第七十三話「危険な取引」
荷車は城下町へと向かうのを止め、森の中へと向かう。
徐々に車輪の上がり下がりが激しくなり、荷車が揺れ始めるのを朔と凛は感じておかしさに気づく。
「凛」
「はい、これはあぜ道のような感じですね。少なくとも城下町へと向かってはいません」
すると、急に荷車は停止し、荷車を引いていた男が声を出した。
「今日も通常通りだった。警備の配置も昨日と全く同じ。同じ時間に交代している」
「──っ?」
朔と凛が静かに耳を澄ませる。
すると、木の陰から一人の男が現れ、荷車の男に話し始めた。
「決行は明日だ。もう引き返せねえ。警備は明日も同じ配置さ、きっと」
「なら、好都合だな。宮様を暗殺したあと、そのまま一気に裏門から脱出できる」
「「──っ!!」」
朔と凛は声こそ出さなかったが、目を見開いた。
(宮様の暗殺……時哉さまの身が危ない……)
凛は心の中で一条家当主であり、朔の父親である時哉を思い浮かべた。
心の中がざわめき、焦りを覚えた。
一方、凛が朔の様子をうかがうと、朔は冷静だった。
「朔様……荷車から脱出して宮廷に戻りましょう」
「ああ」
だが、凛が布を少しめくり、外の様子を見ると、そこは森の中でありまわりに人は見当たらない。
当然この荷車まわりには何もなく、降りてここから脱出しようとすれば、おそらく二人の男に見つかるだろう。
「朔様、ここは私が……」
『囮になります』という凛の言葉が出る前に、もはやその場に朔はいなかった。
「朔様?!」
「呑気なものだな、暗殺の話をこんな堂々と大声でするとは」
「誰だ!」
朔は荷車の後ろから、二人の男の視界に入る位置に向かった。
「ガキ?」
「いや、こいつ、宮廷で見たことがある。確か……宮様の息子の……」
「宮様のだと?! なんでこんなところにいるんだ?!」
「まさか今の話も聞いて……」
「ああ。聞いていた。このことは宮様に報告させてもらう」
凛もようやく布をめくりあげ、朔と男たちの間に入り、朔を守ろうとする。
「朔様、お下がりください」
「聞かれちゃまずいな、ご子息。おとなしく死にやがれえええー!!」
朔と凛へ、男が刀を振り上げて襲ってきた──
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