第六十六話「邂逅」
「結月さん」
「はい、あの妖魔の気配……何かおかしいです」
結月と実桜は瘴気を纏う鏡を持った妖魔を追いながら、その異様さに気づいた。
妖魔は逃げるばかりで、結月や実桜と交戦しようとしなかった。
屋敷の屋根に上っては降り、屋敷から離れてはまた戻ってくる。
それを繰り返す妖魔は明らかに『時間稼ぎ』をしていた。
「時間稼ぎも気になりますが、気配が安定しないのも気になります。つまり……」
『あの妖魔は本体ではない』
結月と実桜はそう同時に心中でそう思った。
鏡の瘴気や妖魔自体の気配も煙のように揺らめき、一定でない。
そして、この鬼ごっこは突如終わりを迎えた──
「──っ!」
今まで結月と実桜から逃げていた妖魔の身体は突然霧のように消え、持っていた鏡が割れて屋敷の床に音を立てて落ちた。
それと同時に結月と実桜が探していた人物たちが姿を現した。
「瀬那さん! 蓮人くん!」
結月が朽ちた屋敷の部屋に、消えた妖魔と入れ替わるように現れた二人に声をかける。
「結月っ! それに実桜さんも」
「二人とも無事だったか……」
安心したように言葉を漏らした実桜。
結月の後を追って、姿を消していた二人のもとに近づく。
「やっぱ、全部幻だったのか……」
「何があったんですか?」
瀬那と蓮人は一部始終を結月と実桜に話した──
一方、宮廷では瀬那と蓮人の気配を読み取った朔と凛が胸をなでおろした。
「──っ! よかった……」
凛は息を一つ吐き、安堵の声を漏らした。
「朔様、瀬那と蓮人はぶ……」
そこで初めて凛は朔の異様なまでの怒気に気がついた。
そして、自身もその気配に気づき、朔の視線の先に目をやる。
朔の目線の先には、臙脂色の着物をきた長髪の男が立っていた。
その男は鋭い眼光をし、同じく朔を見つめていた。
凛はその男の恐ろしさを本能的に感じ取った。
しばらくの沈黙の後、ゆっくりと朔が口を開いた。
「待っていたぞ、朱羅」
朱羅と呼ばれたその男は不気味に笑った──
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