婚約者レイア
今回はちょっとだけアランの昔語りです。アランが何故この森にいて、何をしているのかのお話です。
暫くの沈黙の後、アランが口を開く。
「そうか……。わかった。」
その言葉を聞き、カイは一つ瞬きをした。驚いているようだ。
「もしかして、一緒に来てくれるの?」
と不安そうに言うカイに対してアランは優しく微笑み、カイの頭を優しく撫でる。
「もちろんだ。あんな危ない場所にカイ一人を向かわせるわけにはいかないからね。僕も行くよ。ただ……。」
アランは少し言いにくそうに言葉を濁す。
「僕は大切なものを無くしてしまってね。それを一緒に探してほしいんだ。」
「大切なもの?」
「そう、僕にとって自分の命よりも大切なもの…。」
そう言い、アランは俯く。少し間を置いてゆっくり話し出す。
「僕には昔、恋人がいて、その恋人の形見の指輪なんだ。」
形見…と、カイは呟く。
「僕も君と同じ辺境の村の出身でね、実は僕の両親も黒斑病で亡くなっているんだ。」
カイは目を見開く。
「それで僕は、もともとこの世界になかった瘴気が、何故世界中に広がったのかを知りたくて、その理由がわかれば、もしかしたら瘴気を無くせるかもしれないと考えて、学者を目指して上京したんだ。もちろん、恋人に許可をもらってね。」
アランは寂しそうに笑う。
「彼女、レイアっていうんだけど、レイアも快く承諾してくれた。学者になって地位を築けたら、レイアとレイアのご両親も街に呼ぶはずだった。」
アランは右手の薬指にはめられた指輪をいとおしそうにそっと触る。
「訳あってギルドの力を借りて国から脱出する時、レイアと家族を連れて行く為にレイアの暮らす村に行くと、既にそこには村がなかった。」
「村がなかった?何で?」
「盗賊達が村を襲ったんだ。食料、金目のもの、女、子供はさらっていき、男や老人は全員皆殺しさ。数人の男共に追われたレイアは逃げる途中に崖から足を踏み外してそのまま亡くなった。」
アランの過去に絶句するカイ。
「レイアや殺された皆の亡骸を誰かが埋めてくれたらしくて、僕が村に着いたときには村に墓がいくつも立てられていた。その中のレイアの墓と思われるものに、レイアに渡した婚約指輪が紐でくくりつけられていたんだ。」
「……………。」
カイは何も言えなかった。何かを言ってあげたいのに何も言葉が浮かんでこない。カイが何かを言ったところで何の慰めにもならないだろうけど。
「探しているのはそのレイアの指輪だ。僕の指輪と対になっている。無くさないようにペンダントにして肌身離さず持っていたはずなのに、気が付いたら無くなっていたんだ……。」
目の前に手を差し出され、アランは顔を上げる。そこにはニッと笑うカイの姿があった。
「わかった。俺、頑張って見つけるよ。」
二人は固くきつく手を握り合う。
今回はちょっとだけアランの過去がわかりました。今後もっと判明していきますが、それはもうちょっと後になります。これからもどうぞ二人をよろしくお願いします。




