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少年と死者の森  作者: 柊 里駆
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旅立ち

今回は旅の前の準備の為に二人が砦を探索するお話です。段々と二人の関係が変わってきています。どうぞお楽しみください。

翌朝、アランはカイを連れて、砦内を探索していた。ここから先、森の奥は瘴気が濃くなる。瘴気を体内に入れない方法と、モンスターと対峙するために強力な武器が必要になる。もちろん食料も必要だ。


アランは腰の小物入れから小瓶に入った白い薬を取り出した。その薬は、濃い瘴気の中に育った植物の根を煎じたものである。


実は植物の中には、大気中の瘴気を吸い込み、それを浄化させる作用があるものがある。ミレンの花程の効果はないが、その薬を黒斑病の患者に飲ませれば、少しの間病の進行を遅らせることができる。おそらく医者がネネに飲ませたのもこの類いの薬だろう。


「瘴気は主に口と鼻から呼吸をすることで体内に入るんだ。この薬を飲めば薬が口から喉に留まり、体内に入った瘴気を浄化して肺に入るのを防いでくれる。一日しか保たないけどね。」


アランは瘴気の研究の第一人者だ。だから黒斑病を調べる為に、数多くの黒斑病患者の遺体を解剖してきた。患者の殆どが、まず肺から発病し、それから全身に転移していた。つまり呼吸により、口と鼻から瘴気が体内に入った可能性が高いことを示している。


そして、薬についてもかなり熟知している。様々な場所に点在する濃い瘴気の地域で、多くの植物や動物、昆虫、土、空気中に存在する気体の種類に至るまでサンプルを採り、研究してきたのだ。


次にアランは武器庫に向かった。武器庫は地下にあった。ここから先は何が起こるかアランにも予想がつかない。万が一何が起きても一人で対処出来るように、この旅の道中でカイに剣の使い方を教えるつもりでいた。


沢山ある武器の中で、アランがカイの為に選んだのは、子供でも比較的扱いやすい短剣だった。だがカイは不服そうだ。


「俺、勇者様みたいな剣と盾がいいな…。」


「残念だがカイには重すぎて動けなくなってしまう。」


「………。」


あまりにカイが渋るので、片手剣と盾を装備させてみたが、案の定、その重さに振り回されただけだった。ついにカイも折れ、渋々納得した。


アランが自分用に選んだのはやはり片手剣だった。あまり体を鍛えていないアランには両手剣や槍は重すぎる。ついでに盾と弓矢を背中に背負う。


背後でカイの「ズルーい」という声が聞こえたが、あえて聞こえない振りをした。盾は自分を守る為、弓矢はカイを援護する為だ。


ちなみにアランは剣や弓矢はある程度なら扱うことができる。何故ならアランは研究の為に、瘴気の濃い、危険な場所に行く必要があったからだ。


瘴気の濃い場所には必ずと言っていいほどモンスターがいる。瘴気の濃さによってモンスターの凶暴さも変わる。アランも何度か凶暴なモンスターと戦った事があった。だからわかる。恐らくその時には自分の事で手一杯で、カイに構っていられる余裕がない。カイは自分で自分の身を守らなくてはならないのだ。


次にアランが探したのは食料だ。食糧庫も地下にあった。そこにはワインや小麦粉のほか、缶詰めもあった。アランは持てるだけの食料を袋に詰める。


食事ができるのは瘴気がまだ比較的薄い場所までで、奥に行けばそれも出来なくなるだろう。凶暴なモンスターの縄張りに入るから、火を付けることや匂いが出ることも避けたい。常にモンスターの気配に気を配ることになり、食事どころではなくなるのだ。


ついでにアランは医務室に立ち寄り、ガーゼと包帯、それに止血剤を取り出し、自身の腰の小袋に入れる。アランはふと窓の外を見る。もうすぐ日が暮れようとしていた。


「もうこんな時間になってしまったのか。意外と時間がかかってしまったな。仕方ない、ここでもう一泊しよう。」


アランは暖炉に火を付ける。ランタンに火を移し、それを片手に食糧庫に戻った。夕食分と翌朝の朝食分の食料を手にし、厨房で簡単な食事を作り、部屋に持っていった。


カイは余程お腹が空いていたのか、それをとても美味しそうに頬張る。何だかんだ言ってもまだ育ち盛りの子供だ。アランはその光景を微笑ましく見ていた。


夕食を済ますと、二人はそのままベッドに入る。明日は朝早くから出発するつもりだ。カイは既に寝息を立てている。


『ちゃんとしたベッドで眠れるのはこれで最後になるだろう。もしかしたらもう二度とないかもしれない。』


そんなことを考えながら、アランは隣のベッドでイビキをかいて眠るカイを見た。首を振り、不吉な考えを無理矢理頭から振り払う。


何としてでもカイだけは無事に村に帰さなくてはならない。ただでさえ妹のネネが黒斑病になって大変なのに、カイがいなくなって、さぞご家族は心配されていることだろう。


自分はカイを、あのまま村へ帰すこともできたのかもしれない。しかし結局それはできなかった。それは自分が、大切な人達を救えなかったあの時から今でもずっと、何もできなかった自身を責め続け、呪い続けているから。そんな辛い後悔をカイにはしてほしくないからだ。


アランは苦笑する。結局自分は、自分の想いをカイに押し付けているのか。


「ミレンの花が見つかって、ネネの病気も治って、レイアの指輪も見つかって、全てが上手くいけばいいな…。」


そう独り言を呟き、気付かないうちにアランも眠りについていた。




翌朝、空には雲一つない青空が広がっていた。


早々に食事を済ますと、アランとカイは砦を出発する。


幻といわれるミレンの花と、この広大な死者の森の中でアランが無くした、小さな小さな指輪を探す為に。






















今回は準備のお話だったのでちょっとつまらなかったかな?でもこれから少しずつ色々なかとが変わり始めてきます。これからも二人をよろしくお願いします。

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