第三十九話「会合」
「結月様っ!!」
結月はゆっくり目を開けると叫んだ美羽のほうを眺める。
「みわ……? ここ……」
「結月様のお部屋です」
上半身を起こし、起き上がろうとする結月。
「どこか痛むところはありますか?」
「ううん、頭がぼーっとするくらい」
結月の傷はほぼ治りかけていた。
「朔様に知らせてまいります、永遠が来ますので少々お待ちください」
「……うん」
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翌日──
結月を含めた、朔と守り人たちで先日の襲撃で起こったことを報告し合っていた。
「結月さん、お身体のほうは」
「大丈夫です。ご心配とご迷惑おかけしました」
結月は頭をさげて深々と謝る。
「むしろ御礼を申し上げねばなりません。主人である朔様をお守りいただいたこと大変感謝しております」
「私は【刀】です。皆さんのために戦うことが仕事ですから」
朔、凛、実桜、瀬那、蓮人と順に目を見つめていく結月。
「永遠と美羽からあまり記憶がないと聞いたが、お前の見た戦況をここで伝えろ」
朔が頬杖をついて結月に向かって促す。
「はい。私が覚えているのは皐月という少年を倒し、戦いが終わったと安心したあとにさらに襲撃を受けて双剣の男と戦った途中までは記憶があるのですが、朔様が目を覚まされないことを……」
結月は自分自身で発言する最中に、朔の身体が貫かれた瞬間の記憶が頭にでてきた。
「朔様っ!! 朔様の身体が貫かれて……」
「「「「貫かれた?!」」」」
その場にいる守り人が大きく反応を示す。
「結月様……貫かれたとは……」
凛が自分を抑え込むように冷静を装って結月に問う。
「私が皐月を倒したあと、朔様を見ると刃で身体を貫かれていたんです……」
守り人たちが息を飲んで結月の言葉に耳を傾ける。
「双剣の男が攻撃をしたようですが、刃がありませんでした。それと、魂を奪い損ねたが傷はつけた、と」
「「「「──っ!」」」」
守り人たちはさらに驚愕した。
自分たちの知らないところで主人がそのような状態になっていたことへの憤りを感じていた。
結月や朔へではなく、敵に対しての憤りだ。
「朔様……本当でしょうか……?」
凛が様子をうかがうように言う。
あの夜から今まで怪我はしていたがいつも通りの生活を送っていた朔の様子を思いながら伺う。
「そいつの言ったことは正しい。俺は刃が自分の身体に届く瞬間に自らの身体をわずかにそらして避けた。魂の件は今はじめて知ったがな」
「瀬那、朔様の身体を透視して様子を見れますか?」
「やってみます」
瀬那は朔様のほうをじっと見つめ、目を細めて集中していく。
わずかな時間沈黙が訪れる。
透視が終わったのか、瀬那が口を開いた。
「……魂にかすかな傷のようなものは確認できます。──間違いないかと」
「魂に傷って……身体に影響はないんですか?」
蓮人が朔の身体を心配していう。
「今のところ問題ない」
「実質的な身体に与える影響は不確定です。朔様にはしばらく安静にしてもらったほうがよろしいかと」
実桜が朔、凛に向けて発言をする。
「そうですね、朔様しばらく職務の補佐に私が入らせていただきます、いかがでしょうか」
「お前が言うなら仕方あるまい」
結月は朔に自分自身の記憶がない部分について質問した。
「朔様、私はそのあと敵を倒したのでしょうか?」
「覚えていないのか?」
蓮人が結月に対して問うと、結月はゆっくりと不安げにうなずいた。
「敵の消息は不明だ。だが、お前の力の覚醒を見て撤退した可能性が高い」
「力の覚醒……?」
「お前は『イグの行使者』涼風家の力を解放した。だが、扱いきれずに暴走した。記憶がないのはそのためだ」
「暴走……」
結月は合点がいった。
記憶がなくなる前、敵の前で怒りをきっかけに目の前が藍色になった。
その瞬間身体が軽くなり、集中力が研ぎ澄まされた。
その集中力が極限にいった先で記憶がぷつりと途絶えていた。
守り人たちも真剣な顔でその事実を受け入れた。
(どうすれば暴走をしなくなる……?)
結月はしばらく思案したが、解決策は当然出てこなかった──
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