修学旅行2日目:生徒代表挨拶
感覚が空いてしまってすみません!
そんでふと思い至ったんですが、後書きが大分ノイズになっているんじゃないかと思いまして。
何か特別なことがない限り前書きも後書きもナシで行こうかと。
後書き茶番は好きなのでちょくちょく書きます。
長かったような短かったような黙祷が終わり、先生の生徒代表挨拶という号令で僕の視界の端に Now connectingの表示が出てくる。多分みんなの視界には僕の顔が表示されていることだろう。
先生に事前に指示されていた場所に立ってお辞儀をする。今までにもこういう挨拶はやってきたけど、事前に台本を用意できていた今までとは違って今回は僕の感じたままに話さないといけない。少しの緊張を感じながら頭の中で文章をまとめながら話し始める。
「…こんにちは、生徒代表の双葉葵です。まずは板式さん、今日は展示場を見学させて頂きありがとうございます」
先生達と一緒に並んでいる板式さんの方に頭を下げる。板式さんは笑顔でこちらにお辞儀を返してくれる。
「ここで龍災について知れたことを、とても嬉しく思います。私は以前龍災の追悼式典で、龍災を経験した方に話を聞いたことがあります」
実際に詳しく聞いたのは後からおじいちゃんに聞いた訳だけど、これぐらいの方がインパクトがあるだろうと嘘をつかない範囲で話を盛りながら話す。
「その時は私を怖がらせないように話していたのか、追悼式典で話を聞いた人たちは前向きな話し方をしていて私はそんなことが過去にあったのかと思っただけでした」
実際多数の死者が出ていて、家族を失った人達も会場に来ていたけど…実際に話た人達は前を向いて生きていた…ように見えていた。
「ですが今日龍災の実際の映像や当時の品を見て、それがとても恐ろしくて身近なものなんだと実感を持って理解できました」
龍災が過去にあった特異な事件などではなく、以前頻出地帯で戦った仮想体のような仮想体による現代でも起こり得る脅威であると展示を通して見せつけられた。
「今日この展示を通して学んだことを、板式さん達のように私達が伝えていくことで…同じようなことが起きても正しく理解して、対処していけるようにしていきたいと思いました」
「改めて、板式さん。そして展示場のみなさん、今日は見学させて頂きありがとうございました。これで生徒代表挨拶を終わります」
始まりの時のように生徒、板式さん、先生達にお辞儀をして元の場所に戻る。先生の隣に戻ると、小声で先生が話しかけてくる。
「双葉君、良かったよ」
「…ありがとうございます」
それから主任の先生が短く締めの挨拶をして、展示場の予定は終了した。バスで今日の宿、昨日も泊まったホテルに戻ることになった。生徒達がバスに乗り込んでいく中、僕は先生達と一緒に板式さんと最後の挨拶をしていた。
「双葉君、最後の挨拶すごく良かったよ!ありがとうね」
「そんな…正直な感想を言っただけで、あまりうまく言えなかったと思うんですけど」
僕の返事に板式さんは優しく笑いながら僕の代表挨拶を褒めてくれる。
「そんなことないよ。ところで、追悼式典に行ったことがあるって言っていたね」
「はい、参加したというか…そうですね」
僕が返事に少し詰まると、板式さんは少し不思議そうな表情をしながらも話を続ける。
「実は私も式典の会場にいたんだけど、気づいたかな?」
「え…?」
最初に挨拶した時のように、貼り付けたような笑顔で僕にそう聞いてくる板式さん。あの会場に板式さんも居たのか?この展示場の責任者なら貴賓として招かれていてもおかしくないけど…。
「あはは、まぁあんなに人が多かったんだし覚えてなくても無理ないよ。双葉君は確か警備で参加してたよね?」
「え?覚えてらっしゃったんですか?」
僕のことを見ているなら貴賓席にいたんだろうけど…僕の記憶の中で貴賓席の周りを巡回している時に板式さんは居なかった気がするんだけど。
…まぁ僕の記憶力も確実じゃあないし、二日目のことのせいで記憶が曖昧になってるのかもなぁ。
「あの会場の中で小さい子が護衛をしているのは印象的だったからね、覚えてもいるさ」
「そうだったんですね、来年の式典にも護衛として参加すると思うのでその時は挨拶しに行きますね」
「はは、その時は楽しみにしておくよ」
そんな会話をしていたあたりで、撤収の準備が終わった先生に呼ばれて僕もバスに向かうことになった。バスに向かう時に振り返ると、こちらを見ていた板式さんと目が合う。
「…」
こちらに笑顔で手を振る板式さんにお辞儀をしてから、僕はバスに乗り込んで行った。
「……次に会えるのが楽しみだ」




