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第三十六話「終局」

「朔様っ! 結月さんっ!」


 凛は宮廷の朔がいる部屋に向かうと、そこには壇上に倒れこんだ朔と結月の姿があった。


「──っ!」


「大丈夫だ」


 凛の慌てた様子を見た朔が自分の無事を告げる。


「はあ……ご無事でなによりです」


 そういうと朔と結月のもとに近づき、跪いた。


「この度は私の不手際で朔様と結月さんを危険にさらし、誠に申し訳ございません」


「構わん、問題ない」


 凛は顔をあげると、朔は左手を床につけるように脱力していた。

 左半身は朔の血で真紅に染まっている。

 一方、結月はわずかに傷を負い、朔の腕の中で抱きかかえられるように気を失っていた。


「朔様、治療いたします」


「問題ない。それよりそっちの報告をしろ」


 朔は自らの治癒の力で傷の悪化を防ぎつつ、凛の報告に耳を傾ける。


「かしこまりました。私たちが向かった時には斎と名乗る少年がいました。その少年の猛攻により、蓮人と瀬那が重傷。実桜も軽傷を負っております」


「三人で戻ってこられる状況なのか?」


「はい、瀬那は自力で、蓮人は実桜に支えられて帰還中になります」


 朔は少しの間考えると、端的に宮廷で起こったことを話し始めた。


「こちらは皐月と名乗る少年が襲ってきた。もう一体敵がいたが消息や詳細は不明だ。こいつが全て対処した」


 『こいつ』と言いながら結月を眺める。


「その結月さんの具合は……?」


「『イグの行使者』の力を発動させて暴走した。今は眠っているだけだ」


「そうでしたか……」


 そっと胸をなでおろした凛は朔に指示を求める。


「朔様、処理のほうはいかがいたしましょうか」


「東の森は一時封鎖で民衆を近づけるな。処理はうらに指示。あと、お前は蓮人たちのもとへ戻れ」


「……かしこまりました」


 凛は朔の意図を全て理解すると、すぐさまその場をあとにした。



(さて、ひとまずこいつを休ませるか)


 朔は立ち上がると左半身の痛みを抑えながら、歩き始めた。


永遠とわ、美羽」


 朔が呼ぶとすぐさま二人は現れる。


「──っ!朔様……お手当を早く……」


「構わん。こいつを手当して部屋へ連れていけ」


「……かしこまりました。医師をお部屋に手配いたしますゆえ、ご無理をなさらぬようにお戻りくださいませ」


「ああ」


 結月が永遠と美羽に抱きかかえられて部屋に戻るのを見届けると、朔はゆっくりと自室へ戻った──




──────────────────────────────


 朔は自室で考えに耽っていた。


(力の暴走か……それほど強大な力なのか? 涼風の力は)


 治療の施された自らの左手を眺める。


(自分でも勝手に身体が動いた……)


 朔は結月が暴走し、刃を交えた瞬間の時を思い出す。


(守りたいと思った……この俺が)


 朔は芽生えた感情に少しばかり取り乱していた──


騒動の終局となりました。

みなさま、お読みいただきありがとうございます<m(__)m>

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