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久我山百合姦地獄  作者: 葉山 灯
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「まあ、つまりエッチな夢を見せて食ってるんだけど、もう一人じゃ無理なのよ。分かる?」


「分からんが?」


 どうしてこうなってしまったのか。今、私の部屋にはめっちゃくちゃ美人な痴女がいる。


 ほぼ紐のような水着からはみ出そうなクソおっぱい。誰もが振り返ってしまいそうな美貌とスタイル。


 そして背中に生えてる黒い羽と自在に動かす先端がハート型の尻尾。


 彼女は自身をサキュバスと言った。確かにまんま成人向け漫画に出てくるやつ。


 彼女は私ににじり寄ってくる。後退りして気付けば壁に追い詰められた私を見て舌舐めずりした。


「だから……ね? 契約、して? 貴女がご主人様だから私逆らえないのよ? ね?」


 胸に顔が当たる。この野朗……! 見せつけやがって……っ!


 嫌味かっ……!? 私への……! 中学一年から全く変わらないこの幼児体型へのあてつけかよ!


 何で映画で高校生料金を払おうとしたら学生証を出せって言うんだよ! ちくしょう……ちくしょう……!


 私はおっぱいを引っ叩いた。揺れやがって。ブレない私を見習えよ脂肪が。


「私のおっぱいに屈しない!?」


「散々つけ回されてのこの仕打ち。ふざけんなよ痴女がぁ!」


「痛っ!? 痛たたたたっ!? 掴まないで! 千切れる! 千切れるからぁ!!」


 ギャーギャーと部屋で騒いでたら母親が来て、私だけが叱られた。


 本当に私以外見えんのかこの痴女。感触もあんなのになぁ。


 たっぷり怒られた後、私はベットに倒れた。あの女は漫画を読みながら空中に浮いてる。私はため息をついてこの痴女との出会いを思い返した。




◻️



 帰り道、駅ナカでアイスを買って食べながら歩いていると道行くサラリーマンの中にほぼ露出した格好の痴女を見つけ、私は三度見した。


「あ」


 その女と私は目が合った。私は咄嗟に顔を逸らして早足で逃げようとしたが捕まった。


「ねぇ、見えてるんでしょ! いやー良かった! 波長合う子全然居なくって!」


「…………」


「あ、私リリィって言うの。貴女は? お名前教えてよー!」


「…………」


「やっぱ大和撫子はちんまいのが良いわよねぇ。庇護欲って言うの? すっごく可愛いよ貴女!」


「…………」


「ねーえー、こっち向いてよぉ。お姉さんとお話、しよ?」


 私は逃げ出した。後ろにいる女があんなヤバい格好をしても誰も見向きもしない事に不気味だったからだ。


 何よりあんな痴女と知り合いだなんて思われたら恥ずかしいだろうが!


 急いで階段を降りて丁度良く扉が閉まる寸前の電車に乗り込んだ。あの女は居らず安堵の息を吐く。

 

 次の駅で降りて、さて帰ろうとした時頭上から声がした。


「逃げないでよ〜。話聞いてってばー」


「は?」


 上? え? ぎこちなく頭を上げるとそこには痴女が空を飛んでいた。そのまま私にダイブしてきた。


「捕まえた! もう逃がさないからね!」


「は、離っ……! た、助けてください! 痴女! 痴女が私を!」


「失礼ね。これ正装なの。それと私の姿は多分貴女だけしか見えてないわ」


 そんな馬鹿な。すれ違うサラリーマンの顔を見ると可哀想にと哀れんだ目のまま通り過ぎっていった。他の人も露骨に私から離れて階段へ向かっていく。


 みんな私を置いて居なくなった……! この女に押し倒されてる私を置いて。


「ね?」


 この後、何度も逃亡を試みたが失敗。ついに根負けした私はこいつを家に連れてきたのがここまでの経緯だ。本当はカフェとか人気の無い場所で話したかったが、こいつの姿が見えないからどうしても私が一人でぶつぶつ呟く痛い奴になっちゃう。


 仕方なく自室でこの女の話を聞く事にした。





◻️






 そして今に至る。


「音子! 妹が受験で大切な時期なの分かるでしょ! 大声出すんじゃないわよっ!」


「……はーい」


 母は大きな音を立てて扉を閉めて、一階に降りていった。いや私より騒音スコア叩き出すじゃん。


 まあ、確かに中三の六月は大事な時期だしな。一流高校へ妹を入れたがる両親もピリピリしてる。ましてや三流高校(母曰く)に滑り止めで入った私への風当たりも強くなるのも分かるものだ。


 あーあ、ずっと塾行っててくんないかなぁ、妹。両親も金だけ出して出張とか行ってくれたらなぁ。


「どうやら中々鬱憤が溜まってるご様子」


 痴女が話しかけてきた。


「お前もそれに含まれてるんだけど」


「分かってないわねぇ、私の素晴らしさを。すぐに私がいないと生きていけない身体になっちゃうんだから」


 フフン、とドヤ顔。


 なら尚更出てけよ。とは言え先程のこいつの言葉を思い出す。要は私と契約を結ばない限り、こいつはいつまでも私に付き纏うのだろう。


 しょうがない。聞いてやるか。


「まずお前サキュバスって言ったよな?」


「そそ。リリィって呼んでよ」


「で、さっきの話なんだけど……。何で私と契約結びたいんだっけ?」


 宙に浮かぶリリィは明らかに呆れた顔で私の額を指で叩いた。


「聞いてなかったの? そんな難しい話じゃないのに……」


「ごめん。おっぱいで頭が真っ白になった」


「胸でビンタしたら全ての記憶を無くすんじゃないの?」


 そんな事してみろ。その胸を着脱式にアップグレードしてやるよ。


 ともかくリリィの話をもう一度聞いてみる。分かりやすく纏めるとつまりこうだ。


 サキュバスは人にエッチな夢を見させて、その精力を頂く。でもとある事情で自身を夢に出せなくなって、精力が得られなくなった。


 その力が無いと存在が薄れていってやがて消えていくらしい。故に誰かと契約して存在を繋ぎ止める必要があった訳だ。


 リリィの魔力と波長が合う人間……それが私だと。


「他に誰かいなかったの? 同じサキュバスとか」


「契約したら奴隷扱いよ。死んでもごめんだわ」


 それにこの世界にはリリィしかサキュバスはいないようだ。他のは別の世界で暮らしてるんだと。


 成る程。ともかく私と契約を結びたい理由は分かった。


 それを考慮して言わせてもらう。


 断る、と。

 


 

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