第五十九話「調査」
夜──
「霊か……」
「なんだ? 怖いのか?」
瀬那が顔を歪めながら歩く蓮人に、からかうように話しかける。
二人は昼間の会合で指示された、西の森の屋敷に向かっていた。
「怖くねえっての!」
「ほお~?」
にやにやとしながら、蓮人を覗き込む瀬那。
「こっちみんなよ気持ちわりぃ」
「気持ち悪いってひどいっしょ」
このような掛け合いも二人にとっては日常茶飯事。
仲がいいのか、悪いのか……。
守り人たち一条家の人間を含めた大半は、この口喧嘩を温かい気持ちで見守っていることを二人は知らない。
そうして口喧嘩をしているうちに屋敷に到着した。
今は使われてないというだけあり、木の老朽化が激しい。
屋敷の部屋のところどころは屋根から崩れ落ちている。
「今のところはその『霊』とやらはいないようだな」
「火の玉も見えねぇ」
「とりあえず、屋敷のまわりから調査進めていくか」
「おう」
相談した結果、屋敷を右回りに、蓮人が左回りに見て回ることにした。
同時に瀬那と蓮人が屋敷の庭と外周を中心に、見て回る。
しばらく見回っていると、瀬那と蓮人が再び屋敷の裏口辺りで合流した。
「なんか異変あったか?」
「いや、何も」
二人は念入りに確認をしたが、ひとまず庭や屋敷周りと外から軽く屋敷の中を見る分には、何も異常はなかった。
「じゃあ、本格的に中見てみるか」
瀬那がそういうと、ゆっくりと二人は屋敷の中に足を踏み入れた。
二人が歩くたびに、床が悲鳴をあげる。
「武家屋敷……か?」
「ああ、刀も鎧もある、小さめだが武器倉庫もあるな」
各部屋をくまなく調査していく。
二人は最後の一室にたどり着いた。
この屋敷の主人であった人物の部屋のようだが、掛け軸、刀、鎧、骨とう品が置かれている。
「何もおかしなところねえよな」
すると、蓮人の問いに瀬那が真剣な顔で答える。
「いや、おかしい。これだけの老朽化、10年はくだらない年数たってる。なのに、骨とう品やら何やら揃っているのはおかしくないか?」
「──っ!」
瀬那の推察通り、通常であれば野盗に物品などはおおよそ盗られ、何もないことが多い。
しかし、あまりにこの屋敷のものは建物のわりに【揃いすぎている】。
その時、瀬那と蓮人の立っている床がぐらぐらと揺れ始めた。
「なっ!」
瀬那と蓮人は咄嗟に受け身を取るも、態勢を崩され膝をつく。
突如として起こった揺れは、さらに勢いを増し、柱が大きく崩れてゆく。
崩れ行く柱が瀬那と蓮人を襲う。
「やべえ!!」
瀬那が慌てて結界を張るも、一足遅かった。
柱や崩れ行く天井が瀬那と蓮人の上にのしかかる。
その一瞬、瀬那は、掛け軸の前に目を見やった。
そこにはにやりと笑う若い男の霊が佇んでいた──
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