名付け
今日は夜に予定があるので早めの投稿ですが、時間があれば夜にも更新するかもしれないです。
「…ぅん?」
目が覚めると、視界一面に本棚と水面と星空が広がる僕の精神空間に帰ってきていた。
どうやら狼の仮想体のもふもふに夢中になっていたら寝てしまっていたらしい。葵が目覚めた時に、勝手に精神交換して葵が活動を始めたみたいだ。
…久しぶりにちゃんと寝落ちしたなぁ。葵が寝てると無性に眠くなって来るんだよなぁ。
『う〜?わんわん!』
葵は目が覚めたら狼のもふもふが目の前にあって、まだ眠たそうな顔をしながらも大喜びしている。…かわ。
『…(ぺろぺろ)』
狼も葵を起こそうとしてなのか、ベタベタ体に触ってくる葵の手や顔を舐め回している。
周りを確認してみれば、そこまでの時間はたっていないのか、まだ母も近くで本を読んでいた。母は葵が目を覚ましたことに気がつくと、近寄ってきて葵を抱き上げる。
『葵〜?わんわんのことでお父さんたちとお話しがあるから、一緒にいきましょうね?』
『あう〜!』
はしゃぐ葵を連れて母が葵を連れて行くと、自然と狼も並んで着いてくる。少し感知範囲を広げて確認すると、祖父母がいなくなっている。父が一人で何枚か書類を広げて真剣な表情をしているところに葵と狼を連れた母がやってくる。
『あなた、お義父さんとお義母さんはもう帰られたんですか?』
『ああ、面倒ごとの処理などを先に片付けてくると言っていた』
『じ〜じ?ば〜ば?』
葵の声で真剣な顔をしていた父の表情が崩れる。
『ああ、おじいちゃんとおばあちゃんは葵のためにお仕事をしに行ってくれたからね』
『う〜?』
父は微笑みを浮かべて葵の頭を撫でると、何枚かの小さな紙を取り出して見せてくる。見ると、漢字やカタカナで名前のようなものが書かれていた。
『葵、今日から家族になるわんわんに名前をつけてあげよう』
『わんわん!』『……』
理解しているのかはわからないが嬉しそうにしている葵と、黙っている狼の仮想体。名前をつける、というのを聞いて視線だけ父の方に向けたがすぐに葵をじっと見つめ始める。
『…うん、わんわんも葵に選んで欲しいみたいだ、この中ならどれが良い?』
『う〜…』
父は机に五枚ほど紙を並べて葵に見せる。葵は何を思っているのかわからない表情で紙と両親と狼に視線を行ったり来たりさせているが、やがて一枚の紙を見つめて手を伸ばす。
『う!』
『……蒼、か。葵とお揃いでいいんじゃないか?』
葵は読めてもいないだろう漢字で書かれた紙を手に取ってみせた。父は葵から紙を受け取ると、狼の仮想体に蒼と書かれた紙を見せる。
『君の名前なのだけど、今日から蒼と呼んでもいいか?』
『……グゥ』
狼は少し考えるように紙をじっと見つめた後、受け入れるように小さく鳴いて葵に頭を擦り付ける。
『よし、では蒼。君も今日から私たちの家族だ。よろしく頼む』
『葵を守ってあげてね、蒼』
『ちょう〜?』
…蒼か、良い名前なんじゃないかな?蒼自身も心なしか満足そうだし。
そんなこんなで、僕らの生活に訳あり仮想体狼の蒼が加わったのだった。
Tips:蒼は浄化後の方が強い
前回に引き続き閲覧、ブックマークして頂けた方、誠にありがとうございます。
また、評価やいいねをつけて頂いた方も本当にありがとうございます。
作者プロフィールにあるTwitterから次話投稿したタイミングでツイートしているので気が向いたらどうぞ…。




