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少年と死者の森  作者: 柊 里駆
14/19

別れ

カイとアランの別れの時がきました。本作も宜しくお願いします。

はぁ…はぁ…。


カイは一人でモンスターと対峙していた。アランはモンスターに吹き飛ばされてから戻って来ない。もしかしたら死んでしまったのではないか、このままでは自分も死ぬかもしれないと、焦燥感にとらわれていた。


何とか相手の攻撃をギリギリ避けているが、肉体的にも精神的にも限界がきている。もうダメだ、そう諦めかけた時。


「カイ!この棒を拾え!」


どこからかアランの声が聞こえ、投げられ地面に落ちてきた棒をカイは咄嗟に拾う。その棒は何となくその辺に落ちている棒とは違う様にカイは感じた。


『ヒュン、ヒュン。』


これまたどこからか飛んで来た矢が、モンスターの残った左目に刺さる。


「ヴオオオアアァァ!!」


悶え苦しむモンスター。両目を潰され、これで奴は何も見えなくなった。


「カイ!今だ!その棒でヤツの心臓を狙え!傷跡が残っているはずだ!」


アランに言われ、カイは棒を構え、モンスターの心臓目掛けて必死で突進する。肋骨の真ん中に生々しい傷跡を見つけた。


「てやああああ!!」


『ドスッ!!』


「ヴオオオアアァァ……。」


カイは見事モンスターの心臓に棒を突き刺した。モンスターは断末魔を上げ、ゆっくりと横たわる。暫くしてその体は浄化され霧状となり空に消えていった。


カイは全ての力を使い果たし、その場に倒れてしまう。




あれからどのくらい経ったのか。


誰かが自分の頭を優しく撫でてくれている。その手は大きくてまるで……。


「……お…父さん?」


カイがゆっくりとその顔を見ると、そこにいたのはアランだった。


カイはアランを間違えて父と呼んだことに気付き、すぐさま飛び起きた。恥ずかしすぎる。


「やったな、カイ。」


アランは特に気に留めてはいないようだ。カイはほっと安心してから、アランがモンスターに吹っ飛ばされた事を思い出した。


「アラン!無事だったんだね?よかった!!」


カイは嬉しそうにアランに抱きつく。それをアランは優しく受け止めた。アランはカイの頭を撫でる。


「カイ、君に渡す物があるんだ。これを……。」


そう言ってアランがカイに渡したのは、白色の包装紙にくるまれた白い薬だった。


「これは僕がミレンの花の根っこから抽出した薬だ。君の妹さんに飲ませてやるといい。」


「ミレンの花、見つかったの?」


カイは瞳を輝かせる。


「ああ。あの洞窟の先にいっぱい咲いているよ。」


と、アランが洞窟を指差す。カイはふとアランの胸元に光る物を見つけた。


「アラン、そのネックレス、もしかして……。」


アランはカイにネックレスを見せる。銀色のチェーンに通されたアランの指輪と対をなすレイアの指輪が美しく輝いている。


「そうだよ。君のおかげで見つけることができたんだ。ありがとう。」


カイは少し誇らしげに鼻の下を掻いた。


「カイ、君にお願いがある。これは君にしか頼めないことなんだ。」


そう言って、アランはカイの両手を手に取り、一通の手紙をカイに渡した。


「これをレイランド王国のハロルドというギルドマスターに渡して欲しいんだ。もし、ハロルドがいなければ、君が最も信頼の置ける人物に渡して欲しい。」


「アランはどうするの?」


カイにそう聞かれて、少し困ったようにアランは笑った。


「僕は他に行かなくちゃいけない所ができたんだ。もうずっとずっと長い間、待たせてしまっているからね。」


「……そっか、わかったよ。」


「ここでお別れだ。本当は安全な村まで送ってあげたいところだけど、それも叶わないらしい。でもきっと君の村の人達が、君を探しにこの近くまで来ていると思うよ。」


アランはクシャクシャッとカイの髪を乱暴に撫でる。


「……また、会えるよね?」


不安そうにカイが尋ねる。アランは笑顔で答える。


「…ああ、もちろんだ。君が大人になって、年を取っておじいちゃんになって、人生を全うした時に、きっとまた会えるよ。」




そこでハッとカイは目を覚ます。その手には夢で渡された薬と手紙が握られていた。


夢の中のアランの最後の言葉は、まるで今生の別れのようだった。ふと思い立ち、カイは洞窟の先へ行ってみることにした。


長い長い洞窟を抜けた先にあったのは、一本の巨木と、その周囲に咲き乱れる沢山の小さな白い花。


そして……


巨木の根本に眠るのは、アランと同じ服を着た、白骨化した遺体。


カイは全てを悟り、大きな声で泣いた。



『君が大人になって、年をとっておじいちゃんになって、人生を全うした時に、きっとまた会えるよ。』


この死者の森では、死んだ者に出会うことがあるという。それは瘴気に侵されて見た幻なのか、それとも……。


カイはひとしきり泣いた後、再び歩き出す。


妹を救う為、そしてアランとの約束を果たす為。


その様子をアランはずっと見守っていた。カイの姿が見えなくなるまで。


そしてゆっくりと後ろを振り返る。


「長い間待たせてしまったね。レイア。」


そこにいたのはミレンの花の花束を持った若く美しい女性、レイアだった。レイアは微笑んでいる。


アランはレイアに駆け寄ると、優しく抱きしめる。


「これからは、ずっと一緒だ。」


抱き合う二人の周りには沢山のミレンの花が咲き乱れ、その花びらが風に舞ってひらひらと空へ飛んでいった。




ついにカイとアランのお別れの時が来てしまいました。カイには辛いでしょうが、アランは何も悔いは無いでしょう。やっと愛しのレイアに逢えたし、これからは二人幸せな時間が待っているのですから。アランはいなくなりましたがもう少しお話は続きます。これからもよろしくお願いいたします。

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