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熾天使さんは傍観者  作者: 位名月
ふたりの異能
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ある熾天使の休息

 「じゃあまたよろしくね〜」


 「はぁ、では失礼します」


 少年のような容姿でありながら少年とも青年とも老人にも聞こえるような不思議な声に適当に返しながら宙に浮かぶ城から出る。警備をしている天使達に頭を下げられながら早足で城が建っている浮かぶ大地から身を投げて落下していく。


 自由落下に任せてク創造神の居住空間の端に向かいながら控えている仕事とその期限を脳内でリストアップしていく。536の世界の構成力の総量のリストアップと異常報告、今後500年間で崩壊する世界と統合される世界の担当神への取次と新しく生まれる世界の担当神への任命が合わせて320件。そして80年前にあのファッ◯ン上司から任された後輩天使達から挙げられている報告がいくつかあった。


 残りの仕事を考えている間に536の世界の構成力のリストを作成し、丁度居住空間の端に到達する頃に数字に間違いがないかの確認を終える。リストの紙をひとまとめにしながら居住空間に出口を開き、普段僕と後輩達が仕事をしている空間に出る。


 「あっ!セラスせんぱい!創造神様への謁見は終わったんすか?」


 「えぇ。それとヘルメー、この資料管理はあなたのとこの子だったはずですね?その子に渡しておいて下さい」


 「了解っす!私たちから挙げた報告書は見てもらえました?」


 「目は通しておきました。どれも緊急性はなさそうですし3時間後に対応します。では私は少し籠るので」


 「お待ちしてるっす!」


 僕が渡した資料を抱えて音速で駆け出したヘルメーを見送ってから門を創る。先の見えない門を通って僕に与えられている個人空間に逃げ込み、いつものロッキングチェアに腰掛ける。


 「……あ゛ぁ゛〜」


 本棚からまだ読んでいない本を引き寄せながら思考分割と翼をうまく使って次の仕事の資料を用意しておく。仕事は残っているとはいえ1人の時間を作れたのは43年ぶりか…。この本が本棚に加わったのも確か数億年前の話だし、読んでない本がたまってくなぁ。かといって天使としてのスペックをフル活用して一瞬で本を読むのは嫌だし…全世界の本を読み切るのは一体いつになるのやら。


 翼で作っている資料が出来上がる速度の数百分の一ぐらいの速度でゆっくりと本のページをめくって文字を頭に染み込ませる。それから1時間もしないうちに資料作りは終わり、本も半分ほど読み終えたあたりで一旦本を閉じてロッキングチェアに体を沈み込ませて毛布に体を包む。


 「30分は寝れるかな…」


 後輩達から上がっていた報告や次の仕事が頭の中を巡ろうとするのを無理やり打ち切って起きる時間だけを意識して眠りにつく。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 「…ぱい!……ラスせんぱい!」


 …う〜ん、うるさいなぁ。43年は休みなしで働いたんだからもう少しぐらいほっといてよ…。


 「セラスせんぱい!創造神様がお呼びっすよ!!何寝てるんすか!」


 う〜ん…ヘルメー?あと200年は寝かせて…。


 「何言ってるんですか!創造神様がお呼びだって言ってるじゃないっすか!流石のせんぱいでも不敬で消されるっすよ!!」


 …?あんな◯スほっとけば…ってなんでヘルメーが僕の空間に?


 「ん?ヘルメー…?なんでいるの?」


 目を開けて最初に映ったのは焦ったような怒ったような表情で必死に僕に捲し立ててくるヘルメーの姿だった。おかしいな…僕の空間には僕より権限が上の存在しか入ってこれないようにしてあるのに。


 「なんでじゃないっすよ!せんぱいが呼んでも来ないからってあたしが遣わされたんすよ!」


 あのク創造神か…43年ぶりの休みを邪魔しやがって…!用があるならさっき報告に行った時にまとめて済ませろや!


 「…はぁ」


 「ほらせんぱい!ため息ついてないで早く向かうっすよ!」 


 「…わかりましたよ、わざわざすみませんね」


 結局10分ぐらいしか眠れてないじゃないか…ともかく上司の呼び出しには従わないといけない。隣でワタワタと騒がしく動き回っているヘルメーの首根っこを掴んで僕の空間の中から放り出して続いて僕もいつもの職場に出る。


 外に出た瞬間、後輩達の視線が一身に集まっていた。どうせヘルメーと同じように「創造神様からのお呼び出しなのに!」と勝手に焦っていたんだろう。


 「……各自、自分の仕事に戻りなさい」


 「「「はい!」」」


 書類を抱えて散り散りに去っていく後輩達を見送って僕も翼に力を込めて飛び立つ。門を開いて創造神の居住空間に飛び込み、僕が出せる限界の速度で飛翔する。僕が全力で飛んでもあのク◯神の居城まで30分はかかるんだから本当に面倒くさい。


 「はぁ…これで下らねぇ用事だったらマジであいつ許さねぇ」


 適当に書類の確認をして時間を潰しているうちに休暇前にも見た宮殿が見えてくる。護衛の天使達に頭を下げられながらあいつの存在感が一番強い場所へ向かう。


 「やぁ、急に呼び出してすまないねセラス」


 「…いえ、今日はスケジュールに余裕があったので僕の休息時間以外は問題ありません」


 「そう、ならよかった」


 「……はぁ」


 …マジでこいついつか◯す。


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