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少年と死者の森  作者: 柊 里駆
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初めての戦い

今回はちょっとだけ戦闘シーンです。お話を楽しんで頂けたら幸いです。

砦を出てどのくらいが経っただろうか。一本道をずっと歩いてきたがどこまで進んでも同じような風景が続くだけであった。


まだ道があるだけ良い。道があれば引き返すことも進むこともできる。道がなければ方角も、自分のいる位置も判らずにすぐに迷うことだろう。と、アランは思う。しかし……


「カイ、静かだけど大丈夫かい?」


「…………。」


カイは黙って歩いている。最初こそはしゃいでいたが、カイもまだ子供だ。ずっと歩き続けて疲れているのだろうし、代わり映えしない風景に飽き飽きしてもいるのだろう。


「カイ、少し休もうか。あまり最初から無理をするものではないからね。まだ先は長い。」


カイは黙ってコクリと頷いた。アランは「素直でよろしい。」と、ニッと笑ってカイの髪をクシャっと荒めに撫でる。


アランは素早く火を起こして、甘い飲み物をいれる。温かく、甘い飲み物にカイもホッと一息ついた。もしかしたら緊張もあったのかもしれない。


「足手まといになってごめんなさい。」


カイはカップを両手で持ち、俯いている。アランはチラッとカイを見る。


「カイは足手まといなんかじゃないよ。」


「…でも……。」


「僕と一緒に指輪を探してくれるんだろ?僕はかなり頼りにしてるんだけどな。」


「俺がいなければもっと効率がいいのに……。」


珍しく弱気なカイを優しい目で見るアラン。妹を治すミレンの花を探しに、たった一人で危険なこの森に来たカイを、アランは素直にすごいと感心していた。


「僕はこの森をかなり探し回ったんだ。けれども僕には見つけられなかった。そもそもあんなに小さな指輪をこの広大な森で探す方が無謀なんだ。だけど僕とは目線の違うカイならば、きっと見つけてくれると信じてるんだよ。それに……。」


アランはコホンと小さな咳をする。


「こんなに暗くて鬱蒼とした森だからね。僕としてもカイと一緒の方が心強いんだ。」


カイはアランは何でもできる、何でも知ってる凄い人なのだと思っていた。けれどもアランもこの森が怖いのだと聞いて、カイは安心し、ようやく笑った。


その時……。


ガサガサッ。


背後から草花が擦れる音がした。アランは素早く剣を抜き構える。アランのただならぬ雰囲気にカイも遅れ馳せながら短剣を構えた。


音が聞こえる方向はあちらこちらに移動している。これは草花が風になびいているのではない。しかも二人の周囲を付かず離れず移動して、こちらの様子を伺っている。明らかに二人を狙っているモンスターと見るのが妥当だろう。


「小物二匹と大物一匹ってとこかな?」


アランが小声で呟く。


「カイ、モンスターと戦ったことは?」


「畑に出た小物ならじいちゃんと一緒に倒したことある。」


アランはニッと笑い「よし!」と気合いをいれる。


「先手必勝!いくぞ!!」


アランは大物へ、カイは小物二匹へ斬りかかった。


アランが対峙するのは、大きな熊を凶暴化したようなモンスターだ。この世界においてのモンスターとは、普通の動物が瘴気に侵されて凶暴化したものを指す。どうやら瘴気は、人間と動物とでは影響の出方が違うようだ。


モンスターは右手をアランに向けて振りかざすが、アランはそれを楽々と左側へ避け、懐に入り込み、すれ違い様モンスターの右腹を斬りつける。すぐに距離を取り、モンスターに向き直す。


手応えがない。傷は浅かったようだ。モンスターも体勢を整えようと、ゆっくりと前足をついてアランのいる方向へ向き直す。


しかしアランはそれを待たず、高くジャンプし、その勢いでモンスターの頭に剣を突き刺した。ドスンと鈍い音を立ててモンスターは倒れ絶命した。


一方、二匹のモンスターと戦っていたカイは苦戦していた。村で戦った時は鈍い動きのウサギのモンスター一匹だけだったし、こんなに素早くはなかった。


カイの対峙するモンスターは猫のモンスターだった。普通の猫なら可愛いと思える猫パンチや引っ掻き、噛み付き攻撃も、凶悪な顔つきのモンスターとなるとかなり怖い。


カイの身体に小さな傷が少しずつ増えていく。しかしカイも努めて冷静に対処しようとしていた。昔、初めてモンスターと戦った時、じいちゃんが教えてくれた。「戦いは熱くなった方が敗けだ。」と。


カイはモンスターが飛び掛かってくる瞬間に、その腹を斬りつけた。思いの外深く傷が入ったのか、モンスターは痙攣し、やがて動かなくなった。これがカウンターというやつかな?とカイは理解した。残るは一匹。


アランは熊のモンスターを退治した後、カイの様子を見守っていた。ここでこんな小物にやられるようでは目的は到底達成できない。何せ、これからカイがやろうとしているのは、こんな奴等よりも遥かに強いモンスターを相手にし、尚且つそこからミレンの花を採ってこなくてはならないのだから。


アランもカイを庇ってばかりはいられなくなる。カイも自分で自分を守る術を身に付けなくてはならない。


カイはモンスターを一匹倒したことで、動きが格段に良くなった。『要領を得た』と言うべきか『レベルが上がった』と言うべきか。この世界にはレベルの概念はないが、修練をすればそれだけ経験値は上がる。カイはモンスターの攻撃をさらりと避けながら、短剣を上から振り下ろし、残る一匹のモンスターも倒す事ができた。





初戦闘でアランのまさかのカイ放置のドSシーンでしたね。(違う)アランとカイが段々と打ち解けてきました。これからも二人をよろしくお願いします。

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