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熾天使さんは傍観者  作者: 位名月
境界に立つ
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修学旅行2日目:昼食

今日はこの後2話投稿します。時間は未定ですが日付が変わらないうちに出すと思います。

 見学も終わり、博物館内の食事処に生徒が全員集合する。普段社員さん達も使っている食事処らしくて一学年分の生徒もなんとか入れている。


 「私もここで食事をするのは久しぶりですねぇ」


 「そうなんですか?」


 「えぇ、普段は忙しくてここにもなかなか来れていないので」


 そして生徒に混じって僕の真正面で一緒に座っている土御門様。見学の時にこっそり言われていた通り、土御門様は当たり前のように見学の後に食事処までついてきて席に座っていた。


 「それじゃあみなさん!手を合わせてください!いただきます!」


 「「「いただきます!」」」


 先生の音頭で一斉に配膳された食事を食べ始める。僕の目の前の土御門様も綺麗な所作で料理を食べている。僕もお箸を持って食べ始めようとしたところで肩に乗っていたゆずが肉球を頬に押し当ててくる。


 「にゃ」


 「あ、ごめんねゆず。今開けるから」


 昨日のうちに買っておいた猫缶をバッグから取り出す。何故か博物館内に入れるのは許されているけど、流石に食卓にあげるのはいけないなと思って予備のハンカチを地面に広げて開けた猫缶を置く。


 …猫缶も高めのやつじゃないと許してくれなかったから大変だったなぁ。お母さんが多めにお小遣いをくれていてよかった。


 ゆずが猫缶を食べ始めたのを見て僕も料理を食べ始める。そんな流れを見ていた土御門様が一旦箸を止めて口を開く。


 「さて、確か葵さんは何か聞きたいことがあったんですよね?」


 「はい、土御門様自身のことが知りたくて」


 「私に答えられることでしたらなんでも聞いてください」


 にこやかにそう答えてくれる土御門様。口の中の魚を片付けながら考えていた質問をまとめて、口の中の物を飲み込んでから話し始める。


 「答えられないことだったら答えて頂かなくて大丈夫なんですが、土御門様の情報があまり出回っていないのって何か理由があるんですか?」


 僕らが修学旅行の前に調べていた限りでは、土御門様の情報はそれこそ名前と職業ぐらいしか出てこなかった。フィルターのせいかと思って両親に聞いてみても、僕が調べた以上の情報は一般公開されていないとのことだった。


 「あぁそれですか、大した理由ではないのですが…」


 土御門様は言葉を探すように視線を上に上げて数秒黙り込み、すぐにその理由を話し出す。


 「特に隠したいものがあるわけではないのですが、隠してあること自体に意味がある…といった理由ですかね?」


 「隠してあること自体に?」


 「えぇ」


 土御門様の答えは意味がわかるようなわからないような、曖昧な答えだった。確かに何かを隠したくて情報を規制しているのなら、こうして僕らの前に顔を晒していること自体おかしいってことになる。


 「私について調べていたのならご存知だとは思うのですが、私の主な仕事は神の代行です」


 「確か…神様の意思や決定を神様の代わりに伝える役目、ですよね?」


 「えぇ、よく勉強していますね。葵さんがおっしゃられた通り、私はあくまで神の意思を伝える存在です。私という個人はあまり露出していない方が何かと都合が良いんですよ」


 僕の質問に答える土御門様はいつもと変わらないにこやかな表情でそう語っている。あくまでそうすることが当たり前のように語っているけど、お役目のために幼少期からそうして自分という存在を無くしていくなんて僕には想像もできない。


 「…名前がないと言っていたのも、そのためなんですか?」


 「ええ、神の周辺で神の代行として仕事をするにあたって名前というのはあると不利にしか働かないんです」


 「じゃあ、元から名前がなかった訳ではないんですか?」


 「いえ?私には生まれた時から土御門という姓しかありませんよ?」


 「えっ?」


 土御門様の口から予想外の答えが飛び出る。てっきり神様の代行というお役目が決まった時に名前がなくなったのかと想像していた。それじゃあまるで…。


 「生まれる前からお役目が決まっていたみたい…」


 「おぉ!正解です!葵さんは頭の回転が早いですね」


 「…」


 土御門様はあくまで朗らかに答える。調べた時には分からなかったけど、もしかしたら神様の代行というお役目は僕や由奈さんみたいな生まれた家に左右されるものなのか?


 「その、誰がお役目に就くかってどうやって決めているんですか?もちろん答えられないことだった良いんですが…」


 「そうですね…普通に答えてもあまり面白くないですし、問題形式にしてみますか他のみなさんも一緒に考えて見てください」


 「「「え?」」」


 僕らの会話を聞きながらご飯を食べていた班員のみんなは、急に話を振られて固まっていた。そんなみんなを見ても、土御門様はお茶目に笑っていた。


土御門様はお茶目さん


閲覧、ブックマーク、評価やいいねして頂けた方、誠にありがとうございます。

感想も励みになっています。誤字報告も助かります。


作者プロフィールにあるTwitterから次話投稿したタイミングでツイートしているので気が向いたらどうぞ…

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