経験値稼ぎと葵の異能
色々落ち着いたので今日からまた普通に投稿していきます。
それからしばらく、葵と体を交換してなり損ないを浄化する日々が続いた。
念の為確認しておいたが、僕と入れ替わっていることで葵の成長を阻害することはないようだ。成長するために体の成長を遅らせていたんじゃあ元も子もないからね。
なり損ないの浄化は、そこそこ葵の成長につながっているみたいだ。僕からしたら流れ込んでくるエネルギーは微々たるものだけど、英雄の種子とはいえまだ赤子の葵からしたらそこそこの経験値稼ぎになっているようだ。
生まれたばかりの頃と比べると倍以上の力を使えるようになっている。
『あう〜』
そうこうしている間にも、葵から不安感が流れ込んでくる。やはり、なり損ないに対する反応は葵の方が敏感らしい。生まれつき第六感でも持っているんだろうか。
「ど〜だ〜(浄化)」
そんなことを思いながら一瞬だけ入れ替わり、浄化でなり損ないを消滅させる。
しっかし入れ替わるたびに女の体に入れ替わるのはどうにかならないものだろうか…。生身の体で女性になると、天使の時とは違う感覚で精神衛生上よろしくないんだけど…。
あ、そうだ。葵に倒させればいいんじゃないか?
今までは僕の力を使うために入れ替わっていたけど、力もついてきた今の葵なら、僕が手助けしてあげればなり損ないぐらいなら倒せるんじゃないか?
ものは試しだ、ちょっと葵の力を動かせないか試してみよう。え〜と、入れ替わる時の道を少し広げて…こうか?えいっ!
すると、葵の抱えているエネルギーと感覚がつながる。どうやら僕の力と葵の力では、質と言うか色というか、種類が違うらしい。僕がいつも力を使う時とは少し違うけど、エネルギーを動かせそうな感覚がある。力の種類が違うのは二重人格の特徴なのかな?
『う〜?』
葵も葵なりに自分の中で何かが流動する感覚がわかるらしい。やっぱり五感以外の何かが鋭いみたいだ。
少し葵のエネルギーを動かしてみると、僕が力を使う時よりも流れが悪い感覚がある。どうやら、力が流れる回路を動かすことに慣れていないようだ。
う〜ん、これだと一回で使える力の量に限界があるな。まぁでも、なり損ないを浄化するぐらいなら問題ないし、僕が動かしていけばいずれ流れが良くなるだろう。
回路のストレッチをしていると、ちょうどよくなり損ないが近づいてきて葵がソワソワし出す。
よし、物は試しだ!いけっ葵!浄化だ!
『あう!』ぼんっ!
『きゃあっ!』
葵を通じて近くでなり損ないが小規模の爆発を起こして燃え尽き、熱風を感じる。母親も唐突に近くで小爆発が起こって悲鳴を上げている。
……なんでだ??なんでこうなった??
『まさか仮想体!?〈特異結界〉!!』
母親が慌てて周囲を警戒しながら異能を発動する。少し詳しく見てみれば、母親は『結界師』の異能で、さまざまな種類の結界を展開できるらしい。
『きゃっきゃっ!』
慎重に周囲を警戒する母親に対して、葵は自分の力で起こった小爆発と母親の展開した薄緑に淡く発光している結界を見て無邪気に笑っている。…かわいい。
『〈探知結界〉…いない。一体なんだったの?』
『きゃっきゃっ!』
困惑する母親だが、笑う葵を見て気が抜けたらしい。最後に敵対する存在を探知する結界を張って、安全を確認すると葵を抱っこして揺らし始める。
…う〜ん、なんでこうなったんだ?とりあえず、葵の力についてもう少し詳しく調べてみるか。
葵を持つ器や、異能とその力が流れる回路について調べると、いろいろなことがわかった。
まず葵の異能は、どうやら『過剰出力』というらしい。使用したエネルギー量に対して数倍の威力を発揮できると言う、中々にぶっ壊れた異能だった。先程の爆発も、使ったエネルギー量からしたらそこそこ派手に爆発したと思ったのだけど、葵の異能が作用したらしい。
そして、なぜ浄化で爆発が起こったのか。これは葵の力が流れる回路が原因だった。
僕が力を使う際は、僕自身や世界に漂うエネルギーに指向性を与えて使っているのだけど、この世界の人間はエネルギーをなんらかの形で変換して出力されるようになっているみたいだ。
葵は、その変換フィルターでエネルギーを炎にするらしい。
結果として、炎に変換されたエネルギーはなり損ないを燃やすだけだったはずが、葵の『過剰出力』が影響して小爆発を起こした。…そう言うことらしい。
う〜ん…このフィルター、変換効率悪いなぁ…。
よし!ちょっと回路いじっちゃお!え〜と、ここをこうして…これを足して…。
そんなこんなで魔改造した結果、一応元の回路は残しつつ、新しく僕が力を使うようにエネルギーをそのまま出力できる出口を増設しておいた。
将来常識はずれなことをして葵が困らないように、普段はこの回路は閉じておいて、僕が葵のエネルギーを使う時にだけ開くように鍵をかける。
よし、これで悪霊退治も快適だ!
Tips:セラス君ちゃんは割りとテンパるタイプ
前回に引き続き閲覧、ブックマークして頂けた方、誠にありがとうございます。
また、評価やいいねをつけて頂いた方も本当にありがとうございます。
作者プロフィールにあるTwitterで次話投稿したタイミングでツイートしているので気が向いたらどうぞ…。




