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熾天使さんは傍観者  作者: 位名月
ふたりの異能
120/139

かわるがわる

早いですが更新です。夜にもう1話出来たら投稿しますね。

 呆然としたままお母さんにされるがままに着替えさせられ、「迎えは呼んであるから〜」と言われ家を出ると片桐さんが僕を駐車場で待っていた。


 「……葵様、で間違いないのですね?」


 「……ハイ、そうです」


 普段表情を変えない片桐さんにしては珍しく、僕を見た時は両目を見開いてそう聞いてきた。自分で望んでではないものの、男の僕がこうして女性の格好をしているのを知り合いに見られるのは大変気まずいものがある。


 ……このあとクラスのみんなにも見られるのかぁ。まぁ学校を休むよりはいいかもしれないけど…。


 そんなことを考えていると、また無表情に戻った片桐さんが口を開く。


 「優華様からご連絡頂いた時は驚きましたが、確かに葵様のようですね」


 「えっ?こんなに見た目違うのに分かるんですか?」


 「もちろんでございます。これでも葵様のことは昔から見ておりましたから」


 色々と聞かれるだろうと思っていたけど、片桐さんは多くは聞かずにいつもと変わらない態度で僕を学校まで送り届けてくれた。…いつもより視線を感じた気はするけど。


 車で移動している際も、現状が上手く呑み込めずに窓ガラスに映る自分の姿を何度も確認してしまった。


 それでも片桐さんの運転する車は学校に到着する。


 「…それでは葵様、お気をつけて行ってらっしゃいませ」


 「うん、ありがとう片桐さん。いってきます」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 『それじゃあ葵君、入ってきて〜』


 …僕が現実逃避で朝起きてからの事を思い出しているうちに先生の説明は終わったみたいで、教室の中から僕を呼ぶ声が聞こえる。


 男子生徒が女子生徒になりましたなんて意味のわからない説明を任せてしまった先生には申し訳ないなと思いながら扉の取っ手に手をかける。


 「……」


 教室の中が少しザワついているのが聞こえてきて手が重くなったような錯覚を覚えながらも扉を開く。


 「…お、おはようございます」


 「「「……」」」


 教室に入ってとりあえず挨拶をすると、全員が僕の方を見て固まっていた。まぁいきなり僕が葵だと言っても信じられないだろうから、固まっているみんなを置いて先生の隣まで行く。


 「えっと…こんな見た目だけど一応双葉葵です。こうなった理由は僕にもよく分からないんだけど、多分僕の異能のせいだと思います」


 僕が話し始めると、固まっていたみんながようやく動き出す。隣の人と目を合わせて何かをささやきあったり、僕と仲がいい人達は色々と聞きたそうに僕の方を見てくる。


「はーいみんな落ち着いて〜。葵くんも今朝気づいたらこんなことになってて驚いてるから、あんまり色々聞いて困らせないようにね〜」


 先生の言葉でみんなが静かになって、また自然と僕の方に視線が集まる。


 僕自身まだ受け入れられてないんだから、みんながこうなるのも自然なことなんだろう。…セラスさんが戻るまでの我慢だ。


「…多分近いうちに体は戻ると思うんだ。それに、見た目は変わったけど僕は僕のままだから変わらず接してくれると嬉しいな」


 「はい!そういう事だから、みんなよろしくね〜。葵くんも席に着いて?それじゃあホームルームを…」


 そうして教室が明らかに落ち着かない雰囲気のままホームルームは進んでいき、先生が教室を出ていった。


 先生が出ていったあとも、みんな僕に声をかけていいものかとなんとなく気まずい雰囲気のなかで数人が僕に近づいてくる。


 「アオ、お前それ大丈夫なのか?」「葵くん…なんだよね?」


 最初に声を掛けてきたのはケンと流奈ちゃんだった。その後ろでは心配そうな、驚いたような表情で修学旅行の班員のみんなが立っていた。


 「うん、体に問題はないし…ちゃんと葵だよ?」


 流石にすぐに受け入れられるのは難しいかもしれないけど、みんなとはまた普通に関われるようになりたいなぁ…。


 そんなことを考えていると、ケンが突然気の抜けたような表情になって口を開く。


 「ほーん…まぁアオがアオならいいだろ。ほんで、なんでそんなことになってんだ?」


 …え


 「ちょっと桂!そんなズケズケ聞いたら…!ごめんね葵くん、葵くんも色々大変だろうに」


 僕が女になったことなんてもう気にしていない様子で普通にそんなことを聞いてくるケンに僕を心から心配してくれている様子の流奈ちゃん。…そんな、いつも通りの反応。


 「……ふふっ」


 他のみんなも僕を心配するような表情や珍しいものに驚いているような様子はあるけれど、知らない人を見るような目で見てくる人は全然いなかった。…これじゃあ、心配していた僕がバカみたいだな。


 「…流奈ちゃん、僕は本当に大丈夫だよ。それにこうなった原因も大体わかってるから、すぐに戻ると思うんだ」


 「そうなんだ、よかったぁ…」


 「後で詳しく聞かせろよ?」


 「うん、それじゃあもう授業も始まるし席につこうか」


 そうして僕が思っていたよりも驚かないみんなに逆に驚かされながら、セラスさんの居ない女性としての短い学校生活が幕を開けた。


 ……セラスさん、早く戻ってくれないかなぁ。


無表情メイド「(葵様が女の子に?!?!可愛すぎる!!!元々可愛らしいお顔なのに体つきも顔つきもお洋服もいっそう可愛らしいです!!!最高ですありがとうございます!!!…それはそれとして葵様が不安そうになされているのは大変宜しくありません。戻る方法を出来る限り調べておきませんと)」



平 常 運 転

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