表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少年と死者の森  作者: 柊 里駆
2/19

出逢い

カイとアランの奇跡の出逢いのお話です。これからゆっくりと二人の絆が深まっていきます。読んで頂けたら幸いです。

その森は遥か昔から、人々によって『死者の森』と呼ばれていた。鬱蒼とした森で、日中でも日の光が届かない。暗く、陰鬱とした雰囲気だからなのか、それともこの森に漂う瘴気のせいなのか、よくこの森の中で、知り合いの幽霊に出会うと言われていた。


死者の森は濃い瘴気で満ちていると言われているが、実は瘴気が最も濃いのは森の奥だけで(と言ってもナリーシャ村に比べれば十分濃いのだが)、入り口付近はそれほど濃くはない。


森の外に続く道は一本道だが、一度道から外れてしまうと見渡す限り同じ風景で、自分の居場所がわからなくなってしまい、二度と森から出られなくなると言われている。事実、この森に入り道に迷った者で、戻ってきた者は誰一人としていない。


夕方の日が山の稜線に消えようとするこの黄昏時に、曰く付きの死者の森の中で、一人の青年が何かを探して、独り言を呟いている。


「おっかしいなぁ……、落ちているとすればこの辺だと思うんだけどなぁ……。」


こんな不穏な場所で、何とも緊張感のない独り言を呟くこの青年の名はアランと言う。北方の国からやって来て、この死者の森を通り、ナリーシャ村に出て、今日中には王都に着くはずだった。


しかし、彼は今、何かを必死に探していて、周囲の異変に全く気付かない。遠くから、何者かが近付いて来ている気配がする。アランの背後の草がゆっくりと揺れる。そして、


『ガサガサッ!』


と背後の草が大きな音を立てて揺れる。アランは驚き、バッと後ろを振り返る。暗い中、ゆっくりと目を凝らすと、そこにいたのは10歳にも満たない一人の少年だった。


「うわあああぁぁっ!!化け物!!助けて!!」


少年はアランの姿を見ると、悲鳴を上げて逃げようとした。今のアランは、頭の所々にクモの巣がひっかかり、体のあちらこちらに木の葉がくっつき、纏うマントや服のあちこちが泥で汚れている。この暗い森の中でこの姿を見れば、誰もが化け物だと見間違う程の汚れっぷりである。


「待って!!」


とアランは慌てて少年の襟を掴む。このまま少年を逃がせば、少年は永遠に森をさまようことになる。それだけは避けたかった。


少年は驚きと恐怖でひきつり、涙を瞳一杯にためた表情で後ろを向く。周囲が暗いのと、マントのフードで隠れて顔の全体が見えず、目だけが少年を見下ろす格好になってしまったアラン。再度その姿を確認した少年は恐怖から失禁し、そのまま気絶してしまった。



少年が目を覚ますと、そこは見たこともない場所だった。4つのベッドがあり、その奥の壁に取っ手のついた入り口のドア、右手には大きな窓があり、カーテンが閉めてある。カーテンからわずかに外が見える。どうやら今は夜のようだ。


「驚かせて申し訳ない!」


とアランは目覚めた少年に頭を下げる。すると少年も、


「俺もお化けと勘違いしてごめんなさい。」


と謝った。


今アラン達のいるこの建物は、その昔、砦だった場所で、堅牢な石造りで出来ている。世界中で国の境界を奪い合う戦争が勃発していた時代の名残だ。


砦の内部は、多少埃やカビがあるものの、幸いなことに少し掃除をすればまだ使用することができた。いくつか部屋がある中で、おそらく兵士が寝起きしていたと思われる、ベッドと暖炉のある部屋を使わせてもらうことにした。


少年の汚れた服は、今はきれいに洗って部屋の片隅に申し訳なさそうに干してある。


「改めて自己紹介といこうか。僕の名はアラン。ここから北にある国からやって来た。本当は今日中に王都に着くはずだったんだけどちょっとワケありでね。」


と、右手を差し出すアラン。少年がそれに答え、握手を交わす。


「俺はカイと言います。この付近のナリーシャ村に住んでいて、妹が病気になってしまい、その薬の原料となるミレンの花を探すために来ました。」


ミレンの花と聞き、表情が曇るアラン。カイも俯く。


「ミレンの花…ってことは、妹さんはもしかして……。」


「黒斑病です。」


「そうか、それは大変だったね。しかし、ミレンの花とは確か、この地方に伝わる伝説の花ではなかったかな?本当に存在するの?」


「わかりません。でももう、ミレンの花に頼るしか方法が無くて……。」


黒斑病、それはこの世界の住人ならば、誰もが知っている病で、誰もが恐れる病。もし本当にミレンの花とやらがあり、その繁殖に成功したなら、もしかしたらこの世界に、黒斑病と言う病は無くなるかもしれない。




その昔、この世界には瘴気は存在しなかった。初めて出現したのは先の大戦からだ。大戦により世界中の森林が焼き払われ、その地下深くに眠っていた大量の瘴気が瞬く間に世界中に広がった。


黒斑病とは、瘴気が呼吸などの理由で生物の体内に吸収され、体中の細胞が瘴気に侵され壊死し、そうした箇所が黒ずみ、黒い斑点ができる。これが黒斑病の名前の由来だ。つまり、黒斑病を治すには、病の原因である体内に吸収された瘴気を取り除くか、中和する必要があるのだ。おそらくミレンの花とはそのような作用があるのだろう。










まだまだ話は続きます。これからも二人をよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ