お土産を渡そう-3
やっぱり更新
久しぶり…と言っても前に来た時からそれほど時間も経っていないけど、片桐さんの車に連れられておじいちゃんの家に来ていた。おじいちゃんと言ってもお父さんの方のおじいちゃんで、また後でお母さんの方の実家にも行く予定だけど。
馴染みの護衛さん達に頭を下げて門をくぐり、以前も対応してくれた使用人の木村さんに案内されて2人の元に向かう。よく手入れされた庭の近くの縁側で、おじいちゃんとおばあちゃんが並んで座っていた。
「おじいちゃん、おばあちゃん、お久しぶりです」
「ん、よく来たな」
「いらっしゃい葵ちゃん、今日はわざわざありがとうねぇ」
いつも通り無表情なおじいちゃんと、にこやかにお茶を出しながら出迎えてくれるおばあちゃん。そんな2人に持ってきた荷物のうちの一袋を取り出して差し出す。
「2人とも、これ修学旅行で行ってきた京都のお土産だよ。よかったら食べてほしいな」
「あら!わざわざありがとうねぇ」
「ふむ…」
おばあちゃんが丁寧に袋を開けて、僕が京都で買ってきた和菓子をお茶請けに加えて僕とおじいちゃんの前に出してくれる。おじいちゃん、あんまり反応よくないけど好みじゃなかったかな?
そんなことを思っていると、おじいちゃんがおもむろにナノマシンを操作するようなそぶりを始めた。何をしているんだろうなんて考えながらおばあちゃんに視線を移すと、何か楽しそうな表情で僕とおじいちゃんに視線を行き来させていた。
「おじいちゃ…ん?!」
僕がおじいちゃんに声をかけようと口を開いた瞬間、僕の視界にそこそこな金額の入金を知らせるポップアップが表示された。振り込んできたのは目の前で素知らぬ顔でお茶と僕が買ってきた和菓子を食べているおじいちゃん。
「ちょ、ちょっとおじいちゃん?!何これ!?」
「ふむ、旅行の前に渡していなかったからな。取っておきなさい」
「ちょっと多すぎない…?」
「あらあなた?いくら渡したんですか?」
「…ちょっとした小遣い程度だ」
おじいちゃんは静かに庭に向き直り、おばあちゃんもおばあちゃんで何か咎めたりするわけではなくにこやかにおじいちゃんの隣で座っている。…えぇ?よし、帰ったらお母さんに預けよう。
「あ、そうだ…これ護衛の皆さんにも買ってきてあるから渡しておいてくれないかな?」
「あら?…そうね、よかったら帰りに直接木村さんにでも渡してあげたらどうかしら?」
「あ、そうだね。そうするよ」
そんな話をしながら少しの間ゆっくりとお茶を飲みながら過ごして、お茶もぬるくなった頃。すっかり忘れていたセラスさんのことを思い出す。
「おじいちゃん、おばあちゃん、今日は紹介したい人がいるんだ」
「「?」」
僕の言葉に誰か連れてきたの?とでも言いたげな表情でこちらを見るおじいちゃんとおばあちゃん。2人には会ってもらったことなかったからなぁ。それじゃあセラスさん、お願いします。
『…流石に驚くだろうから、もうちょっと説明してあげなよ?』
あ、それもそうですね。
「えっとね、実は最近僕の中にもう1人生きてたってわかって…って説明が難しいなぁ。そうだ!僕って二重人格?だったみたいでさ」
「二重人格?解離性同一症か?何かショックを受けるようなことでも…」
僕の説明に何か難しそうな表情でぶつぶつと呟き始めるおじいちゃん。おばあちゃんも心配そうな表情で僕を見てくる。
「えっと、病気とかそういうのじゃなくてね?そのもう1人は僕が生まれてからずっと一緒にいたみたいで、僕も気づいたのは最近なんだけど…出てきてくれるようになったから2人にも紹介しようと思って」
『…やっぱり見せた方が早かったかもね』
やっぱりそうですかね?どうにも僕たちの状況って説明が難しくて…。
「うん、とにかくもう1人に…セラスさんに変わるね?」
「…ふむ」「そ、そう…?」
まだ困惑している様子の2人は一旦置いておき、セラスさんに変わってもらう。流石に見た目が一気に変わったことで2人とも僕が精神的な問題で二重人格と言っていたわけじゃないと理解してくれたみたいだ。それはそれとして2人にしては珍しく口を開けて驚いてるけど。
『『!?』』
『…初めまして、葵から紹介されたセラスです』
まぁ…やっぱり驚くよねぇ。う〜ん、今日はこんなやりとりをあと何回やることになるんだろう?




