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熾天使さんは傍観者  作者: 位名月
ふたりの異能
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一緒に訓練-1

 「葵さんっ!すいませんこんな格好で…」


 「大丈夫ですよ。お嬢様の努力の証拠ですから」


 慌てた様子で身だしなみを整えようとするお嬢様を落ち着かせてから立ち上がって師匠に向き直る。師匠はニヤニヤと意地の悪い表情で僕に向かって口を開く。


 「おうおう、貴人に危害を加えようとした人間からそんなに目を離すなんて…怠けちまったのかぁ?オレの弟子はよぉ?」


 「はぁ…だって師匠、振り下ろすときに口元がニヤついてましたよ。訓練中にそんな表情絶対しないでしょう?」


 「ハッ!揶揄い甲斐のねぇ弟子になっちまって」


 「はぁ…」


 仮にも一条家の依頼主の前でずいぶん崩れた対応をするんだなとため息をつく僕を師匠はケラケラと笑って流してくる。しかし僕と違ってお嬢様は戦闘を本気で極めたいと思っている印象が無かったけど、師匠にかなり厳しく教えられてるんだな。


 「僕への試しは良いとして…お嬢様への指導、ずいぶん厳しくやってるんですね?」


 「あん?そりゃ暁一の名家の跡継ぎなんだから自衛の手段なんていくらあっても良いだろうが」


 「まぁ…それはわかりますが」


 師匠の言葉にうなずきながらも僕の後ろで未だ乱れた息を整えているお嬢様にちらりと視線を向ける。するとお嬢様は取り落としていた薙刀を拾ってなんとか自分の体を支えて立ち上がろうとしていた。


 「お嬢様?!もう少し休まれていた方が良いのではないですか?」


 「いえ…葵さん、お気持ちは嬉しいですがこれは私から守宮様にお願いしたことですから…!」


 「おう葵、そういうこった。頑張ろうとしてるやつにあんま水差すんじゃねぇよ」


 「……」


 二人の言葉に驚きながらお嬢様を改めて見ると、体は疲労で悲鳴をあげているはずなのに師匠のほうを見据える目には確かな闘志が宿っていた。…少し前まで戦うことが怖いと言っていた少女の変化に驚いてしまうけど、きっとお嬢様の中で何か変化があったんだろう。昔の僕が家族や身近な人を守れるように、お父さんみたいに強くなりたいと願った時のような変化が。


 「…そうですか。ならこれ以上水を差すような真似はしないですが、流石に傷が残ったり疲労で動けなくなったりするまで追い込むのは気を付けてくださいね?」


 「おう任せろ。オレを誰だと思ってやがる」


 いや、師匠の厳しさを一番知ってる僕だから言ってるんだけど?僕が何回筋肉痛で動けなくなったことか。


 「ま、とは言え流石に一度休憩すっか。休憩終わったら葵もまとめて相手してやっからな?」


 「え、相手をしてくれるのは嬉しいですけど…大丈夫ですか?」


 師匠は何の気なしに言っているけど、流石に僕と師匠の訓練とお嬢様と師匠の訓練じゃ違いが多すぎる。僕と師匠じゃずいぶん前に訓練用の道具じゃ強度不足で実践の武器で訓練するようになったけど、お嬢様はまだ木製の道具で訓練してるみたいだったし…。


 「なんだ?二人がかりなら勝てるとでも言いてぇのか?」


 「いやそういう話じゃなくて…」


 「大丈夫です葵さん!私、足を引っ張らないように頑張りますから!」


 「いやそういう話でもなくて…あぁもうわかりましたよ!やりますよ!お嬢様はとにかく休んでくださいね?!」


 「はいっ!あ、それと今はお嬢様と呼ぶ必要はないんですよ?」


 「わかりましたから…由奈さんは今は休んでください」


 一条家なんだから一応お嬢様呼びのほうが良いと思ったけど…まぁ師匠もかなり態度を崩してるし良いのかなぁ?色々と混乱している僕を置いて師匠と由奈さんは満足げな様子で水分を取りに行ってしまった。まぁ…二人とも楽しそうだから良いか。


 「さて、片桐さん。僕の運動用の服って車にあったりしますか?」


 「既にご用意してあります。更衣室はこちらです」


 「流石ですね。いつもありがとうございます」


 今日は急な連絡になっちゃったから最悪服はこのままでも良いかと思っていたけれど、流石の片桐さんは運動用の服まで用意していてくれたみたいだ。


 片桐さんに案内された道場脇の更衣室で着替えながらどんな訓練になるのか想像しているときに、ふと今日の本来の目的を思い出す。師匠にも由奈さんにもまだお土産を渡せてないし、セラスさんの紹介も出来てないや。


 『…!?ちょっと、あの二人にまで紹介するつもりなの!?』


 「え?それはそうですよ。二人ともお世話になってるし、それと道也様と真由子様にも後で紹介しますからね?」


 『…もう、葵が詳しく説明してから呼んでね?僕から説明するのいい加減面倒なんだけど』


 「わかりました!」


 『…はぁ』


 う~ん…前々から思ってたけど、やっぱりセラスさんって人とかかわるのあんまり好きじゃないのかなぁ?まぁでもみんな良い人たちだし大丈夫でしょ!


 「ふぅ…よしっ、着替え終わり!」


 師匠との立ち合いも久々だし、ちょっとは成長したってところを見せないとな!お嬢様も一緒にだけど、どうせ始まったらそんなことを考えてる余裕はないだろうし。未だに師匠の限界がどこなのかが僕には見えないし。


 ……そういえば


 「セラスさんと師匠ってどっちが強いんだろう?」


 もしかしたら、セラスさんを紹介したときに二人の立ち合いも見れたりするのかもしれない。


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― 新着の感想 ―
[一言] 次の投稿はいつになるのだろうか,,,
[一言] セラスのこと知る人がどんどん増えますね。セラスもあんま抵抗が弱いし、親しい人みんなに暴露するのかな?更新楽しみです
感想一覧
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