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熾天使さんは傍観者  作者: 位名月
英雄の誕生
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新たな家族

 『わんわん!きゃっきゃっ!』


 『…グゥ』


 …どういうことだ?葵が自分で浄化を発動したのか?


 母親の腕に抱かれながら、仮想体に手を伸ばして触れようとする葵に従うように頭を下げる仮想体。


 『…これは、どういうことだ』


 『葵…?』


 困惑する周囲の様子など気にも留めずに、葵は仮想体と触れ合っている。自分の浄化で、憑いていた悪いものがいなくなったと本能的に理解しているのだろう。


 しかし、まさか葵が勝手に回路を開いて僕の力を引っこ抜いてくるとは。普通じゃ考えられないけれど、今まで浄化の時に僕がどう力を使っていたか感覚で覚えたんだろう。


 葵が自分で力を使った証拠に、浄化の際にはしっかりと炎が出ていた。


 自分で力を循環させていた時点で天才だとは思っていたけど、流石は英雄の種子。まさか僕の力を勝手に使えるほどとは思わなかった。


 『美香』


 『…どうやら、何かに取り憑かれていたようですね。もう消えていますが』


 祖父母が阿吽(あうん)の呼吸でやり取りをしている。祖母の看破はかなり万能らしく、仮想体が取り憑かれた影響で理性を失っていたこと。そして現在は理性を取り戻して、刺激しなければ襲いかかってこないだろうということまで読み取れたようだ。


 『…葵が、やったのか?』


 『…みたいですね』


 祖父母がそんなやり取りをしていると、何人かがこちらに近づいてくる。全員が同じ制服を身につけて武器を携帯していることから、おそらく父が呼んだ人たちなんだろう。


 『康太さん、報告にあった仮想体は…』


 『あぁ…どうやら、息子が無力化したようだ』


 『息子さんが…?』


 駆けつけてきた人たちの視線が葵に集まるが、葵は気にせず仮想体を撫で回して喜んでいる。あっけに取られている人たちをよそに、父は経緯を説明していった。


 『…なるほど、確認したところ幸い民間人に被害はなかったようですし、害のない仮想体には手は出さない規則です。我々の方で町外れまで護送を…』


 『グルゥ!』


 話を理解していたのか、遮るように仮想体が鳴き声をあげて葵にピッタリと寄り添う。仮想体の体からは時々青い炎が立ち上っているのに、不思議と優しい温かさしか感じない。


 『わんわん!』


 『むぅ…どうやら葵に従っているようだな』


 近くに来た仮想体に嬉しそうに抱きつく葵。それからしばらく大人たちが面倒そうな話をしていたようだけど、僕は純白の狼と戯れる葵に気を取られてあまり聞いていなかった。…かわいい。


 『では、届出などは後ほどご自宅にお送りしますので』


 『ああ、面倒をかけてすまないね』


 10分程度で話はまとまったようだ。武装した人たちは帰って行き、父親が近づいてくる。父はかがんで仮想体に向き合うと、


 『…葵と一緒に居たいか?』


 『グゥ』


 仮想体は小さく鳴くと、葵にピッタリと寄り添う。それを見た父は、葵に微笑みながら語りかける。


 『葵、今日から家族が増えるぞ。』


 『きゃっきゃっ!』


 理解できているのかはわからないけれど、それでも葵は嬉しそうに笑っていた。


Tips:セラス君ちゃんも動物好き


前回に引き続き閲覧、ブックマークして頂けた方、誠にありがとうございます。

また、評価やいいねをつけて頂いた方も本当にありがとうございます。


作者プロフィールにあるTwitterから次話投稿したタイミングでツイートしているので気が向いたらどうぞ…。

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