約束
今回からアランが消えたその後のお話です。読んで頂けたら幸いです。
洞窟から出た後、カイは村からの捜索隊の人達と合流した。その筆頭はギルドから来たという厳つい男の人だった。
「もしかして坊主がナリーシャ村のカイか?」
「……はい。えっと……おじさんは……?」
いきなり名前を呼ばれたカイは、不信感丸出しで答えてしまった。流石に初対面で感じが悪かったかもしれない、と反省する。
「デューイ……彼が引いてますよ。」
と溜め息混じりでデューイを咎める影の薄い細身の男の人。
「あははは、すまねぇ。別に悪気はないんだ。俺はデューイ、これでもギルドマスターだ。んでこいつはザッケル。俺達はお前さんの爺さんに頼まれてお前さんを探しに来たんだ。」
どうやら厳つい男の人はデューイ、細身の男の人はザッケルと言うらしい。デューイは話してみると豪快な人で話も面白かった。ただ余りに豪快が過ぎて、たまにザッケルに窘められていた。どっちがギルドマスターなのかわからない。
「ねぇ、デューイさん達はギルドの人なんでしょう?ハロルドっていう人知ってる?」
デューイとザッケルは顔を見合わせる。デューイの表情が変わる。
「『ハロルド』にどんな用があるんだ?」
「手紙を預かってるんだ。ハロルドさんに渡して欲しいって。」
「誰から?」
カイは首を横に振る。
「ごめんなさい。ハロルドさんに会うまでそれは言えない。ハロルドさんか、俺の信頼できる人に渡してくれっていう、男と男の約束だから。」
「残念だがハロルドは死んだよ。もう3年も前の話だ。」
「……そうなんだ……。」
カイは目に見えてガッカリした。
「俺はハロルドに任命されて、ハロルドの後釜でギルドマスターになった。よけりゃ話してくれないか?力になれるかもしれねぇ。」
カイはデューイの目を真っ直ぐに見る。デューイもその視線を真っ直ぐに返した。
「……うん。デューイさんなら大丈夫。デューイさんは裏切る人じゃない。」
カイはそう言ってニコッと笑う。デューイはポリポリと髪の無い頭を掻いた。
「そりゃ嬉しいけど、何とも照れるな。」
「はい、これ。俺も手紙の内容は知らないんだ。」
カイは手紙をデューイに渡した。手紙を読み始めてすぐにデューイが反応する。
「カイ、お前さん、もしや『アラン』に会ったのか?」
アランの名前を聞いてザッケルも驚く。しかし、自分の考えを打ち消すように、デューイは首を振った。
「いや、まさかな。そんなはずねぇか。」
「デューイさん達はアランを知っているの?」
「俺達の知ってるアランは、10年も前に行方不明になってるんだ。この森に入った後、行方がわからなくなってる。」
あのデューイにしては神妙な面持ちで答えた。
「……多分同じアランだと思うよ。俺が出会ったのは幽霊のアランだから。」
デューイとザッケルの表情が険しくなる。二人に凄まれて、カイはちょっと後ずさった。
「……どういうことだ?」
カイはこれまでの事をざっとデューイとザッケルに話した。アランに出会った時の事、一緒に旅をした事、モンスターの事、ミレンの花の事。
「……何てこった。カイ、お前さんの事を疑う訳じゃ無いが、にわかには信じられねぇ。」
「うん。そうだよね。俺だって今でも夢だったんじゃないかって思うもの。今でもアランは生きていて、死んだなんて冗談だよって、木の陰から出てくるんじゃないかって。」
カイはそう言うと泣きそうになる。しかし、ぐっと堪えた。デューイはクシャクシャッとカイの頭を少し乱暴に撫でる。
「とりあえずここじゃ話を聞くにも手紙を読むにも物騒過ぎる。お前さんを無事に家まで送らなくちゃならねぇからな。そこでまた詳しく話を聞かせてくれや。手紙は俺が預かってても良いかい?」
「うん。もちろんだよ。だってその手紙は、ハロルドか、俺が信頼できる人に渡すように言われたんだから。」
「俺達を信頼してくれたのか。ありがとうな。」
カイは屈託の無い笑顔でニカッと笑った。
カイは本心から思っていた。この人達は信頼に価する人物だと。だって幽霊のアランに会ったと言った時に、ほんの少し怒ってくれたから。それはアランを大切に思っている証拠だとカイには感じた。
久しぶりにデューイとザッケルの登場です。(嬉しい)前回の登場の10年後、デューイとザッケルは中年のおっさんですね。何とカイとの絡みです。今回からはアランとのお別れ後の後日談が始まります。これからもよろしくお願いいたします。




