第六十四話「好敵手」
力は均衡を保っていた。
いや、頭に血が上っている分、瀬那が少し劣っている。
「くっ!」
「……」
瀬那は次第に敵の行動に違和感を覚え始めた。
(ん? 何かおかしくねえか? 俺、この敵と戦ったことあるか?)
瀬那がそう考えたのにはわけがあった。
敵の攻撃の動き、避け方、間の取り方……すべてに見覚えがあった。
「……っ」
「──っ!」
これまで無言だった敵からわずかに言葉が発せられる。
瀬那はその動きと言葉から、一つの推測を立てた。
(違う、俺が戦っているのは──!)
刃が交わるその瞬間、二人は互いの名を叫んだ。
「蓮人っ!」
「瀬那っ!」
瀬那と蓮人は刃が交差するその奥で、互いに相手の目を見つめてにやりと微笑んだ。
瀬那が敵に見えていたのは、蓮人であり、蓮人もまた瀬那を敵と思い戦っていた。
「たくっ!んだよ、お前なんだったら早く言えよ」
「んなの、できてたらするっつーの!」
瀬那と蓮人は互いに憎まれ口をたたきながら、刃をそっと下ろす。
「てか、なんだ? つまり俺ら幻見せられて、つぶし合いさせられてたってのか?」
「ああ、そうみてぇだな」
すると、微かな妖魔の気配に瀬那と蓮人が再び戦闘態勢をとる。
ゆらゆらと現れたのは、幻を見る前に目撃した男の霊──妖魔だった。
「あいつを倒せば……」
「ここから抜けられるってのか?」
瀬那と蓮人は顔を見合わせて頷くと、人間の男の姿をした妖魔に向かい、駆けだした──
いつも読んでいただきましてありがとうございます<m(__)m>
この文章の下↓↓↓のほうにこの作品を評価するボタンがあります。
見えづらいですが、、、
また評価に加え、感想やレビュー(推薦文)も書いていただいて問題ございません!
むしろあなたのお声を聴けることが嬉しいです(*^^*)




