曖昧な記憶
段々とクライマックスに近付いています。楽しんで頂けたら幸いです。
翌朝(といっても相変わらず森に朝日は入らず、清々しさは皆無だったが)、アランとカイはパパッと荷物をまとめて再び歩き出す。
「アラン、この道はどこへ繋がっているの?」
「北の国クレスタン王国だよ。僕の故郷でもある。まぁ、僕はそこから逃げてきたんだけどね。」
「ふ〜ん……、どんなところなの?」
「北の国だけあってとても寒いよ。四方を山に囲まれて他国と交易があまりない閉鎖された国。治安は良くないね。」
子供のカイに込み入った話しはできず、曖昧に流すアラン。嘘は何一つ言ってはいない。
一方カイも、レイアの件を聞いていたから、深くは話を掘り下げなかった。アランにとってその国は、あまり良い思い出が無いのだろうと子供ながらに感じていた。
「きっと王様が悪い人なんだね。だってアランみたいな良い人が逃げちゃうような国だもん。」
これにはアランも苦笑いを返すしかなかった。案外子供は鋭い。
「あ、アラン、見てみて。山小屋があるよ。」
山小屋に近付いたアランは『はて?』と思った。クレスタン王国から逃げてきたあの時、こんな山小屋なんてあったかな、と。まぁモンスターに追われながら必死に逃げてきたから、見落としたのかな、と深くは考えなかった。
アランはその山小屋を見て、軽く頭痛に襲われた。何かが脳裏をかすめた気がする。しかし、急にカイに手を引かれてびっくりしたことで、その違和感は消えてしまった。
「うわ……。」
と、カイは山小屋を間近で見て数歩後ずさる。
山小屋の外観はとてもボロボロだった。丸太を何本も積み上げた作りだが、所々木が腐っているところもあり、今にも崩れるのではないかと思われるほどだった。
しかし中に入ってみると、崩れかけていた箇所は木の板で補強されており、綺麗に清掃されていて、誰かが住んでいた形跡があった。
「こんな瘴気とモンスターがいっぱいの危ない所に、誰か住んでいたのかな?」
カイはアランに聞いてみた。アランも首を傾げる。にわかには信じがたいが、ここに紛れもない証拠が残っている。
「う〜ん……。わざわざ壊れかけていた箇所を補強したってことは、誰かが住んでいたんだろうね。僕にも信じられないけれど……。」
二人は一応小屋の中を調べてみたが、これといって変わったことは無かった。ただ床板を打ち付ける釘が一部取れかかっていたことぐらいだろう。それもこの小屋の外観からすれば、特に気に留めることでもなかった。
山小屋の外に出ると、空気がこの周辺だけ、とても清んでいる事に気付く。何故かと周囲を見渡すと、一本の木が目に留まる。その木は他の木とは違いとても生き生きとしていると感じた。
何故この木だけ?とアランは不思議に思った。ここに留まって調べたいが、何しろ今はカイと一緒だ。自分の研究意欲の為にカイを危険に晒すわけにはいかなかった。
山小屋を後にした二人は死者の森を奥へと進んで行く。あれから何度かモンスターに襲われた。奥に進むにつれ、モンスターが少しずつ強くなってきている。しかし、モンスターに襲われる度に、またカイも少しずつ強くなっていった。短剣の扱いもだいぶ様になってきている。
だが、安心はできない。モンスターが強くなってきていると言うことは、つまりは瘴気の濃い中心部に近付いて来ているということ。そして忘れてはいけないのは、この森にはかなり凶悪なモンスターとやらがいるということだ。モンスターの強さは瘴気の濃さに比例する。ならば瘴気の濃い森の最奥に、そのモンスターがいる可能性が極めて高い。アランは一層気を引き締めた。
今回はアランの様子が少しおかしかったですね。クライマックスに近付くにつれ、アランの秘密がわかってきます。これからもアラン達をよろしくお願いいたします。




