死後の世界
……うわぁ絶対やばい人だ。
思わず口から出そうになったその言葉を、死してなお残っていた社会で学んだ最低限の対人スキルでなんとか押し留めた。
死後の世界にいる狂信者オーラ溢れ出る超絶美人とか役満モノじゃん…。
そんなことを考えていると、役満美人は美しい笑みはそのままに少し困ったように眉を寄せる。
まずい、状況が意味不明すぎて思考が迷走してしまっていた…。
「えっと…こんにちは…?九識湊と申します」
混乱する頭からなんとかそう言葉を捻り出すと、役満美人は再び表情を初めに見たような笑みにして、
「はい、こんにちは。私は九識さんへの伝達役を主より仰せつかっています、ラムエルと申します」
役満美人さんは、どうやらラムエルさんというらしい。…某使徒みたいな名前だなぁ。まぁおそらく死後の世界と使徒のような名前で安直に繋げて、本物の使徒みたいな物なのだろう。
しかし、ラムエルさんは僕への伝達役と言っていたけれど、わざわざこんな広大な空間まで用意して使徒(仮)さんまで出向いて何を伝えると言うのだろうか。
「僕に伝達…ですか?」
地獄の審判のようなものであれば、煮えた銅を飲んでいる閻魔様にライン作業で事務的に仕分けられてパパッと地獄行きになるものだと思っていたのだけど。
「はい、私の主より伝令を賜っていますので伝えさせていただきますね。」
ラムエルさんはそう言うと、どこからか羊皮紙のようなものを取り出し、広げて読み始める。
「九識湊、君の生前に行った善行と、犯した罪について閻魔も含めて協議した結果を伝える」
「君は、本来であれば地獄の苦役によって罪の精算を行うところだが、善行についても無視できないところがあるので、魂の穢れが落ちるまでの期間は天界での労役を行わせることとする」
「また、天界での労役のために私の用意した体を使ってもらうことになった。…以上です」
……うん???
「それでは体を交換させていただきますね」
「………うん????」
混乱しすぎて押し殺していた心の声が漏れ出てしまっている僕を気にもかけずに、そう言ったラムエルさんが手を一つ叩くと、その音に合わせて自分の視界の高さが低くなり、ラムエルさんを少し見上げる形になる。
「…まさか」
そう言いながら僕は自分の足元に目を向ける。先程までは生前と変わらない病人のような貫頭衣を着ただけの体と、冴えない自分の顔が水面に反射して映っていたはずが…。
「嘘でしょ…」
水面には、白いヴェールを身に纏い、黒のロングヘアーの、可愛さと美しさを両立させた女の子が写っていた。
やっとTSです(性癖)
前話を閲覧していただいた方、ブックマーク登録して頂いた方。誠にありがとうございます。
筆が遅いものでゆっくりの更新になりますが、お付き合いいただけると幸いです。