表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/50

8,とっ散らかる誤解

 私は見てしまった。図書室で、殿下と泥棒猫が一緒にいるところを!


(夜会を最初に持ち出してこられたということは、まさに、婚約破棄イベントの前触れ)


 教室に戻りながら、私は両手に拳を握ってしまう。

 まるで物語さながらの状況が整えられていく。

 面白くてならないわ。


 なれば、これからあるのは、冤罪のでっちあげ。

 毎日、ノートはちゃんと記しておかないといけないわ。


 まさか、王妃様主催の茶会で断罪計画?

 新しいわね。

 親の目の前で、為されるなんて、なんて勇気があるのかしら。


 それとも、最初に口を滑らした夜会が本命なのかしら。 

 どちらにしろ、私がとるべき道は一つ。

 自衛のみ。


 そして、晴れて婚約破棄が成立したなら、表舞台をおさらばよ。

 婚約破棄だもの、誰にも顔向けできなくて、自領に引きこもっても、誰もおかしいとは思わないわ。


 私は晴れて、平民然とした、一領主として、有意義な自領経営に着手して、父と母と自領で暮らすのよ。店を手放したくないかもしれないから、店と自領の往復でもいいわ。


 養父母の祖父母も、王太子殿下が望んでの婚約解消、もとい婚約破棄なら、絶対になにも言わない。私からじゃないもの。


 嬉しい。

 嬉しいわ。

 ここで、学んだこともきっと役に立つ。

 

 祖父母のところに行った方が、家族が丸く収まると思った。

 父や母と離れたくなかったけど、教育を受けることができるのは、祖父母の元でだけ。ある意味、それがチャンスだと父や母が思っているのが分かった。


 祖父母のところで生活して、学んで、領地をもらえば済むのだと思った。


 いずれは母へ、そして母から私へ、領地が譲られて行く。突然、領地が私の手に渡って、困ったり、人生を狂わせることになったら大変。


 大人の間でどんな話が交わされていたか。具体的には覚えていない。


 でも、いろんな私の将来について考えていたのことはよく分かるの。

 

 母が自領を受け取るのならまだいい。でも、未来はなにが起こるか分からない。母を飛び越えて私に来たら、やっぱりどうにもならない。

 学べば学ぶほど、そういうことが分かってくる。


 知らないまま、大人にならなくて良かった。そう思えるから、やっぱり勉強する道を選んでよかったと思っている。


 父と母とも完全に縁が切れているわけじゃない。祖父母の元に行ったから、両親とは縁を切りなさい。そんなことは祖父母は言わなかった。


 だから安心していた。


 このまま勉強して、良い領主になって、父と母と祖父母と、みんなで仲良く暮らすんだ。

 そして、私の人生を歩んでいく道すがら、良い人がいたら、ちゃんと想い合って、両親みたいに良い家庭を築くって決めてたのに!!


 そこに、祖父母が持ってきた、王太子殿下との婚約。


 なんで!! 叫びたかったわよ。


 でもね、祖父母を養父母として、母の娘でありながら、公爵家の次女に収まった私に、抵抗は出来なかった。数年前は、まだ私は学園にも通う前。

 立場上、断れない。


 そんなこんなで、とんとんと呆気にとられているうちにまとまってしまった縁談。


 王太子殿下も、丁寧と言えば丁寧だけど、余所余所しい感じだもの。図書室の問いも事務的だった。

 貴族たるもの家優先。所詮、私は家同士が決めた相手に過ぎないの。


 こんな淡々とした関係なら、どこかの本のように『真実の愛を見つけた』と言われても、さもありなんと納得するしかないわ。



 

明日から7時と19時投稿になります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ