甦った記憶
ついにアランの秘密が判明します。読んで頂けたら幸いです。
洞窟の前で目を覚ましたアラン。何処にも痛みがない。鋭い爪で体のどこかが抉られていてもおかしくないのにどこにも傷がなかった。
アランはふと顔を上げ洞窟を見る。
またドクンと一つ心臓が大きく鳴った。
自分はこの洞窟の先に進まなければならないという強い衝動にかられる。この先に真実がある。
アランはゆっくりと立ち上がり、ふらふらと洞窟に入った。
その洞窟は土を掘っただけの作りだった。壁のあちこちから植物の根っこが出ている。
長い洞窟を抜け、広い場所に出る。そこには一本の巨木と、その周囲一面に、白い可憐な花が咲き乱れていた。
そこだけが別世界のように、まるで絵画のように美しい景色が広がっていた。
この白い花が恐らくミレンの花と呼ばれるものなのだろう。
アランはゆっくりと巨木に近付く。そして、そこにあるものを見つけた。見つけてしまった。
巨木の根本に項垂れて座る誰か。
………そこにいたのは紛れもなくアラン。
否、アランの白骨化した遺体であった。その胸元には無くしたハズのネックレスが輝いている。
その瞬間、アランの頭の中に、走馬灯のように様々な映像が流れる。
デューイ達と別れ、一人でこの森に入った後洞窟を見つけ、この場所を見つけた。花と土の成分を調べると、花にもだが、この土そのものに他の場所にはない強い浄化作用があった。考えられるのはこの一本だけそびえ立つ巨木。
アランは一礼してこの木の枝を一本頂いた。そして道に迷った際に見かけた山小屋に持ち帰った。山小屋はかなり傷んでいたが、アランの微妙なDYI能力で使えるようにした。
枝を試しにこの土地の土に植えてみると、凄まじい早さで根をはり、枝をつけた。そしてこの辺り一帯の空気を浄化したのである。
アランは考えた。この木の枝を世界中に埋めれば、世界中に広がる瘴気を浄化できるのではないか、と。
それからというもの、アランは研究の為に、毎日巨木の元へやって来た。巨木の根、幹、枝、葉と隅々まで調べた。すると、巨木は葉から瘴気を吸い、枝から幹に流れる過程で瘴気を浄化し、根から土へ浄化作用の入った栄養を送っていた。
巨木の根本には浄化作用の強い土が広がり、やがて同じく浄化作用の強い白い花が咲くようになったのだ。
この巨木が生まれた経緯は、恐らく突然変異であろうと思われる。瘴気の浄化作用に特化したこの能力は、瘴気の濃いこの場所で生き残るための植物としての本能なのだろう。
数週間山小屋に籠り、研究結果をまとめる。いつ追っ手が来ても大丈夫なように、山小屋の床下に書類を隠す。因みに食料は山小屋に備蓄されていたものをちょっとずつと、そこらのモンスターを捕まえて捌いた(ちょっと生臭かった)。
いつものように洞窟へ向かうと、何となくアランは違和感を感じた。
アランはハッと何者かの気配に気付き、洞窟の上を見る。
「ヴルルルル……。」
巨大な虎型のモンスターが崖の遥か上から牙を剥き出し、威嚇してきた。アランはすかさず左の腰の剣を手に取る。
モンスターはバッとその高さから飛び降り、アランに飛び掛かってきた。
アランはそれを何とか避ける。近くで見ると、その大きさが余計に際立った。
続けざまに右手、左手と交互にアランに鋭い爪で切りつけてくるモンスターと、それを何とか剣で流し、紙一重で避けるアラン。
そんな攻防を続けていると、流石のアランも息が上がってきて、これ以上の長期戦はまずいと判断した。
何か使えるものはないかと周囲を見回すと、先端の尖った木の棒を見つけた。それを素早く手に取り、ちょうどアラン目掛けて左手を振りかざしたモンスターに向けて投げた。
運良く木の棒がモンスターの右目に刺さる。モンスターは余りの痛みに悶え苦しんだ。
この隙にと逃げようとしたアランだったが、次の瞬間、モンスターは再びアランの前に立ち塞がった。どうやら逆鱗に触れたようで、アランを威嚇するその表情が、先程よりもより険しくなっている。
「くそっ、何てしぶとくて執念深いヤツなんだ。」
普段は温厚なアランだが、流石に言葉が荒くなる。焦っている証拠だ。焦りは判断を鈍らせる。アランもそれは十分に理解していた。
アランは一つ大きな深呼吸をする。自分のざわついた精神を落ち着かせる為だ。そして考える。今自分の持っているもの、今の自分に出来ること。
武器は剣と食材を切る為の小型ナイフ。道具はロープに薬。雨風を防ぐマント。
アランは先ずナイフをモンスターの左目に向けて投げる。
モンスターはそれを難なく払い落とす。
その隙にナイフの鞘にロープをくくりつける。
モンスターはアランに襲いかかる。
アランはこれを素早くかわす。
モンスターが後ろを向いている間に、ナイフの鞘のある方を頭上の木の枝に向けて投げ、ロープを絡ませ素早く登る。
モンスターはアランを落とそうと木に体当たりを始めた。
そこでアランの身に付けているマントを素早く取り外し、モンスターの左目を覆う。
モンスターは驚き、暴れ、マントを取り払うために両手を上げる。
アランはすかさず木から飛び降り、剣を構え、モンスターの心臓目掛けて突進。アランの剣は見事モンスターの心臓を貫いた。
モンスターは動きを止め、そのまま横倒しに倒れる。
「…はぁ…はぁ…。」
アランは満身創痍でその場に座り込む。
暫くそのままで動けないでいたが、もし今、他のモンスターに襲われてはひとたまりもないと、自分の体にムチ打ってヨロヨロと山小屋に向かった。
「ザシュ!!」
アランの背中に鋭い痛みが襲う。ゆっくりと後ろを振り向くアラン。
仕留めたはずのモンスターが立ち上がり、その鋭い爪でアランの背中を切り裂いたのだった。
モンスターは全ての力を使いきったのかそのまま再び地面に倒れた。
背中の傷は深く、アランの視界は白くぼやける。
アランは最期の力を振り絞り、洞窟をふらふらとゆっくり進む。
ようやく木の根本に辿り着くとその根に腰掛け、そのまま眠るように絶命した。
ついにアランの過去の秘密が明らかになりました。物語はクライマックスです。これからもよろしくお願いいたします。




