表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/101

第十九話「婚約の儀式」



「はあ……疲れた……」


 結月は重たい着物を着替えもせずに自室にへたり込む。


「結月様、だらしない格好はおやめくださいませ」


 美羽は結月に向かってしかりつける。


「でも……さすがにあの歓迎されていない空気の中で食事してさらに隣に朔様がいらっしゃるなんて、疲労も限界です……」


「何をおっしゃるんですか。結月様は朔様の婚約者なのですよ? もっと胸を張って堂々としていらしてください」


 結月はじーっと美羽のほうを見る。


「な……なんでしょうか?」


「いや、美羽ちゃんも最近私に対して厳しいなって」


「そのようなことはございませんよ」


 結月は不満そうに口をとがらせる。


 結月が来てから一カ月が過ぎようとしていた。

 涼風家に伝わる双剣のおかげで結月は妖魔退治を問題なくこなしていた。

 結月が討伐に参加してからというもの、街は一時的に平和を取り戻していた。

 もちろん、妖魔による危機は民衆には気づかれていないため、綾城という街は安寧秩序を保っていた。


「結月様、本日は凛様が妖魔退治の任務はお休みで良いとおっしゃっておりました」


「そうなの? まあ……確かに少し妖魔の勢いが削がれているって言ってたし、今日だけはお休みをいただきます」


 そういいながら、結月は重い着物を脱ぎ、寝間着に着替える。


「それでは結月様、おやすみなさいませ」


「はい、おやすみなさい」


 ふすまをゆっくりと閉める美羽。

 美羽が去ったところで布団に入る。


 どっとたまった疲れが結月を眠りに誘う。

 目の前がゆらゆらと揺れたのち、瞼が重くなった。



──────────────────────────────


 一刻ほどたった頃、結月はなんともいえない不快感に襲われた。

 禍々しく自分の首を絞めてくるような、息ができない状態に陥る。


「やはり生きていたか、涼風の娘」


 結月の頭の中で声が響く。それは深い深い闇の底から聞こえるような低い男の声だった。


(誰……)


「オマエが持っていたとはな」


 結月は呪縛を解こうとするが、まるで効果がない。そればかりかさらに絡まるように禍々しい瘴気の渦に捕らわれるようだった。


「いずれ……」


「──っ!!」


 結月は布団をはねのけるように目が覚めた。


「はぁ……はぁ……なに……今の…………」


 悪夢だったのか、と思った刹那、首に違和感を覚えた。

 鏡を見ると首に瘴気の跡が見えた──

ここまで読んでくださりありがとうございます!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ