第八十四話「凛の決意と結月の意思」
結月の頭の中はぐちゃぐちゃになっていた。
朔への気持ちと凛からの気持ちで悩み、妖魔退治の任務がおろそかになっていた。
「くっ!」
今夜も妖魔退治にでかけていたが、結月は本領を発揮することができずにいた。
「結月ちゃん!」
妖魔の爪で腕を切り裂かれた結月を心配する瀬那。
急ぎ結界を張りに結月のもとへと向かう。
瀬那は結月のもとに到着すると、すぐさま結界を張った。
結界に弾かれるように妖魔は飛ばされ、木にぶつかる。
「……」
結月の怪我を気遣った瀬那が、結界を解除して妖魔に切りかかった。
妖魔は瀬那の刀の攻撃で灰になって崩れ落ちる。
妖魔の襲撃対処を終えた結月と瀬那は一息つくが、結月の顔は曇ったままだった。
「結月ちゃん、どうしたの最近」
「いえ、なんでもないんです」
「なんでもないことないでしょ! こんなひどい怪我までして」
「……自業自得です……」
「結月ちゃん……」
瀬那は察しがよく、すぐ色恋ではないかと思っていたが、わざと言葉には出さなかった。
結月が自室に戻ると、そこには凛がいた。
「凛さん……」
「美羽に許可は取ってあります。少しお話しませんか?」
「……はい、どうぞ中に入ってください」
結月は凛を自室に招き入れると、机を挟んで凛と真向いに座った。
「傷はどうですか?」
妖魔退治で痛めた傷は、永遠に治療してもらっていた。
「大丈夫です、すみません」
「なぜ謝るんですか」
「私は最近妖魔退治に集中できておりませんし、お役に立てておらず……」
「私のせいですか? それとも朔ですか?」
結月ははっとしたように顔を上げたが、また凛から目を逸らして言う。
「両方です」
「そうですか。私の話を聞いてくださいますか?」
「はい」
「私があなたを好きな気持ちは変わりません。本音は今もあなたを求めてやまない」
「……凛さん。私はあの夜、朔様に凛さんが好きだと言いました」
「──っ!」
「朔様を今すぐ忘れることはできません。私の中で初恋の人だから……」
凛は机ごしに結月の頬に手を当てる。
「今は構いません。朔を好きでも。徐々に私が忘れさせてみせます」
「凛さん……私はずるいことを……」
「構いません。私はあなたの傍にいて支えたい。支えさせてください」
結月は凛の想いに応える決心を固めた。
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