惨劇
アランの回想シーンです。段々とアランという人物がわかってきます。今回も読んで頂けたら幸いです。
デューイは指笛をピュイッと鳴らし、ザッケルを呼んだ。ザッケルは直ぐ様姿を現し、何時ものように膝をつく。
「この村の生存者はいないのか?仕事の早いお前の事だ。既に部下に調べさせているんだろう?」
「はい。この村の西にあるヘルデ村に5名逃げ込んでおりました。……しかし……その中にレイア様とご家族はおりません。」
デューイは眉をひそめる。
「……お前にしては珍しく言葉を濁したな。」
ザッケルは深く頭を下げた。その表情は苦悶に満ちている。
「……アラン様には……酷な話になるかと……。」
膝をつき、頭を下げたままのザッケルにそっと歩み寄るアラン。
「……この村の状態だ。覚悟はできている。どうか話してくれないか。」
「…………御意。」
ザッケルは唾を飲む。
「…まず、今回の村の襲撃は、この辺りをねぐらにしている野盗共の仕業です。恐らくこの国の王族や貴族達との関わりは無いでしょう。もし関わりがあるとするならば、アラン様を誘い出す為にレイア様を人質に取るものと思われます。」
これにはデューイも頷く。
「だろうな。奴等が欲しているのはアランの持っている研究書類だ。婚約者であるレイア殿の身柄を有効活用するだろう。」
ザッケルは言いにくそうに俯く。
「……そして、肝心のレイア様ですが……。ご両親共々…亡くなられております。どうぞこちらへ……。」
ザッケルはアランとデューイをサヴァン村の南東の森の奥にある崖下に案内する。そこには木で作られた簡素な墓が三つあった。その真ん中の墓には、アランがレイアに渡した、アランのつけている指輪と、ペアの婚約指輪が革紐に通され括りつけられていた。
「レイア様のご両親は、家の前で盗賊に斬りつけられ、そのまま亡くなりました。そして……。」
ザッケルにはどうしても、ここから先を話すことが躊躇われた。
「ザッケル……。」
ザッケルは名前を呼ばれ、ハッとアランを見る。アランは一つ頷いた。ザッケルにはアランは全てを察しているのだとわかった。ザッケルは言葉を選びながらゆっくりと話し出す。
「……レイア様は盗賊共に追われて森に逃げました。レイア様は若く美しい女性です。恐らくその身を狙われたのでしょう。数人の男共から逃げる途中に、足を踏み外して高い崖から落ちて亡くなりました。……若しくは……貞操を守る為に自ら……。」
アランはそっと瞳を閉じた。年若い女性が盗賊に狙われれば、どのような結末になるかわかっていた。わかっていても、やはり辛いものがある。ましてや自分の心底愛した女性だ。共に生きて行くと誓った人だ。
あの時、都に呼んでいれば、あの時、早く村に帰っていれば、そもそも、自分が村から出なければ。そんな、どうしようもない後悔ばかりが頭をよぎる。
アランはそっとレイアの墓に触れる。心なしかその指は震えていた。
「デューイ、こんな時にすまないが、少しの間、一人にしてもらえないか?」
デューイは静かに頷き、ザッケルと共にその場をそっと離れた。
「……レイア……お義父さん……お義母さん……。」
アランは声も上げず、静かに涙を流した。
両親を亡くし、孤独だった自分を受け入れ、家族なのだと言ってくれた、かけがえのない人達。夢の為に都に行くと言った身勝手な自分を、快く見送ってくれた大切な人達。
こんなにも早く、こんなにも突然に失うなんて、思ってもいなかった。
「……レイア。」
酷い死に方をさせてしまった。こんなハズではなかったのに。二人で手を取り合いながら、ゆっくりと緩やかに年を取り、穏やかに死んで行くつもりだったのに。
ずっと守ると、ずっと一緒だと誓ったのに。
「……君を……守れなくて……申し訳ない……。」
アランにとってはかなり辛いシーンでした。大切な人の死というのは誰もが乗り越えなくてはならないもの。けれどもその死が自分の行った選択のせいだとしたらやりきれませんよね。心を込めて描いたつもりです。




