど、それでも母の負担が大きいみたいで、たまに疲れた様子の時がある。
そんなときはこっそり僕が精神体として外に出てあやしたり、絵本の読み聞かせやおむつの汚れを分解したりして、蒼と協力しながらセルフ育児をしていたりもした。
『じゃあ、一緒にお出かけの準備しよっか?』
『うん!』
それから着替えや荷物の用意を済ませて蒼も一緒になって家を出る。母はいつもよりも少しきっかりとした服装でいる。父と母の職場が同じだったということは知っているから、元職場に行くと言うことであまりラフな格好はできないのかもしれない。
家から歩いて5分ぐらいのところにある広場のようなスペースにつくと、母は時計を確認して話しかけてくる。
『これからパパとママのお仕事先の人がお迎えに来てくれるからね。ちゃんとこんにちはするのよ?』
『ん!』
しかし、僕の適当に広げてる感知範囲にそれっぽい人がいないんだけど、もしかして遅れて…
『優華先輩!お久しぶりです!』
来るのかと思ったら、唐突に僕たちの目の前に以前の仮想体騒動で見た制服を着た女性が現れた。
『綾香ちゃん、久しぶりね。今日はよろしくね』
『はい!私の転移では送り迎えぐらいしかできないですが、今日は一日よろしくお願いします!』
母に綾香ちゃんと呼ばれた女性は、元気で明るそうな雰囲気の『転移』使いの方だった。
蒼 「グルゥ?!(なんだこの人!?現世にいていい存在じゃない!!)」
熾天使 「ごはんだよ〜僕の気をお食べ〜」
蒼 「キューン…(とりあえずくれるごはん美味しいし従っとこ…)」
前回に引き続き閲覧、ブックマークして頂けた方、誠にありがとうございます。
また、評価やいいねをつけて頂いた方も本当にありがとうございます。
作者プロフィールにあるTwitterから次話投稿したタイミングでツイートしているので気が向いたらどうぞ…。




